温もりのメッセージ -4ページ目

温もりのメッセージ

人と動物との心の繋がりを大切に、主に犬猫の絵を通して、
彼らの心の純粋さ、愛情の深さを伝えていきたい

 

今を生きる
精一杯生きる

ボクたちにとって
それは自然なこと
当たり前のこと

なのに…
それができない
させてもらえない

オマエは要らない
生きることは諦めろ

それがボクたちに
与えられた運命?

命の期限なんて
こんな理不尽はない…

***********************

もしも言葉を話せたら、
彼らは問うでしょう。

「なぜボクらは殺されるの?」

あなただったら、どう答えますか?
彼らが納得できる答えを導き出せますか?

言葉を持たないことをいいことに、
人間が彼らの運命を自分たちの都合で勝手に
決めている。
でも忘れてはいけません。
彼らは言葉というコミュニケーションツールを
持たないだけで、ちゃんと心があり、
意志や感情を豊かに表現しているということを。
そういう彼らを問答無用で殺処分する。
彼らにとってこれ程理不尽なことはありません。
 
 

 

今夜もこの家に明かりが灯った。
ワタシの飼い主一家の団欒が始まる。
美味しそうな夕食の匂いが漂ってくる。
楽しそうな笑い声が聞こえる。
ワタシはそれを窓の外からじっと眺めてる。
いつもの光景、もうずっと前から。

ワタシがこの家にやって来たのは子供の時で、
その頃はワタシも家の中で暮らしていた。
でも成長してからは、この庭の隅に作られた
狭い犬小屋が、ワタシの住処になった。
そして、いつもここで短い鎖に繋がれている。
1日1回のご飯と、お水は器がカラになって
だいぶ経ってから、やっと気づいてもらえる。
お散歩はいつから行ってないか、

もう覚えていない。
名前を呼んでもらえることも、

ほとんど無くなった。

ワタシがこの一家に忘れられた存在に

なってから、随分時間が流れた。
ワタシは年老いた…。
あんまり歩くこともないから、

足腰も弱くなって体力もなくなった。
体もあちこち痛む…。
一日中寝ているしかない生活。
おそらくこの冬を越し、

春を迎えることはできない。
そんな気がしている…。

ワタシは残された時間も、こうして日が暮れて
この家に明かりが灯るのを、ただ見続けるだけ。
そして、昔のようにワタシがこの一家の団欒に
加えてもらえることは、もうないだろう。

家の灯火は明るくて温かい。
でもワタシの命の灯火は、この寒空の下、
冷たく凍りついていくだけ。

もしかしたら、このままこの家の明かりが消え
一家が寝静まる頃、一緒にワタシの命の灯火も
消えるかもしれない。
誰にも気づかれないまま…。


***********************

ネグレクトという長期間に渡る動物虐待。
彼らの心身をどれだけ傷つける行為なのか、
今一度お考えください。
そして、ネグレクトするくらいなら、
最初から動物は飼わないことです。
飼うならば、最後まで責任を持って

飼育してください。

 

 

 

逢いたくて、逢いたくて…

空に還っていった君を
今日も想い涙が溢れる

天使になった君の姿を
今日も探してしまう

逢いたくて、逢いたくて…

今はただただ
君のことだけ想う
君との日々に戻れたらと
願ってしまう

逢いたくて、逢いたくて…

でも今は逢えない
こんな私じゃ君には逢えない

いつか涙を捨てて
笑顔を取り戻せたなら

その時は
夢の中で逢いに来て
そして
君のとびきりの笑顔を見せて…

*********************

天国へと旅立った愛犬愛猫。
悲しくて悲しくて、考えると涙が止まらなくなります。
でも泣いてばかりの日々では、天国のあの子が

心配します。
天国のあの子が心配しないような生き方をしなければ。
今は思いっきり泣いて泣いて泣いて、

そしてその後はあの子と夢で逢えることを

楽しみに前を向いて生きていきましょう。

 

 

 

ここは虹の橋のたもと。
虹の橋は天国へと続いている。
ここに来た犬猫は自分の飼い主だった人を
待っている。
そして、その人が来たら一緒に虹の橋を

渡るんだ。

ボクはここに来て、もう随分経つ…。
今までどれだけこの橋を渡っていく者たちを
見送って来ただろう。
ボクが待つ人はまだ来ない。
いや、本当は待つ人なんかいない…。

ボクにもかつては飼い主がいた。
でもボクは捨てられ、そして野良犬になった。
野良犬が生きていくには非情な世の中だった。
結局、捕獲され、ボクが生き続けることは
許されなかった。

そして今、ここにいる。

ただ橋を渡ることはできない。
今日もまた見送るだけ…。

そんな毎日を送っていたある日、
ひとりのおじさんに出会った。
おじさんはいつもひとりだった。
だから、ボクと同じように橋を渡ることは
できないようだった。

ボクはおじさんのことが気になっていた。
思い切ってボクはおじさんに話しかけてみた。

「ねぇ、おじさんはまだ一緒に橋を渡る子と
会えないの?」

おじさんは、ちょっと驚いたみたいだった

けど、その後はボクと視線を合わせること

もなく無表情のまま答えてくれた。

「一緒に橋を渡る?バカ言うなよ。
俺には一緒に橋を渡るやつなんかいない。
俺はな、生きてた頃、狩猟が趣味でな。
鹿や猪、野生の動物をいっぱい殺してきた。
狩猟シーズンが終わる頃には、用済みの

狩猟犬を山に置き去りにしたこともある。
あとな、うちで生まれた子犬を川に流したりも

したよ。
他にもいっぱい言えないようなことを

してきたんだ。
お前らからすれば、俺は残忍で酷い人間さ。
俺は橋は渡らないんだよ。
どうやら天国とは真逆の地獄に堕ちるらしい。
人間にも随分酷いことしてきたからな、
自業自得ってやつさ。」

ボクにとっておじさんの言葉は衝撃だった。
ボクを捨てて死に追いやった飼い主に似ていて
寒気がした。

もうおじさんには関わらないことにしよう、

そう思った。
でも、何故だろう、その後もおじさんのことが

気になり、つい目で追っていた。

それからもおじさんの回りには犬猫たちが
次々と現れては、優しく話しかけたり、
子犬は無邪気にじゃれついたりしていた。
おじさんは、最初は迷惑そうにしていたけど、
そのうち表情も柔らかくなって、
楽しそうに笑っていることが多くなっていた。

そんなある日、おじさんが泣いていた。
おいおいと声をあげて泣いていた。

どうして泣いているのか、おじさんに尋ねてみた。

「ここの犬猫たちはみんな優しいな。
こんな俺にも声をかけてくれる。
どうしてそんなに優しくできるんだ。
俺は動物には酷いことばかりしてきたのに…。
本当に酷いことをした、いまさら謝って
済むことではないが、心から謝りたい。」

おじさんはやっと気づいたらしい。
動物は純粋で優しい、
そして動物にも心があるということに。

でも、もう遅かった…。

それから、少ししておじさんは地獄から迎えが
来て連れて行かれてしまった。

ボクはやっぱり見送ることしかできなかった。

神様はどうしておじさんをこの場所に連れて

きたんだろう。

神様は教えてくれた。

「生きていたときにしてきた行ないが、
天国か地獄かを決めるのだ。
もしあの男が生きている間に自分の行ないを
悔い改めることができたのなら、
もしかしたらお前と一緒にこの橋を渡ることが
できたかもしれないな。
しかし人間という生き物は、自分の愚かさに
なかなか気づくことができない憐れな生き物だ。
そしてあの男は、ここに来てやっと気づくこと

ができた、自分がしてきた罪の重さに…。」

 

どうして人間は生きている間に気づくことが

できないんだろう…。


*************************


人間も動物も同じ、虐待はやめてください。
良いことも悪いことも神様はすべて見ています。
行いは必ず自分に返ってくるのです。

 

 


 

 
「メリー、みゆきもうすぐ
 帰って来るからね。」

うちには15歳になるメリーという犬が
います。
もうすっかりおばあちゃんで今は寝た
きり、頭を持ち上げるのがやっとです。
ご飯も、もう1週間前からは受けつけ
なくなりました。
毎日点滴に通っていますが、
今日、獣医さんからは、
一両日中との宣告を受けました。

うちには娘がひとりいます。
高校3年生で来年には大学受験を
控えています。

娘がまだ3歳のときにメリーはこの家
にやって来ました。
まだ生後3ヶ月にもならない子犬で、
保健所に出向き里親として引き取っ
たのです。

娘は小さいながら、動物が好きなよう
でしたし、動物がいることで子供の情操
教育にもなると聞いたことがあったので、
夫と相談しメリーを迎えたのです。

メリーはすぐに娘に懐き、いつも一緒で
まるで本当の姉妹のようでした。
それから15年、メリーは娘とともに成長し、
そしてあっという間に娘の年を追い越して
いったのです。

娘にとっては妹でもあり親友でもあり、
何でも話せる相談相手でもありました。
メリーも娘の言葉に耳を傾け、
慰めたり一緒に喜んだり…。
また時には親や先生のように、
娘をたしなめたりすることもありました。

メリーは娘にとって家族以上の存在
だったに違いありません。
そのメリーがもうすぐ天国に旅立とうと
しているのです。
娘はどうなってしまうのか、親としては
心配で仕方がありませんでした。

「ただいま、メリーはどう?」

娘が学校から帰ってきました。

「うん、午前中に点滴してきたけど、
先生はもう…。」

それ以上は言葉になりませんでした。

娘はメリーの元へ急いで駆け寄りました。
メリーは娘が帰ってきたのがわかったようで、
ゆっくりとシッポを左右に振ったのです。

「メリー…。」

娘は涙ぐみ、それ以上の言葉が出ないよう
でした。
何度もメリーの体を撫でていました。

私は娘の感情の高まりがおさまった頃を
見計らい、こう話しかけました。

「メリーはみゆきに撫でてもらうのが
大好きだもんね。
メリー、嬉しいね…。
そうそう、好きで思い出したけど、
お散歩は特に好きだったよね。
ご飯よりも、まずお散歩だったもんね。」

少しでも場を明るくしたくて、
そんな話を振ってみたのです。

寝たきりになってからはカートに乗せて、
近所の公園まで連れて行っていました。
お散歩は娘の役目でした。

「そう言えば、メリーってお散歩から帰って
来ると、必ず立ち止まって、ここが我が家っ
て確認するようにうちを見上げてから中に
入っていたんだよね。
不思議だな〜っていつも思ってた。」

娘はメリーを撫でている手を一瞬とめて、
ふと思い出したように話しました。

「メリーはこのうちに来て15年ずっと、
ここで歴史を刻んできたんだよね。
この家はメリーにとって、
家族の歴史の象徴のようなものなのかも
しれない。
私たち家族の楽しいことも悲しいことも、
全部見てきたんだよね。
メリーは家族のこと何でもいちばん知ってる。
特にみゆきのことは、お母さん以上に
知ってるんじゃない?」

そんな私の言葉に娘は、

「やだ、そうかな。
そうかもしれない。
お母さんに言えないことも、
何でも話して来たから。」

と、ちょっと照れ臭そうに言いました。

そんな会話を子守唄代わりにして、
メリーはいつのまにかスヤスヤと寝息を
立てていました。

それから、夜になってメリーの呼吸が
少し荒くなり、いよいよその時が近づいて
来ていると感じ始めた時、何を思ったのか
突然、娘はメリーを抱き上げたのです。

「どうするの?」

私の言葉には答えることなく、
娘はメリーを抱えたまま玄関の外に
出ていきました。
そして玄関の前でクルリと向きを変え、
月に照らされた我が家を見上げました。
それから、娘に抱かれたからか、
呼吸が少し落ち着いてきたメリーに、
こう優しく話しかけました。

「ねぇ、メリー、見てごらん。
メリーはこのうちに来てから、
このうちで私たちと一緒に家族の歴史を
作ってきたんだよ、今、この瞬間もね。
メリーは、紛れもなく大切な家族の一員だよ。
ありがとうメリー、家族になってくれて。
ここがメリーのうちだよ。
さぁ、一緒にしっかりと目に焼き付けて
おこうね。」

そう言うと娘はメリーの顔に自分の頬を
そっと寄せました。

メリーは一瞬目を開けて、ゆっくり
顔をあげました。
そしてほのかに微笑んだように私には
見えたのです。
二人の瞳には、ちょっと古ぼけた我が家の
景色が、月に照らされまぶしく輝いて映って
いたことでしょう。
そしてその景色は家族の歴史として、
二人の心に深く刻み込まれたのだと私は
確信しました。
我が娘のみゆきとメリーとの心の絆に
感動すると同時に、いつの間にか大人に
なった娘を頼もしく感じた瞬間でも
ありました。

翌日の早朝、メリーは静かに息を引き取り
ました。
 

あれから2ヶ月。

娘は年が明けたら大学受験、もちろん学業
にも精を出しているけれど、メリーと暮らした
15年は娘にとって人としての多くの学びと
成長を与えてくれたのだと、最後の二人の
姿が物語っていたように思います。

「行ってきます!」

娘は今日もメリーの写真にそう声をかけ、
元気に学校へ出かけて行きました。
きっとメリーも、私と一緒に娘を優しく
見送ってくれているはずです。


*******************


みんな大切な命、一度家族に迎えたならば、
最後まで一緒に家族の歴史を刻んでください。
 
 
 
今日もなんか退屈…。
お散歩には行ってるけど、
お留守番の時間の方が長いんだ。
いつも窓から外を眺めてる。
あの通りを思いっ切り走ってみたい。
きっと大きな草原があるんじゃないかな。
お散歩はいつもあの通りの手前で
曲がっちゃうんだ。
ボクは冒険がしたい。
自由になりたいんだ。

「ねっ!君もそう思うでしょ?」

ボクは窓際に吊るされた鳥かごの中の
カナリアさんに尋ねてみた。
きっとカナリアさんも狭い鳥かごの中で、
同じように思ってるに違いない。
あの大空に大きく翼を広げて飛び立ちたいと。

するとカナリアさんはこう言った。

「ワタシはここにいるよ。
  冒険なんて考えたこともない。」

「えっ?そんな狭いところで?
  もっと広い世界で自由になりたくないの?
  ボクがきっと助けてあげるよ。」

「ワタシはここで生きていく、
  ここでしか生きられないんだよ。」

カナリアさんの言っていることが理解できないまま、
数日が過ぎたある日のこと。

いつものお散歩中に、そのチャンスはやってきた。

お母さんがリードを離してしまったんだ。
その瞬間ボクは全力疾走した!
あの通りを曲がらずまっすぐに走った。
ボクの名前を呼ぶお母さんの声もたんだん
遠くなって、そしていつしか聞こえなくなった。

いったいどれぐらい走っただろう。
気がつくとそこには見たこともない
景色が広がっていた。
草原なんかどこにもない。
すぐ近くを車がものすごいスピードで
行き交っている。
忙しそうに歩く人はボクのことには興味もない。
邪魔だと危うく蹴飛ばされそうになった。
トボトボと歩いていると、だんだん日も暮れてきた。

お腹が空いたな、
今日はどこで寝ればいいの。

なんだか不安になってきた。
心細いし淋しいよ。

カナリアさんが言っていたことを思い出した。
カナリアさんは知っていたんだ。
自分たちにとって自由がどんなに孤独で
過酷なものかということを。

うちに帰りたい。
だけど、どうやって帰ったらいいんだろう。
ボクにはうちに帰る術はない。

        ※        ※      ※        ※

ギーッ、バタン‼︎

またあの奥の部屋の扉が閉まった。
連れて行かれた子たちは、
二度と戻って来ないだろう。
いつもそうだ…。

次はきっとボクの番だ。
怖いよ、誰か助けて!

震えが止まらない。

ガチャッ。

ボクの部屋の扉が開いた。

ついにボクの番が来たのか?

ボクは怖くて頭をあげることができないまま
固まっていた。
するとボクを優しく撫でてくれる感触に気づき、
そーっと頭をあげてみた。
そこには懐かしいお母さんの顔があった。
お母さんは涙をいっぱい浮かべてボクを
抱きしめてくれた。

ボクは全身から力が抜け、そしてボクの目からも
涙がいっぱい溢れ出した。
ボクはおうちに帰れるんだね。

********************
 

愛犬が迷子になる理由は様々あると思います。
飼い主のちょっとした気の緩み、不注意なども
多いのではないでしょうか。
いずれにしても、一度迷子になったら、
自分で戻ってくることは困難です。
うちの子に限ってという思いは捨て、
愛犬を迷子にしないために、
日頃から気をつけましょう。
迷子になった愛犬が、その後どんな思いで
過ごすことになるか、どんな目に遭うか
ぜひ想像してみてください。
 
 
 
年を取るとね
動くのがおっくうになるんだ
歩くのも辛くなるんだよ

年を取るとね
あんまりよく見えなくなるし
あんまりよく聞こえなくなるんだよ

年を取るとね
時々お漏らししたりもする
そして
いっぱい病気もするよ

でも年は誰でも取るんだよ
年を取るってことは
生きることの積み重ね
嫌なことじゃないし
ダメなことでもないんだ

だからあと少し
一緒にいてくれない?
最後まで見ててくれない?

だってあなたもいずれ
年を取るんだよ、ボクのように…

********************

生きている以上年を取るのは当たり前です。
病気で医療費が大変、介護が大変、
高齢を理由にペットを捨てたり、
手放す飼い主もいると思います。
でもあなただって年を取るんです。
病気で身体が思うように動かなくなったり、
認知症になったりするかもしれません。
そんな時に家族に捨てられたら?
ペットも同じではないでしょうか。
どうか最後まで責任を持ち、
家族として暮らしてあげてください。
 
 

 
 
例えば、大好きって伝えることは、
とても勇気がいること。
だけど、もし伝えられたら、
きっとその日から世界が変わる。

あの日あなたと出会って
このうちにやってきた。

警戒と混乱しかなかったワタシは、
あなたの目を見ることも
出来なかった。
ずっと固まって動けず、
近づくあなたを威嚇ばかりした。

あなたはいっぱい手に
引っかき傷を作りながら、
それでも根気よくワタシと
接してくれた。
決して無理をせず、距離を
保ちながら。

ワタシがこのうちに来て
どれくらいの時間が流れただろう。
いつしかワタシにとって、
このうちはとても居心地のいい
場所になった。

あなたのことが大好き、
ずっとずっと大好き…。

ワタシの気持ち伝えるよ、
あなたに。

だから今日も、
ゆっくり大きく瞬きをするよ、
あなたを見つめながら…。

ねぇ、気づいてくれた?
ワタシの大好きの合図。

これからもずっと伝え続けるよ。
ワタシの世界を変えてくれた
あなたに…。


*********************

動物はあなたの愛情に必ず応えてくれます。
そして、あなたに対する愛情を素直に
表現してくれるはず。
精一杯、大好きの合図を送っていることでしょう。
そんな彼らの合図をあなたは気づいていますか?
そして、あなたからも送ってあげてください。
大好きの合図を…。

 
どうしていじめるの?
どうして憎むの?
どうして殺すの?
どうして、どうして…?

わからないよ
わからないよ…

わたしたちの心の声は
届かないの?
わたしたちの本当の姿は
見えないの?

いじめないで
憎まないで
殺さないで

わたしたちはただ
生きる場所が欲しいだけ
明日も生きていたいだけ…
 
***************************

繰り返される動物虐待、遺棄、乱繁殖
そして殺処分。
彼らを支配し利用し、そして必要なければ
排除する人間たち。
そんな人間がいる限り、言葉を持たない彼らは
苦しみ続けます。

いったいいつになったら彼らは、その命が
脅かされる日々から解放されるのでしょうか。
 
 
 
僕は今、1匹の猫を荼毘に付した。

僕はこの猫の飼い主ではない。
飼い主は僕の母だ。
いや、母だった…。
なぜ過去形か、それは母もすでにこの世を
去っているからだ。
  
    *   *   *   *

猫の名前はチャトと言う。
僕の実家の庭先に住み着いた野良猫が
生んだ子だった。
母猫は子猫を生んで間も無く姿を消してしまった。
5匹の乳飲み子猫を不憫に思った母は、なんとか
里親さんを探し、最後に残った子猫を自分で
飼うことにしたのだ。

当時、僕は母に言ったものだ。

「野良猫の餌やりなんかしてるから、
そんな目に遭うんだよ、
まったくお人好しなんだから。」

そんな僕の言葉に母はこう言っていた。

「そんなこと言ったって可哀想じゃないか。
親に育児放棄されて、生きていけないんだよ。
見殺しにはできないよ。」

それから、この雄の子猫は僕の実家の
一員となった。
名前は茶トラだからチャト、簡単なものだった。
それでも十数年、実家で可愛がられて暮らしていた。
親父も死んで、春にはとうとう母も死んだ。
突然倒れ、1週間もしないであっけなく
この世を去った。

そして、実家にはチャトだけが残った。

すでに老猫となっていたチャトは、
僕が引き取ることにした。
僕は一人息子で、嫁と二人暮らし。
子供もいないし、嫁もチャトを引き取ることに
反対はしなかった。

チャトが我が家にやってきて数日後のこと。
仕事から帰ると嫁からチャトがいなくなったと
知らされた。
実家にも行ってみたけどいなかったそうだ。
実家は我が家から歩いて5分ほどの距離。
親のことも心配だったので、近くに住んで
時々様子を見に行っていた。

その後、近所を探しても見つからないまま
2日が過ぎた。
もしかしたらと実家に行ってみた。
庭から微かな猫の声が聞こえた。
ちょっと薄汚れたチャトだった。
こんな近くの家に2日もかかって帰ってきたのか。
あちこち彷徨って、やっと辿り着いたんだろう。
それからも何度か脱走を繰り返すたび、
チャトは必ず実家に戻っていた。

僕はチャトを無人の実家に戻すことにした。

玄関を開けると、チャトはさっと勢いよく中に入り、
なんだか懐かしむように柱に体を擦りつけて、
喉をゴロゴロ鳴らしていた。

それから実家に住むチャトのために、
僕は毎日餌やりに通った。
仕事で行けない時には嫁が代わってくれた。
そうやって、半年近く過ぎた頃のこと。
そろそろ寒くなるし、真冬になれば氷点下まで
気温も下がるから何とかしないと。
そう嫁とも話し合っていた矢先の事だった。

いつものように実家の玄関を開けても
チャトは出て来ない。
いつもはニャアと一声鳴いて、奥からゆっくり
歩いて来るのに。
僕は「チャト!」と呼んで家の中に入った。
奥に行くと、どこから引っ張り出したのか、毛糸で
編んだひざ掛けの上でチャトが寝ていた。

「なんだ、こんなところで寝ちゃって。」

そう思って近づいた時、眠っているように見えたチャトが、
すでに息をしていないことに気づいた。
それは本当に眠っているように穏やかな死に顔だった。
よく見るとチャトが敷いているひざ掛けは
母の手編みのものだった。

チャトは母の手編みのひざ掛けの上で母の元に
旅立って行ったのだ。
たったひとりで…。

     *   *   *   *

「遅くなってごめん。」

仕事が終わって嫁が入ってきた。
チャトはすでに火葬された後だった。

「俺さ、やっぱりチャトを実家に戻さなければ
良かったのかな?
ちょっと後悔してるんだよね。
結局、俺はこうしてチャトを見送ることしか
できなかった。」

嫁はお骨になってしまったチャトに手を合わせ、
それからゆっくり僕を悟すように話した。

「そうね、でもどうすることがいちばん良かったのか
なんて、誰にもわからないんじゃない?
大事なのはチャトが何を望んでいたのか。
それも私たちにはわからない。
ただ、もし自分がチャトだったら、
どうして欲しかったのか、それを考えて決めたこと。
正解も不正解もない、私はそう思うよ。
チャトは慣れ親しんだあの家を死に場所に
選んだんだよ、死に方の選択をしたんだよ。
だってあの家で生まれ、あの家で育ったんだものね。
その最後の選択を私たちが納得して、
見送ってあげた・・・
それで良かったんじゃないかしら。
今頃は天国でおはあちゃんの膝の上で、
満足そうにゴロゴロ喉を鳴らしていると思うわ。」

小さな骨壷を抱え火葬場を出ると、頭上からちらちらと
粉雪が舞ってきた。
僕は思わず小さくなってしまったチャトを
ギュッと抱きしめた。