国内ガールズメタルシーンを牽引してきたNEMOPHILAが、結成5周年を迎え、早くも武道館に辿り着くことになった。あのHELLOWEENが、初来日から武道館にまでに30年以上もかかったというのに、異例のスピードだ。

 ファイナルの武道館こそ3rdアルバムのドロップ後になるが、そこに至る全国ツアーは2ndアルバムを携えて2度目の行脚+新譜リリース前のプロモーションという、もはや大御所なのかどさ回りバンドなのか判別不能な立ち位置になっている。それでも、私のような熱心なフォロワーにとってはありがたいやり方ではあるが。

 

 あれから1年。今の生活スタイルにも慣れてきた。終始一貫、だらだらしている。

 最初の半年間といえば、様々な呪縛から解放されることに費やした。これからのためにしなければならないことを差し置いて、試行錯誤を繰り返したが、これといった成果を得ることができないまま、夏になった。炎天下で肉体を苛め続けることでさえ、良好な睡眠すらもたらすことなく、ただただ疲労は蓄積していった。

 夏の終わりからは、今度は自分との闘いが始まった。突き付けられたイノチの期限。それが有限であることなんて物心ついた頃からわかっていたが、ある日突然誰にでも宣告されるものだという事実を、完全に忘れてしまっていた。こういうのを阿呆というのだろう。

 ただし、過ぎ去ったことに囚われて浪費する日々から私を自由に導いたのは、生と死を真っ向から自問自答する苦痛に満ちた毎日だった。

 もはや住む世界の違う住人の存在などは、まるでYouTuberのようだった。微妙にずれたパラレルワールド。違った世界線が交錯する。近付いてみないとわからないことがあるのと同じように、離れてみないとわからないこともある。

 そして、それはどうでもよいことだった。

 

 

 

 

 ちょうど1年前、NEMOPHILAを観たのはZEPP福岡だったが、今回はキャパの小さいDrumLogosということで、夏に行ったLOVEBITESのように鮨詰め状態になるものと覚悟をしていた。ところが、蓋を開けてみれば、少し余裕のある満員といった程度で、整理番号が良くなかったにもかかわらず、フロアの中央辺りまで行くことができた。ドセンに位置取りすることもできたが、やっぱりちゃっきーがよく見える上手寄りに構えた。すでに2枚のスタジオアルバムをリリースしている上、YouTubeでのカバー曲配信も活発に行っているため、セットリストのバリエーションは格段に豊かになった。精力的なライブ活動も手伝って、過去に二度体験した時よりもさらに良いパフォーマンスだった。
 当初はちゃっきー(Gu)のカリスマ性が際立っていたが、mayu(Vo)がそれに見劣りしない存在感を醸し出し、NEMOPHILAがmayuのために結成されたバンドであるというビジョンが早くも実を結び始めてきた。

 

 

 ただ、それと相まって音楽的方向性はだんだんと微妙に軌道を変えてきた。私のようなクラシックメタラーが避けて通ってきた90年代以降のラウドロック等ニューメタルの系統にあることが明確になってきている。

 バンドの屋台骨をずっと支えてきたむらたたむ(Dr)のタイトなプレイは一段とアグレッシブになり、初期の頃と比べすっかりライブ慣れした感のあるハラグチサンと醸し出すグルーブは、バンドの方向性にはかけがえのないものとなるだろう。NEMOPHILAをメタルたらしめているのは、ちゃっきーはもちろんのこと、むしろ葉月(Gu)なわけだが、この2人にはそろそろ界隈屈指のギタリストとして別の場所での勇姿を拝みたいとさえ思い始めている。

 

 

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 半年前に同じ場所で見たLOVEBITESとの対比は鮮やかだった。もちろん、間もなくリリースされる3rdアルバムは楽しみにしているが、もうメタルバンドとしてNEMOPHILAを観に行くことはないかもしれない。

 このツアーのテーマソングとはいえ、本編で一度プレイした “OSKR” をアンコールのラストにリプレイし、自然に発生しなかったモッシュピットを無理矢理演出するかのようなやり方は、クラシックメタラーには受け入れ難いことだろう。

 メンバーが去った後のステージに残ったバンドの新しいロゴが、皮肉にもMANOWARを想起させているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

(写真の下からはネタバレになるので、セットリストを知りたくない人はここで読了してください)

 


 

 

 

= NEMOPHILA "おしくらまんじゅう押されて笑おうツアー" SETLIST = 
at Drum Logos Fukuoka on January 8th, 2024

1.ZEN
2.鬼灯
3.Rise
4.Rollin' Rollin'
5.Oskr
6.STYLE
7.Night Flight
8.now I here
9.徒花 -ADABANA-
10.Life
11.(Sic)  (SLIPKNOT cover)
12.Change the world
13.DISSENSION
14.FIGHTER
15.Seize the Fate

En
16.REVIVE
17.Oskr

 

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↓2024年1月17日リリースの3rdアルバムがこちら。

 

↓2023年11月8日リリースのカバーEPがこちら。

 

 

↓前回(2023年1月)のライブレポートはこちら。

 

 

↓対照的だったLOVEBITES(2023年8月)のライブレポートはこちら。