『何気ない毎にちを貴方に伝う』4ノ11
ゴールデンウィーク開けの僕のテンションの低さが際立つ。
いつもの古い建物の2階、登校拒否女子中学生に勉強を教える。
しかし最近は少女のやる気も増し、僕は少女に求めるものは減った。勉強しろといわなくても勉強するし、教科書を読んでやらなくても、自分で読む。僕は少女からの問いかけを待つだけだ。
しかし、このままでいいのだろうか?
「先生、ここは?」
少女は僕に英語の文法について聞いてくる。
あれ、何だったろう?と、僕は戸惑う。
彼という男に会って以来、僕の脳はあの神々しい木の世界から離れられていない。
静かな世界で光り輝くものが身悶えている。彼は大声で笑い、オーラを放つ。僕は圧倒され、金縛りにあったように身動きが取れない。今もそんな世界の中に留まっているかのようだ。
「どうしたの?先生?どこか調子悪い?」
少女は僕の事を気にかける。
「ん、いや、大丈夫だよ。前より問題が難しくなったんでね。少し考えさせられるんだよね」
そう言う僕に、少女も笑顔になった。
そして僕は参考書を見直し、問題を解いた。
少女はまた問題を一つ一つ解いてゆく。
僕は黙っている。
すると、彼の笑い声が聞こえてくる。
あの輝きの前に、僕は何ができるだろうか?どうしても僕の力は劣る。再び彼に会ったとしても、僕は同じように手玉に取られてしまうだろう。彼は僕に、エネルギーを吸い取っている相手に会わせてやると言っていたが、本当だろうか?どうやろうとしてもいいようにやられてしまう気がする。
彼に会う事は、僕の全ての生気を失わせてゆく。
永遠に敵うことのない相手に対する虚しさを、僕に植え付けさせる。
「やっぱし先生、元気ないですねえ。どうかなされましたか?」
なんて、少女は珍しくとても丁寧な表現で僕に尋ねる。
「いや、何でもないよ」と言って、僕は笑顔を見せる。
「失恋でもしたんですか?」
やれやれ。女の子というのはそういう発想しかないのだろうか?と僕は思う。
「そんなんじゃないよ」
ただ、負けたような気持ちは消えない。
いや、この無意味な負けイメージを振り払わなくてはならない。負けを認めていても仕方がないことは確かだ。少女は受かりそうにもない高校に受かるために一生懸命勉強している。僕も見習わないといけない。
「しかし、だいぶ覚えたな。本当にこんなに出来るようになるとは、きみも大したものだね」
と、僕は少女に言う。
「ふむ、そうですか?」
少女は僕の顔を見る。
「やっぱり変な先生。まあいいか」
そしてまた問題文に目を向ける。
僕は心のままに生きよう。惑わされても仕方ない。僕はまだ、始まったばかりだ。
(つづく)
『何気ない毎にちを貴方に伝う』4ノ10
ゴールデンウィークの期間中はずっとあの木のある場所まで出かけた。
4月29日、30日、5月1日、2日、3日、4日、5日。毎日時間の違いこそあれ、神々しく輝く枯れた木の下を訪れたが、彼が姿を見せることはなかった。
数日空けて、5月8日、僕は今日を最後としようと考えている。その先の事はわからないが、この繰り返しに価値がないのでは、と思い始めている。
午前11時、僕は定位置に腰掛けて時を待つ。それは枯れた木の見える所にある木の、根が盛り上がった部分、腰掛けるのにちょうどいい場所に腰を下ろして待ち続ける。
その時は突如、訪れた。
涼しそうな白いシャツを着た男は枯れた木の根元までやってくると、木を下から上へと見上げ、その大きな幹に手を触れた。
僕はすぐにその男が僕から力を奪った男である事がわかった。
彼は人の気配を感じ取ったのか、ふと僕の方を振り向いた。でも彼は僕に驚きもせずに、むしろにやりとした笑みを僕に見せた。
「いつかきみに会えると思っていたよ」
彼は僕が何者であるかさえすぐに気づいていた。そして僕より先に話しかけてきた。
僕は何も言えずにいた。
彼は僕を無視するように、また枯れた木の方へと体を向けた。
僕は彼が木に触れようとする事が許せなかった。彼は奪われた人の力を奪ってゆく。
「やめろ!」と僕は叫んだ。でもその声は叫び声とは言えないほど小さな弱々しい声で、彼にまでも届かなかった。
彼の手はしばらく枯れた木の幹を優しく愛撫していた。
でも急にあちこちに伸びた枝の一本を掴むと、そいつを強く握り締め、力いっぱいの力を使って折り取った。
彼は折り取った枝を手にしたまま、僕の方を振り向き、ゆっくりと近づいてきた。
瞳は美しく輝いていた。着ている白いシャツも、黒いズボンも、神々しい光を放っているかのように見えた。彼の体はオーラに包まれているようだった。
僕は思わずその姿に見とれてしまった。体全体から発するエネルギーが彼を大きく見せていた。
でも騙されてはいけない。それは人から奪った偽物のエネルギーだ。
「君は俺についてどこまで知っているんだ?」
彼は僕の数メートル近くまで寄ってきて、僕に尋ねた。
僕には彼が始めて会う男のようにさえ思えた。10年の年月で年を重ねたせいもあるが、それ以上に彼はまるで別人のような力に溢れていた。
僕は、「あなたについては、よくは知りません」と、たどたどしく答えた。
彼は少し不思議そうな顔をしたが、すぐに自信に満ち溢れた表情に戻り、話し始めた。
「俺はねえ、ちょっとした名の売れた作家になってねえ、5年前からいくつかの小説を出している。でもここ半年はスランプだったんだ。何も書けずにいた。近頃やっと書けるように戻ってきたがね。なぜだと思う?」
枯れた木の事や、僕自身から奪い取っていた力の事を、僕の口から言わせようとしているのだろう。僕はその望みにこたえてやる。
「ええ、あなたが奪い続けた力、僕はそれに気づきましたよ。あなたに出会わなければ、僕はこの10年間をもっとまとも生きてゆくことができたでしょうね。そしてあなたが再び力を奪い始めたことも」
「きみが本当にこの10年をうまく生きられたか、そいつは疑問だね。きみは奪われてよかったんじゃないのか?」と彼はすぐさま答える。
僕の心の内から忘れていた怒りが湧き上がってくる。彼のオーラに押されていた僕だけど、僕は『奪われてよかったこと』なんて何一つないんだ。
「少なくても、僕の人生をあなたに左右されたくはなかった!」
僕の声はずっと興奮していた。弱々しい声を打ち砕いて、僕は声を荒げていた。
彼は言う。
「そうだな。人に左右される人生はまっぴらだな。でもな、人は人に左右されて生きてゆくもんなんだよ。人は人に左右されながら、安全の傘を得て、生きてゆく。きみにとっては俺の傘の下にいた方が安全だったろうよ」
僕は激しくむかむかしてきた。
なぜ僕がこの男の下に生きてゆかねばならないのだろう?なぜ誰かがこの男の下となり生きたい人生を歩むこともなく生きてゆかねばならないのだろう?と、感じると僕の中の怒りは脳の線をぶった切った。
「きみのような低知能な人間は俺の下にいればよかったのさ」
彼のその言葉に僕の怒りは沸き立った。そして僕は彼に向っていた。
僕は彼の首を絞めるか、腕を引きちぎるかしてやりたかった。そんな力があるかはわからないが、僕の怒りはそこまで向いていた。
「きみは俺を殺すのかい?怒りに溢れ、そして殺して、きみの人生の全てを失うつもりなんだね」
彼はそう言う。
僕は怖気づいた、というより、諭された、感じになった。僕の足は止まった。
「そうだよ。きみは何もできないだろう?きみはその程度の人間なんだ」
我に返った僕の目の前に、彼の顔があった。
そして彼は輝く瞳で僕に言う。
「俺はきみを殺さない。そしてきみを平穏に生かし続けることができるだろう」
全てを諭されているかのようだった。
それが真実のように思えてきた。
『目を瞑るんだ。彼の目を見つめてはいけない。きみはきみなりに冷静であれるだろう?』
ふと心の声がした。光の男の声のようだった。ずっと消えていた僕の想像上の存在は僕のピンチにやってきた。
『惑わされてはいけない』
僕は目を閉じた。
そして脳の奥にある深い気持ちに迫った。そこに意識を集中させ、そこにある言葉を探った。
「あなたが奪い続ける別の人の力を、このまま奪い続けることを僕は許さない」
その声は自然と僕の口から出てきた。
ふとした沈黙が訪れた。
沈黙の中、彼の声がした。
「そうか。なら好きにするがいいさ」
そして肩をポンと叩かれた気がした。
彼はゆっくりと去っていこうとしていた。
僕にはまだそうさせるわけにはいかなかった。
「待て!あなたは誰から力を吸い取ろうとしているんだ!?」
僕は目を開けて、彼の方を見た。
彼は僕の方を振り向いていた。
「そうだな。いつかきみにあわせてあげよう。俺はこの近くにいる。いつでもきみは会いにこれるだろう。そしていずれ、きみはきみの会おうとしている人に会えるだろう」
彼はそう言うと、また山の外へと歩み出した。光の先の出口へと去っていった。
僕は彼を追うこともできただろう。だけど、僕は追わなかった。
興奮しすぎた感情は僕に追う足を持たせてはくれなかった。すでに僕はKO負け寸前のボクサーのようになっていた。
何かが恐くて仕方がなかった。立っているだけで精一杯だった。
(つづく)
『何気ない毎にちを貴方に伝う』4ノ9
昨日の彼と、今日の彼の何が違うというのだろう。
再び輝き出した枯れ木の枝を折れば、彼は自らが強くたくましい存在になってゆく事に気づかされてゆく。
溢れ出すエネルギーは全身を自信にみなぎらせてゆく。秋の終りから失い出した全ての負の出来事は、まるで他人の記憶のように彼の脳から消え去っていた。
活き活きしてきた心の活動は彼を書斎へ向わせた。脳は数ヶ月間の物語のイメージを溜め込んでいたかのように、新しい発想を生み出した。腕はさくさく動き、机の上の紙切れに文章を綴らせてゆく。
次は冒険ものだ。
新しい物語の主人公は女。何も出来ないダメ女は嘘を付き、その嘘から嘘が連なり、どんどん飛んでもない大詐欺師のようになってゆく。男を騙し、手玉に取り、あちらこちらで金を稼いで大豪遊をする。
この物語のこの主人公の女は全く人間らしい優しさを見せない。いくらでも嘘を付くし、体は売るし、金持ちから金持ちへと乗り換える。ろくでもない女なのに、なぜか女は得をしてばかりで痛い目に遭わない。
周りはいい男ばかりで、女のために尽くす。普通なら一生を決めてもいいような出逢いの相手も適当なところで振ってしまう。
こんなハチャメチャな冒険ストーリーを彼はすらすらと書いていった。
3日描いて、2日寝る。彼にはそんなペースの毎日が続いていた。
物語を書いて、眠って夢を見て、夢のどこかと物語が繋がって、また物語を書き、また眠る。疲れを感じて、目の覚めない日は、あの枯れた木に行って枝を折った。するとまたエネルギーは彼の内から一気に溢れ出した。
そんな日々が繰り返され、彼は1ヶ月で、その新作を完璧に書き上げた。
彼はその小説を茶縁眼鏡の男宛てにメールで送った。
するとその日のうちに返信が届いた。
『今回の作品は大変おもしろいものとなっておりますが、、、』
と始まって、いつものようにいくつかのダメだしをしてきた。いつもよりは遥かに少ないダメだしだったが、茶縁眼鏡の男のプライドなのか、少しでも表現がおかしな部分は修正を求め、内容もいくつかにおいて疑問を投げかけてきた。
翌日、彼は彼の知る、茶縁眼鏡の上司の男にメールを送ってみた。
ついでに、今の編集担当者がとても不満で仕方がなかったと、メッセージに付け加えておいた。
またその日のうちに返信はやってきた。
『あいつはすぐにクビにする。すぐにでも代わりの編集者を送る』と返ってきた。
そして物語のおもしろみを絶賛する文面がたくさん付け加えられ、すぐにでも書き下ろしとして出版したいとの内容が盛り込まれていた。
彼は茶縁眼鏡の男の慌てた顔を想像して大笑いした。
この半年近くの空白が嘘だったかのように、彼の心は乗っていた。
彼は叫ぶように笑い続けた。
なんて汚い笑い声なんだ。
彼は君から吸い上げた力で生き生きしているだけなのに。
僕は今日もその事を許さずに怒りを燃やしている。
もうすぐ僕は出逢うだろう。
そして君を救い出そう。
必ず、きっと、そうしよう。
(つづく)
『何気ない毎にちを貴方に伝う』4ノ8
彼も若かりし頃は、まだ夢を追う青年だった。
毎日小説を書き、書きあがった作品を出版社に投稿した。しかし返ってくる答えはいつも、何もなかった。
派遣労働を繰り返していた彼が、今の別荘がある町に越してきたのは11年前の事だった。
彼はこの町を知っていた。亡くなった祖父が住んでいた町だったからだ。
今までの生活を変え、新しい生活の中で、新しい小説を書くことを望んで、彼はこの町にやってきた。
小さなアパートを借り、生活を始めた。仕事は相変わらず派遣労働だった。町には大手企業の工場がいくつかあったから、下請け会社も含めて派遣程度ならその町に仕事はあった。
彼は派遣労働をしながら空いている時間さえあれば空想にふけった。彼の空想は純愛ばかりだった。お決まりのようにいい男が出てきて、いい女が出てきて、二人の間を邪魔するものがいた。それは空想というより妄想のようなものだった。
そしてまた同じように、その空想を小説にしていった。
でもある日、筆はぴたりと止まってしまった。
どれだけ書いても自分自身の小説に成長がない事を強く確信してしまったのだ。
彼は尊敬する有名作家の小説を久しぶりに読んでみた。それは非の打ち所のない素晴らしい小説だった。おもしろくて一気に読み終えた後、自分の書いている小説に取りかかったとき、あまりに成長のない自分の小説に強烈な痛みを感じた。どうしようもない痛烈な心の痛みだった
次の瞬間、彼は尊敬していた作家の小説を破り捨てた。それから本棚に並んでいたありとあらゆる彼の好んでいた小説を破り捨てた。
心からの尊敬は、心からの嫉妬に変わった。
『俺にはできない。そして僅かにも近づけない』
その思いは強烈に強くなり、彼の心を濁した。
彼は自分の生まれ育ち、今日までの人生を見つめた。そして、作家となる要素を何一つ持たないと事を強く感じた。
それは絶望に等しかった。
『俺は一生このまま叶わない夢を追い続けなければいけないのか?』
もしその思いが、理解に変わり、別の人生へと歩み直すことができれば、それはきっと彼にとって目指したことを良き思い出として、次の人生へと歩み出す道として捉える事ができただろう。
しかし彼はそういう結論に達しなかった。
『もし得ることができるのなら、どんな手を使ってでも得たい。どうせ死ぬのなら、どんな悪行を使ってでも、力が欲しい』
心の中には、生きるか死ぬか、その極論の選択しかなかった。
町の中を彷徨っていた彼は、緑の服装をした背の高い男に出会った。
男は彼に、「欲しいのか?」と尋ねた。
クスリだかなんだかかと彼は考えた。どうせ死ぬのならそれに染まるのも構わない、と彼は考え、頷いた。
でも緑色の服を着た男は彼に何も渡さなかった。
「もしおまえが欲しいのなら、取引をしよう」と、男は言った。
それは決してしてはいけない取引だった。
そして彼は緑の男と契約した。彼は決して得られることのないだろうと思っていた力を得ることができた。
その力は僕から奪い取ったものだ。
時は10年と8ヶ月過ぎた。
また彼は同じ事を繰り返した。彼は決してしてはいけない契約を繰り返した。
自分に絶望した彼は、死ぬか悪魔になるしか選べなかったのか。そして彼は悪魔になる事を選んだ。
(つづく)
『何気ない毎にちを貴方に伝う』4ノ7
君は、今日も眠る。
冷たい雨降りの朝は寝心地が良い。
会社へ行くのを辞めて、3週間が過ぎた。日々はただ過ぎ去ってゆく。
夜は苦手で、朝が好きだ。
君は朝に眠る。深く、長く、いつまでもいつまでも。
昨日も朝から昼まで眠り続けて、暗くなってから目が覚めた。
目が覚めても、君は目を開けたまま、ベッドの上で2時間以上、動きもせずにただ黙っていた。
3週間くらい前に初めてベッドの上で黙って2時間くらい居た時、人ってこんなに何もせずに居られるんだ、という、無意味な関心を自分に抱いた。
しかし、その黙った状態も今では当り前になった。君はお腹が3回鳴った時に、体を起こす。どんなにやる気がなくても、食べようという食欲はあるらしい、と君は毎日思う。
パジャマとして使っているジャージを着たまま、化粧はもちろん、髪も整えないままに、君は24H営業のスーパーに出てゆく。
そして半額弁当を購入し、帰ってきて、それをむしゃむしゃ食べる。
ゴミは玄関の側に溜まっている。ほんの少しだけやる気のあった日に、45ℓの袋にゴミをまとめいれたが、それまでは部屋の中に食べ終えた弁当箱が散乱していた。ペットボトルは今も片付けられておらず、あちらこちらにオブジェのように立てかけられている。
食事を終えた君は久々にシャワーを浴びた。
3日ぶりか、4日ぶりか、そのくらいぶりだった。でもただシャワーを浴びるだけ、浴槽に寝転んで、上から落ちてくる温水をただかぶっていた。体も髪も洗わない。お腹が見えて、そこが前より贅肉でぷっくら膨れていることがわかった。でも今の君には、だから何なの?と、それさえも興味がなくなっていた。
頭が働かない状態は君の中でずっと続く。
お風呂から出た君は、洗ってないタオルで体を拭くと、また同じジャージを来て、髪も乾かさずに、いつものゴミのない空いている絨毯の上のスペースに丸くなる。
そして、手の届くところにあるスイッチでテレビを付ける。テレビを見ているわけじゃない。ただ移り変わる光が見ていたいだけだ。
部屋の明かりは付いていない。暗闇の中、テレビのチカチカした光だけが部屋の中を照らしていた。
怒りもなく、悲しみもない。明るさもなく、欲するものもない。養豚所のブタのように、ただ喰われる日を待っているかのようだ。
でも君は喰われないだろう。
君のアパートのすぐ側に、緑の男が住み始めた。すでに君の部屋には盗撮用のカメラと盗聴マイクが仕込まれていて、君は逐一監視されている。
彼の栄養分である君に死なれては困るから、緑の男はいつも君を見張っている。
生かさず、殺さず、君は養分を吸い取られながら、そこに存在している。
ただ存在するだけだ。
あとは全ては彼が奪ってしまってから、君は在るだけになってしまった。
また同じ朝が始まる。
心地よい曇り空でも届く太陽の明かりは君を眠らせ続けていた。
(つづく)