自由が意味するもの | 温もりのメッセージ

温もりのメッセージ

人と動物との心の繋がりを大切に、主に犬猫の絵を通して、
彼らの心の純粋さ、愛情の深さを伝えていきたい

 
今日もなんか退屈…。
お散歩には行ってるけど、
お留守番の時間の方が長いんだ。
いつも窓から外を眺めてる。
あの通りを思いっ切り走ってみたい。
きっと大きな草原があるんじゃないかな。
お散歩はいつもあの通りの手前で
曲がっちゃうんだ。
ボクは冒険がしたい。
自由になりたいんだ。

「ねっ!君もそう思うでしょ?」

ボクは窓際に吊るされた鳥かごの中の
カナリアさんに尋ねてみた。
きっとカナリアさんも狭い鳥かごの中で、
同じように思ってるに違いない。
あの大空に大きく翼を広げて飛び立ちたいと。

するとカナリアさんはこう言った。

「ワタシはここにいるよ。
  冒険なんて考えたこともない。」

「えっ?そんな狭いところで?
  もっと広い世界で自由になりたくないの?
  ボクがきっと助けてあげるよ。」

「ワタシはここで生きていく、
  ここでしか生きられないんだよ。」

カナリアさんの言っていることが理解できないまま、
数日が過ぎたある日のこと。

いつものお散歩中に、そのチャンスはやってきた。

お母さんがリードを離してしまったんだ。
その瞬間ボクは全力疾走した!
あの通りを曲がらずまっすぐに走った。
ボクの名前を呼ぶお母さんの声もたんだん
遠くなって、そしていつしか聞こえなくなった。

いったいどれぐらい走っただろう。
気がつくとそこには見たこともない
景色が広がっていた。
草原なんかどこにもない。
すぐ近くを車がものすごいスピードで
行き交っている。
忙しそうに歩く人はボクのことには興味もない。
邪魔だと危うく蹴飛ばされそうになった。
トボトボと歩いていると、だんだん日も暮れてきた。

お腹が空いたな、
今日はどこで寝ればいいの。

なんだか不安になってきた。
心細いし淋しいよ。

カナリアさんが言っていたことを思い出した。
カナリアさんは知っていたんだ。
自分たちにとって自由がどんなに孤独で
過酷なものかということを。

うちに帰りたい。
だけど、どうやって帰ったらいいんだろう。
ボクにはうちに帰る術はない。

        ※        ※      ※        ※

ギーッ、バタン‼︎

またあの奥の部屋の扉が閉まった。
連れて行かれた子たちは、
二度と戻って来ないだろう。
いつもそうだ…。

次はきっとボクの番だ。
怖いよ、誰か助けて!

震えが止まらない。

ガチャッ。

ボクの部屋の扉が開いた。

ついにボクの番が来たのか?

ボクは怖くて頭をあげることができないまま
固まっていた。
するとボクを優しく撫でてくれる感触に気づき、
そーっと頭をあげてみた。
そこには懐かしいお母さんの顔があった。
お母さんは涙をいっぱい浮かべてボクを
抱きしめてくれた。

ボクは全身から力が抜け、そしてボクの目からも
涙がいっぱい溢れ出した。
ボクはおうちに帰れるんだね。

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愛犬が迷子になる理由は様々あると思います。
飼い主のちょっとした気の緩み、不注意なども
多いのではないでしょうか。
いずれにしても、一度迷子になったら、
自分で戻ってくることは困難です。
うちの子に限ってという思いは捨て、
愛犬を迷子にしないために、
日頃から気をつけましょう。
迷子になった愛犬が、その後どんな思いで
過ごすことになるか、どんな目に遭うか
ぜひ想像してみてください。