小説と未来 -90ページ目

新世界36-無職の暇人 10

2012年は秋から冬に向っていた。


世の中では、温かくて、可愛いからという理由で着ぐるみを着ることが流行っていた。


きつねの女の子が二人、公園を歩いていた。キツネはほっそりとしていた。着ぐるみは意外と細かった。


ピンク色したウサギの女の子が一人で歩いてきた。


僕はキツネの子達の傍にいた。

二人はピンクのウサギの悪口を言っていた。


「あれはないよねえ」


「ちょっとないよねえ?」


僕も見る限り、ウサギの女の子はいけてなかった。その子本人の問題もあるのかもしれないが、耳がうな垂れていて、形状もちょっと太めだった。本人が太めなのかもしれないが。



僕は青色のクマを着た着ぐるみがやってこないか、公園のベンチで待っていた。


でも青色のクマは現れない。着ぐるみ自体、流行っているからといって、そんなに着ている人がいるわけじゃない。着ぐるみじゃ会社にも学校にもアルバイトにさえいけないだろう。きっと暇な女の子が着ているだけだから、そんなに現れるものじゃない。


たまに見かけるのは、ピンクやオレンジ、ベージュ、茶色のキツネ、ウサギ、ヒツジそんな動物で、クマはなかなか見かけない。クマは流行っていないらしい。まして青色は見かけない。


僕はテイクワンサクセスを目指す。


さっきのキツネの女の子たちがピンク色のウサギの子をいじめている。確かにウサギの子は冴えていない。うざい感じもわからなくはない。


でも、いじめはよくないだろう!


僕は子供の頃、いじめられっこだった。だから大人になったら絶対にそんな子を助ける大人になるんだ!と誓っていた。


誓っていたのに、僕は何もできない。

ただ遠くからいじめの光景を眺めている。


『女の小さな争いだ。気にするな』

僕は僕にそう言い聞かせる。


僕は何もできない大人だ。青色のクマは見つからない。


今日もボケ老人のような一日を過ごしている。


新世界35-夢世界 10

ニシキ君は結婚詐欺に行った。


僕はゴミの山で、今日も金属くず探しを続けている。


とても晴れ晴れしい一日だ。五月の始まりは心地よい。


時と共に何かが起こり、何かが変わってゆくものだが、僕には何も起きず何も変わらない。

世の中の変化についてゆけず、今日も同じ事を続けている。


僕は酷く焼肉ランチが食べたい。それを食べる事が僕にとっての幸せだった時期もあったろう。コウキ君にそれを食べさせてやったら、きっと彼は喜ぶだろう。

僕は自分のために何かをする気が起きない。誰かのためならできるだろうか?その想いさえ、とても弱く、何も叶えられそうにない。

要はやる気の問題だ。


ニシキ君はうまく言っているだろうか?

『君はどこかの島の土地持ちの御曹司で、一流大学出身だ!としておけ。

 そして古いレコード店に言って、クラシック音楽を聴き、知識を付けておけ』

僕は彼にそんないくつかのアドバイスをした。その昔、僕がそんなお金持ちに騙されたことがあったような気がしたからだ。


ニシキ君はどうしているだろうか?

僕には他に考える事がない。後は似たような世の中に対する愚痴が続くだけだ。


お宝金属が掘り出され、僕は安堵と僅かな喜びを得て、今日も一日を終わろう。


そう!他人の事を気にしている暇などないのだ!


とっとと電子器具を探そう!そうして今日を終りにしよう!


僕は重たいゴミの山のゴミを掘り起こす。それが僕の仕事だ。



2020年春過ぎ、僕は変わらない山の上にいた。


似たような夢が毎日毎日続いていた。


新世界34-伝文 7

壊れた世界の出口に出たいのなら、先へ進め!


その夢はただの夢じゃない。夢は君自身に関係している。


君はもう齢を重ねたし、成長の余地も残っていないと感じているんだろう?


でもそれは事実じゃない!


それは君の思い込みだ。



夢は僕の脳を支配しようとしていた。


夢は言っていた。



人生を終わりだなんて思っちゃいけない!


君は君を信じて生きてゆけ!



眠りに落ちて、夢を見るのが恐かった。


現実を見つめるのも気が重かった。


僕は何もしたくなかった。何も聞きたくなかった。


2012年春の一日だった。


僕は夢の先へ行く覚悟を決めようとしていた。


新世界33-孤島の物語 7

闇夜に覆われる島には空一面に星々が輝き出す。


夕立過ぎて、澄んだ空気の大空にはとても綺麗な夏の星座が誇らしく輝いていた。


だからハナは家の電気を全て消してしまう。


玄関前のデッキチェアーを置き、そこに腰掛け、涼みながら星々を眺める。


僅かな星と月の明かりが自分の居場所を教えてくれる。



人の目は僅かな明かりを感知する事ができる。


貴方は知らないかもしれないけれど、


文明がなくなっても、きっと人は生きていけると、わたしは感じているのだ。


貴方は知らないだろうけど、


わたしは淋しい毎日をどうやったら楽しく過ごせるかを、少しずつ覚えていっているんだよ。



新世界 目次 其の1

新世界-目次 其の1



1.伝文 1


2.夢世界 1


3.孤島の物語 1


4.無職の暇人 1


5.夢世界 2


6.無職の暇人 2


7.伝文 2


8.孤島の物語 2


9.無職の暇人 3


10.夢世界 3


11.伝文 3


12.孤島の物語 3


13.夢物語 4


14.無職の暇人 4


15.夢世界 5


16.孤島の物語 4


17.無職の暇人 5


18.夢世界 6


19.夢世界 6-2


20.無職の暇人 6


21.夢世界 6-3


22.伝文 4


23.孤島の物語 5


24.夢世界 7


25.無職の暇人 7


26.伝文 5


27.夢世界 8


28.孤島の物語 6


29.無職の暇人 8


30.伝文 6


31.夢世界 9


32.無職の暇人 9



だいぶ長くなってきたので、いったん目次を作ってみました。

まだまだ物語は序盤です(予)