「Mon cheri」





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雨中散歩


変わらない日常の中を駆け巡るニュースの中で、間違ったことをした人を吊し上げ、それが自分じゃないことに安心して、それが自分じゃないってだけなのに、さも自分が全うな人間とでも言うかのように、ちっちゃな世界で騒ぎ立てる。

滝のように流れるニュースは、流れては消えて、また流れては消えていって、殺人や虐待なんて言葉は、いつの間にか聞き慣れたものになってしまった。


暗い無惨なトピックスに驚くよりも、「あー、またか」と、恐ろしい感想まで持つようになった自分と、この世の中には、ほとほとうんざりする。

慣れちゃダメなことに慣れるって、いいこともあるけど、嫌なことでもある。







政治家たちは、もっともらしい顔をして未来を語る。

そんな彼らだって、間違ったことをする。

期待した結果の今を嫌うわたしは、それでも懲りずにまた期待する。

少しだけ慎重に。

保険をかけて期待する。

期待の行き着く先にいるのは、報われた自分なのか。

またも砕かれてしまったなら、期待の先を見たときに、僅かばかりでも希望を残せてるのか。

口約束は、守られなくても罪には問われないけど、その嘘が少なからず絶望を与えてることを知っててほしい。




やまない雨はない。

明けない夜もない。

そんな風に言うけど、

それにいつ終わりが来るのか誰も知らない。

だってね、明日もきっと晴れじゃないって。








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悪人の戯言


久しぶりにパンをやいた。

少し萎びてたけど、残ってたくるみがあったから、入れてみたりして。

もし、文句を言われたら嫌だなって思った。 

わたしはくるみが好きだし、栄養だってあるから。

でも、文句だとかそんなひどいこと、誰も一度も言わなかった。

誰も。

一言も。

くるみってフレーズすら、出て来る様子もない。

それはそれで拍子抜け。

なんだか無性に寂しい。

誰かに、一言でもいいからと求めてしまうのは、やっぱりわたしのわがままなのでしょうか。

前に見た、テレビのリポーターさんは、くるみを食べて、驚きと歓喜の声で、その美味しさを惜しげもなく伝えてたんだけどな。

あれは、よっぽどすごいくるみだったんだろうな。

よっぽど、価値のあるくるみだったんだろうな。

もしかしたら、うちにあったくるみだって、本当はそう願ってたのかな。

テレビ画面に映されたあのくるみみたいに、持て囃されながら、人々が歓喜の声をあげるのを待ち望んでたのかな。

ほっとかれたあげく、万全の状態じゃない状況でパンに紛れ込ませられたのは、本意じゃなかったかな。

だとしたら、わたしは悪人だ。

「くるみ入れたんだよ」

存在を知らせるために、わたしは言った。

そして、悪人というレッテルをこっ剥ぐために。

「うん。うまい」

そのひとことで救われた。

わたしも。

そして、きっとくるみも。

そう言ってもらえたことで、本来なりたかったであろう姿に近づけたかな。

くるみが我が家から消えていったこの日も、誰かにとっては、きっと幸せで大事な日だった。


卵を割ったら双子だった。

もしかして、

この卵たちは、双子として、並んで空を羽ばたく未来を夢見てたんだろうか。

大きな声を、朝日に向け響かせたかっただろうか。

この卵を産んだ母鶏は、こどもが消えた今を、どんな思いを抱えながら、どんな風に過ごしているんだろう。

涙してたりするのかな。

だとしたら、わたしはやっぱり悪人だ。

意気揚々と写真におさめた直後、兄弟として生を受けた2つの命を、見る影もなく変わり果てた姿にしてしまった。

そのときは、双子の卵なんて珍しくてラッキーだなんて、呑気に思ってたんだ。

必死に剥がそうとした悪人のレッテルからは、簡単に逃れられない。

生きていくために、人は悪になる。

君が笑ってくれるなら、ぼくは悪にでもなる。

くるみや双子の卵が我が家から消えていったこの日も、わたしが悪人になったこの日も、誰かにとってはきっと大事な日だった。

それでいい。

君が涙のときには、ぼくはポプラの枝になる。








Android携帯からの投稿

非常ベル鳴り響く夜


ソファーのクッションがずれた。

わたしが座ったからずれた。

だらしなく座ったからずれた。

わたしがいなかったらずれなかった。

そう言ったら、彼が困った顔をした。

わたしがそんなこと言ったから、困らせた。

わたしが言わなかったら、困らせなかった。

雲は雨を連れてきた。

昼は夜を連れてきた。

梅雨は空の青を奪った。

昼間の青を奪った。

さっきから、非常ベルが鳴り止まない。

音に従順な住民は、半信半疑に通路で立ち往生。

睡眠時間を不意に奪われ、それと引き換えに不安を与えられた。

分不相応の贈り物。

鳴り続ける非日常な音に、不穏な顔で足を止める通行人。

根源を発見できない住民たちは困惑し、身動きすら取れずにいる。

向かい合う互いの通路を指差しながら、「あっちのマンションからだよね?」なんて、罪の擦り付けあいをしている。

それは願いなのか、はたまた無責任な憶測なのか。

やっと駆けつけたアルソック隊。

ベルは、自分の出す音に追随して気を揉む人々を弄ぶように、止んでは鳴り、鳴っては止みを繰り返していた。

そして、次第に通路から人々は姿を消していった。

わたしたち以外。

窓からこぼれる灯りも、ひとつふたつと消えていった。

一連の騒動の始まりはイタズラか、誤作動だったのだろう。

本当の原因は伝えられなかったけど、伝えないことで、火災ではなかったことを伝えている。

一大事ではないことを物語っている。

本当の原因は伝えられなかったから、今も知ることはできてないけど、こんなことでも一生謎のまま終わる可能性があることは悲しい。

思いの外鳴り止まないベルに苦慮させられたことに気は滅入ったけど、こうやって呑気にこれを書けている今、誤報だったことに感謝すべきなのだろうか。

もし本当だったら、きっと歯の根も合わぬほど震えている。

非常ベルは多くの人を困らせた。

非常ベルが鳴らなかったら、困らなかった。

でも、非常ベルがなかったら、いずれ本当に困るときがくる。

わたしもそうだといいな。

わたしがいなくて困るって思われる日があるといいな。

雨が連れてきた空は星を奪った。

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