仕事から帰ると、看護婦さんとお母さんがお店にいた。



少ししてドンドンって壁を叩く大きな音がした。



お父さんだ。



たまたま看護婦さんがいたから、看護婦さんに中に入ってもらうと、点滴が終わったのに気づいてもらえなかったらしく、仁王立ちして怒っている父がいたらしい。



私が中に入ろうとすると窓から父と目が合い、



『大声出さすなや!!!!!!!』



って怒鳴られた。



私は間が悪かったらしく、そのとき最初に居合わせた最初の家族だったみたいで、



怒りの矛先を向けられてしまった。




ん~黄疸でマッ黄色の目でにらまれて怒鳴られるのはかなりダメージが大きい。



仕事から帰ってきての父の第一声がこれだとさすがに・・・。



こんな感じの毎日。



正直ツライ。



だけど、それは長くは続かないって思うから何とか耐えられる。



本人が一番つらいんだ。



病気が言わせてるんだ。



父にとってきっと毎日が恐怖。




受け止めちゃうと自分がだめになっちゃうだろうな。きっと。



私がそう感じるんだから、妹たちは余計にどう接したらいいのか分からないはず。



今は、とりあえずあたらず触らず。だけど決して離れず。



それしか私には出来ないや。



ここ数日の猛暑も手伝ってるんだろうな。





夜ご飯の後、ベッドで苦しむ父の傍に行こうとすると、



『触るな!』 って言われた。



・・・・・・・・・・・・ショック。




まぁ、こんなことは最近毎日かなぁ。



かなり体がしんどいみたいで、



『もういい。』 ってボソッと言ったり。



母から聞いた話によると、



これまでは何とか病気を治そうと思って頑張ってたみたい。


だけど、最近 『はやく死にたい』 って言ったり、突然泣き出したり。



お父さんも戦ってるんだって思った。



もって行き場の無い苦しみ。



傍に誰かいてほしいっていうときもあれば、誰も近寄ってほしくないって時もある。



ちょっとくらい 『触るな!』 っていわれただけで落ち込んでちゃだめだよね。



それから少しして、さっきのはなんだったんだって感じに、『マッサージして』って。



安心した~。



そんな感じで一喜一憂しています。


今日は訪問看護婦さんが来て点滴をしてくれた。



カリウムの数値が低いことから今日は、点滴の中にカリウムの注射液を2本入れた。



点滴もいつもよりゆっくり目で滴下する。



点滴を始めてしばらく、体の不調を訴えていたけれど、途中で中止することなく点滴が体の中に入った。



だけど、やっぱり調子が悪い。



最近はモルヒネも経口投与ではなく、モルヒネよりも強い麻薬の貼り薬(デュロッテップ)を3日に1度はりかえている。



腹水もだいぶたまっているらしく、お父さんの体は、栄養失調の子供のような体つきをしている。



お腹はパンパンに腫れていて、お腹以外はガリガリ。



ずっと寝ているとお尻が痛いらしく、床ずれが出来ないか心配。



床ずれは、栄養状態が悪かったりすると一晩で出来てしまう厄介者。



今毎日欠かさずやってるのは、お父さんの足のマッサージ。



苦しくても、機嫌が悪くても、足を揉んでくれと父は言う。



苦痛だらけの毎日で唯一気持ちいいと感じるのはマッサージだけじゃないのかなと思う。



最近はインターネットから足の裏の反射区の図を引っ張り出して、お父さんの要求する部位を中心にマッサージする。



やっぱり肝臓の部分を中心的に揉んでくれという。



私に出来ることはこれくらいしかないから、もう少し勉強して、足裏マッサージ 上手になりたいな。



昨日は私は仕事休みだったんだけど、気づいたら1日中寝てた。



なんだかんだ言って気の張り詰めた生活が2ヶ月続いている。



自分もいたわりつつ、先にバテテしまわないように、体調の自己管理もしなくっちゃ。



そう考えると父はタフなのかもしれないな。








さっき、ようやく父がベッドに戻った。


そして今はいびきをかいて眠ってる。



いびきにも色々あるからしばらく様子を伺ってたけど、



どうやらフツーのいびきみたい。


父のいびきを聞くのはひさしぶりだなぁ。



最近こんなに眠ってる父の姿見たこと無い。



昔、父がまだふくよかな体つきの頃、父のいびきによく悩まされた。



2階建ての家に住んでたんだけど、父と母は1階で。私たち姉妹は2階で寝てたの。


2階で寝てるのに、時々父のいびきで夜中に目が覚めることがあった。



そんなことを思い出したよ。




父もようやく眠れたようだし、そろそろねようかなぁ・・・。



でも、今日はワールドカップの決勝戦がある。



ん~時の流れに身を任せよう。



とりあえず布団引いて横になろっと。




今日の暑さはハンパじゃなかった。



父から自分からクーラーを入れてくれって今年初めて言った。



父は元々は暑がりで毎年クーラーガンガン。



私はクーラーが苦手だから、夏はほとんど父とは一緒にいられない。


父は、今は体力も消耗しきってるから、扇風機も寒いっていう。


脱水で微熱もここ1ヶ月くらいは続いてるから余計に。



そんな父も今日の暑さにはさすがに参ったみたいだ。



今、父はリビングのソファーに座ってる。



仕事から帰って父のところへ行くと、目を閉じて眉間にしわをよせて苦しんでた。



父の癌は肝臓の出口付近にある。



ちょうどみぞおちのあたり。



そこにある癌が父を痛めつける。



横になってるよりも座ってるほうがまだましらしく、さっきからソファに座って一人痛みと戦っている。



父の痛みをとってあげられるようなハンドパワーがほしい。



こんなとき、何もしてあげられない。



ただ早く痛みが治まるように祈ることしか出来ない。



こういうときに傍にはいてほしくないらしいので、静かに別の部屋から様子を伺う。




今、父の状態は、気力だけで持ってる世界らしい。


血液検査の数値からいって、どうなってもおかしくない数値らしく、


看護婦さんも元気そうな父の姿に驚いている。




3ヶ月といわれて気つけば2ヶ月が過ぎた。


この間、ホントあっという間だった。



6月10日の友達の結婚式までもつかどうかって言われてたのに、さらにあれから1ヶ月がたつ。



神様はいつになったら父を解放してくれるんだろう。



死ねば痛みから解放される。


父は楽になる。



だけど父とお別れをしなくちゃいけない。



複雑な気持ちが毎日毎日、容赦なく襲ってくる。







今日、血液検査の結果が出ました。



黄疸の数値を表すビリルビンの数値は 21.3 と横倍。



だけど、カリウムの数値が 2.7 と低くなってた。



通常だと、血液中のカリウム濃度は 3・5~5・0mEq/l くらい。


3・5mEq/l以下に低下した状態を低カリウム血症というらしい。

カリウムの低下で障害を受けやすいのは、筋肉(骨格筋や心筋)、消化管、腎臓で、



実際に現れる症状としては、軽症であれば脱力感や筋力低下など骨格筋の症状、



重症の場合は四肢麻痺(ししまひ)、呼吸筋麻痺、不整脈、腸閉塞ちょうへいそく)などを起こす可能性があるらしい。



だけど、とりあえずはもう少し仕事を頑張りつつお父さんの傍にいようと思います。



介護の仕事をしようっていう気持ちになったのは、元々はお父さんの持病であるリウマチ。



近い将来きっと介護が必要になる体だから、そのときの為に勉強して技術を習得しておこうとおもったの。



身近な人に介護が必要になった時に出来る限り、力になりたいと思ったのがきっかけ。



だからこそ、傍にいることが出来なければ意味が無いんだ。



まさかこんなにはやくそうなるとは思っていなかったけれど・・・。



今日のお父さんは結構調子がいいみたい。



だけど、変。



ご飯食べたあとに、いきなりお経のカセットテープを流しながら読経を始めたり。



お父さんが御仏壇に手を合わせたりする姿ってほとんど見たことがない。


読経をするお父さんなんて初めて。



何を思ったんだろうね。



今日はお医者さんが往診に来てくれたんだけど、そのときも自分から


ここが痛い。 ここが張るとか、言ってたし。



最近のお父さんは、以前のお父さんに比べるとかなり丸くなった気がする。



結局今日は、調子がよかったからか、私の友達呼んでトランプの株?大会をしました。



あれから意識障害みたいなのも現れていないし、今は少し落ち着いてる。



再び病魔が悪さし始めるだろうけど、出来る限り今の状態が続いてくれたらいいのにって思う。








今日は、看護婦さんがくる日。

ちょうどお昼ご飯を食べてる時に看護婦さんが来たんだけど、

昨日とはうって変わって調子がいいみたい。

お昼も食べて、冗談を言いながら看護婦さんと話をしたり。

だけど、点滴を打ってから少し調子が悪くなって、吐き気をもよおしてトイレにいったりベッド上でのた打ち回ったり。

夕方になって少しお薬が効いてきたのか調子がよくなり、今日の夜ご飯は1人前くらい食べました。

そのあと、お風呂にはいりたいと言うので今日はお風呂にも入りました。

今はちょっと食べ過ぎたためか少し気分が悪いといってベッドで横になってます。

今、私の中ですごく悩んでることがあります。

それは、仕事を休んでお父さんの傍にいるかどうするか。

前から看護婦さんにいつ何が起こってもおかしくない状況とは言われてたんだけど、

実際お父さんの命がいつまで持つのか分からない状態。

だから後悔しないようにと思って休んでも、それが1週間以上になると職場に迷惑をかけてしまう。

そんなことを悩んでいます。

おばあちゃんを家で看取った時も、その葛藤があった。

葛藤を抱えながら仕事に行ってたけど、

ある日、私は何で他人の介護しておばあちゃんの介護してないの??っていう気持ちになって仕事をお休みさせてもらった。

仕事を休んで3日後におばあちゃんは息を引き取りました。

お父さんの事に関しては、他人の介護して何で自分の親の介護をしないんだろうという葛藤は無い。

今は、ある意味介護を仕事だと割り切ることが出来ているみたい。

けれど、もし仕事中に何かあったらと思うと、毎日不安になる。

だけど切り替えて、家を出るときにその気持ちは家においていくようにしている。

昨日の出来事があってから、だけど真剣に考えるようになった。

今日、採血をした。

父の血液の数値は、かかりつけの病院の機械じゃもう数値が高すぎて測れないから、外部の機関で測ってもらっているらしい。

明日、その検査結果が届くらしいので母と病院へいってこようと思います。

血液検査の結果を見て、お医者さんに相談して明日決めようと思っています。

あの時仕事を休んでおけばよかったとか、あの時こうしておけばよかったって言う後悔はしたくないし、

あとどれくらい残されてるのか分からない父との時間に出来るだけ傍にいたいから。

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今、日記を書いている最中に、父の声がして行くと、

『畜生が~川を渡れいいやがる。』 て。

肝性脳症っていうビリルビンの数値が高くなると起こる意識障害も、少しづつおき始めてる。

1日1日がどんどんシビアになっていく。

雨

























今日はどうなるかと思った・・・。



夜になって、寝ていたお父さんの目がぱっと開いて、一点を見つめたまま瞬きもせず。



少しすると今度は目が上につりあがって、顔を叩いたり大声でお父さんを呼んでも反応が無くって・・・。



ビリルビンの数値が高くなってるから、意識障害とかを起こす可能性が高いとはいわれていたけど、



やっぱりそうなのかなぁと実感した。



訪問看護婦さんに連絡を取ったらすぐ見に来てくれた。



訪問看護婦さんが来るまでの間、お父さんの状態が再び悪くなって、



もしかしたら、このまま死んでしまうんじゃないかって本気で思った。



父の意識の薄れていくことがどういうことなのかっていうのを実感した。



看護婦さんが来てくれて、少しして意識がはっきりしてきたみたいで、


今は落ち着いてる。



だけど、深刻な状況には変わりないんだ。



看護婦さんが、モルヒネの量をもう少し増やしてみようかって。



痛みが続いて、苦しい状況が続く場合は、本人を眠らせるって言う方法もあるらしい。



だけど、そうすると体に負担が今以上にかかって、命を縮めてしまうかもしれないって。



今すぐにそういったことが必要かというとそうではないけれど、



そういう選択肢もあるらしい。



お母さんがどう考えてるのかまだ話してないから分からないけど、


眠らせるっていうのはなんだか複雑。



ここ1週間で、腹囲が10㌢くらい大きくなってるらしい。


これは腹水がたまっちゃってお腹が大きくなっているんだけど、



日に日に状態が目に見えて悪くなってる。



お父さんが死ぬっていうことが、だんだんと身近に感じられるようになってきて、



正直、私自身今が現実なのか夢なのかっていう感覚になっている。



明日は看護婦さんがくる日。



明日は一体どんな1日になるんだろう。

ame



父は、今ちょっと投げやりになっている。



どうせ死ぬんなら早く死にたいって。



たんすにベルトを巻きつけて首をつろうとしたり、



物を食べずに餓死しようとしたり、



父は今、苦しんでいる。



だけど、自分で命を絶つことだけは絶対にだめ。



お迎えが来るその日まで、生きなきゃいけない。



苦しい。 しんどい。 つらい。



けど、父へのこれが最期の宿題なんだ。



父のこと、弱いとかかっこ悪いなんて思わないよ。



人間なんて、そんなに強くない。


飯島夏樹さんだって、一時期はうつ病になって、死ぬことばかり考えていたんだもん。



死を受け入れるなんて、そんなに容易なことではないんだ。


私にとっても宿題なんだ。



立ち向かわなくたっていい。



だけど逃げちゃだめ。




父の足のマッサージをした。



努めてしゃべらず、無心にマッサージをした。



こういうとき、言葉はとっても無力だなって思う。





体に触らせてくれるだけでも、まだよくなったかな。



さっき 『ありがとう』 っていってくれた。



また一つ乗り越えたかな。




よし。そろそろ寝ようかな。

んー最近お父さんのお腹が膨らんできたような気がします。



きっと腹水が溜まり始めてるんだろうと思うんだけど・・・。



足も浮腫みはじめてて結構パンパン。



ちょっとかさぶたを掻いちゃうと、ホントちょっとの傷なのに血が止まらない・・・。



最近仕事の具合も私、あまりよくなくて、前の施設長がらみの嫌がらせなどで少々疲れております。



ん~自分を保つのって、こういう時って難しいな。



体に出る蕁麻疹もいつもより多い気がするし・・・。



今が踏ん張り時なのかも。



明日は仕事休みだからゆっくり休息したいな。