レビュー♪STRATOVARIUS / Frigt Night
【ディスクレビュー♪17】STRATOVARIUS / Fright Night (1) Future Shock (2) False Messiah (3) Black Night (4) Witch-Hunt (5) Fire Dance (6) Fright Night (7) Night Screamer (8) Darkness (9) GoodbyeFright NightAmazon(アマゾン)2,497〜5,190円 音楽業界ではニッチなジャンルであるHEAVY METALが市民権を得ている数少ない国~フィンランドのベテランバンドSTRATOVARIUSの1stアルバム。 このアルバムがリリースされた1989年は、HELLOWEENの「Keeper of the Seven Keys Part.2」が日本でブレイクした翌年で、HELLOWEENのフォロワーと呼ばれるバンドが次々に本邦デビューを果たしていた頃である。メロディックパワーメタルというジャンルが生まれるのは、まだ何年も後のこと。「ジャーマンメタル」とは、SCORPIONS、ACCEPT、そしてHELLOWEENらの西ドイツ出身バンドの代名詞だったはずだが、HELLOWEENのブレイク以降は、彼らのスタイルと踏襲する狭義なジャンルとして使われ始めた。そして瞬く間に、「ジャーマンメタル」はバンドの出身地であるドイツを示すものではなく、出身地に関係なくジャーマンメタルに括られてしまうという現象を引き起こした。数年後にデビューするブラジルのANGRA、そしてフィンランドのSTARATOVARIUSなどが「ドイツ出身ではないジャーマンメタル」の中心にいたバンドである。 このアルバムを買ったときの記憶はないが、某誌のレビューでHELLOWEENの亜流のような紹介がなされていて、一か八かの心積もりで手にしたのだろう。キャッチーな(1)の掴みがとてもよいし、ミディアムテンポの曲やインストも適度に散りばめられており、しばらくの間は飽きずに聴いていた。ハズレを数多く引いていた当時としては、結構なアタリ作品だった。 現在の彼らは、北欧産メロディックパワーメタルの象徴とも言えるスタイルを頑なに守る期待を裏切らないバンドのひとつだが、初期の頃は、メロパワと言うよりも初期YGNWIE MALMSTEENのような様式美、ネオクラシカルに近い。クラシカルな速弾きが執拗に繰り返されるわけではなく、入念に練り込まれたであろう楽器隊のアンサンブルは、時にプログレッシブですらある。また、(1)(6)などのシンプルなスピードチューンは、HELLOWEEN型ジャーマンメタルのようなメロディを湛え、「HELLOWEEN meets YNGWIE」などとも形容されていた。(3)(7)も速い曲だが、こちらはHELLOWEEN型とは違って、「Trilogy」以降のYNGWIE型ネオクラシカルの系譜にある。 (2)(8)は荘厳な様式美系の曲で、特に(8)は本作のハイライトとも言える緩急織り交ぜたドラマティックなエピックソングとなっている。(5)は初期YNGWIEのような複雑な展開のクラシカルなインスト。(9)はアルバムのアウトロのような存在のアコースティックなインストの小曲。 デビュー当時のフロントマンはティモトルキ(Vo.兼G.)。4thアルバムから加入する専任ボーカリストのティモコティペルト(通称:小ティモ)の下位互換という感じだが、特段ヘタというわけではなく、それなりに歌っていると思う。ティモトルキの垢抜けないボーカルが楽曲の質を半減させているのは否定できないが、それがまたB級メタルマニアにはたまらなく尊かったりもする。後に加入するティモコティペルトは、初聴では気付かないぐらいティモトルキと声質が似ている。少し上手くなったなぁティモトルキ、と感じたものだった。名立たるハイトーンボーカリストと肩を並べるほどではなく、依然としてB級感が拭い切れていないのがSTRATOVARIUSの魅力である。 なお、ティモトルキが追い出された12th以降のSTORATOVARIUSは、良質なメロパワ路線のアルバムをコンスタントに発表し続けるベテランバンドとなったが、1stアルバム時のメンバーはひとりもいない。正確に言うなら、ティモコティペルトを始めとする解雇されたメンバー達が中心となり、メンヘラってたティモトルキからバンド名を強奪した別のバンドである。 だがしかし、かつてのフロントマンだったティモトルキ自身も、創立メンバーではなかったりもする。 メンバーがごっそり入れ替わっていたり、様式美的要素が失われているにもかかわらず、デビュー当時から現在に至るまで、あくまでSTRATOVARIUS印な楽曲を違和感なく発表し続けている不思議なバンドである。★ティモトルキが追い出されて、新しいバンドとして再出発した12th(2009年リリース)。PolarisAmazon(アマゾン)780〜2,890円★2025年現在の最新作16th(2022年リリース)。サヴァイヴ [通常盤] - ストラトヴァリウス [CD]Amazon(アマゾン)2,089〜5,510円