ひとつ前のかどはさよならサヨナラ -35ページ目


学ランに血が滲んでいた

息があがる僕は
倒れてる無抵抗な相手に蹴りを入れ続けていた

不意に後ろから襟首を引っ張られ
気付いた時には尻餅をついていた

見上げる様に振り向くと逆光と顔面の痛みでよく見えなかったけど
すぐに
『そいつ』とわかった

もうやめとけよ
終わりだよ

そいつはみんなから慕われる同級生だった

僕は立ち上がると
そいつに顔を近づいて
言った

指図すんじゃねーよ
頭きどりか

そいつは何も言い返さなかった

しらけた、帰る
そう言い、僕は他の仲間の目も無視する様に歩き出した

そいつが後ろから
怒鳴った

お前誰に強さ証明してぇーんだよ

僕は立ち止まり
少し考えてから振り向かないで言った

勝ち負けがわかったら
途中でやめろってか?

返事がないから振り返る
そいつは僕を睨むわけでなく、真っ直ぐ見ていた

僕は続ける

勝たなきゃ
強さなんてわかんねーだろ
勝たなきゃ意味ねーだろ

返事をしないそいつに
苛っとして
もう一度歩き始めようとした

瞬間、そいつが口を開いた

強さなんて
誰かに勝ったってわかんねーよ!
そういうのは勝ち負けじゃねー!
お前、そういう事し続けたら
壊れちまうぞ

言われた僕は
ケンカで出来た傷以外の何かが、すごく痛くて
息苦しかった

やっと何かを飲み込むようにして

じゃあ俺らは今何してんだよ?

それだけ言って
もう振り向かないで
その場から去った

下に続く

添付の音楽【kreva-希望の炎】


友が二代目の韓国家庭料理屋で、僕は食事をしていた
テレビからオリンピックのニュースが流れて来る

キャスターが言う
『世界の国々と地方』
と言い方が妙に耳に残った

その言葉を、僕と同じ様に気にしたか分からない
ただ、在日韓国人の友は

おれが在日なのは
気になる事か?

と、少し哀しげに
でも明るく聞いて来た

いや別に

そこまで言って、僕はテレビを消した
幸い夜遅いこともあって、僕の他に『客』は
日本人の若いカップルが、カウンターで愛を語らってるだけで
テレビを消した事を文句言われる事はなかった

僕は
テレビのリモコンを置いて
カレイのエンガワをチャンジャの味付けて和えた料理を食べながら

これ旨いね
なんて言った

友人は僕をチラッと見た後
ニコッと微笑み
まな板に目を落とした

少し沈黙が流れて
僕が『あれ』作ってくれよ
とびっきりのやつ
なんて注文をした

友は少し止まって、考える仕草をしてから

あぁあれね
って笑顔を見せてくれると

まかせとけ

と言ってくれた

数分後に僕の前にチャプチェと呼ばれる
家庭料理が置かれた
僕はそれを、バクバク食べた

バクバクバクバク

目の前の事よりニュースに日頃揺さぶられる自分ごと食べたくて。。。

それを見てか
お前それ好きだね

なんて笑いながら
横に座っていた友の父が、ビールついでくれた

あぁ、すげー好きだよ
コレ

僕は日本に母国と言う感覚が少ない
なんだか関わりの深い国止まりのような違和感さえ感じる時がある

日本人としての正しい事は存在するのか
なんて、異国の家庭料理を食べながら

世の中には
『正しいこと』
などなくて、あるとしたらそれは
『やりたいこと』
なのかな
そう思った

最近、僕のまわりで
まかせとけ
と、笑いながら言ってくれる男は
なかなか少ない

追記;添付されている音楽は【AI-E.o】です
E.oが曲名です
ご質問を多くいただいたので追記させていただきました


あまりにもバカバカしい話になるけど

僕は、ロールプレイングゲーム、いわゆる冒険をしながら世界征服等を企む魔王を成敗しに行く類いのゲームをやり終えて、泣いた事がある

気心の知れた仲間と酒を入れながらゲームを進めていた事もあるけど
当時僕は、私生活でも思うように結果が出ず、かなりもがいていた

おまけにゲームまで最終局面で行き詰まり
少しイライラしていたと思う
そんな時の出来事で、友達とちょっとそのゲームを進めただけで、今までのドン詰まりが嘘みたいに解決、見事魔王の野望を阻止する事が出来てしまった

涙が出た理由は、ゲームが終了出来た事が嬉しかった訳ではなく、直後に友達が言った台詞

『ヤッパ思った通りで良かったんだよ』

この一言だった
なぜか胸のつっかえが取れた気がした
大泣きではないけど、泣いた分素直になれた気がする
泣いた事で心のスペースが広がり、受け入れ口が広くなれたのかな
なんて思う

キーワードはどこに落ちているのか分からない
分からないからこそ、無理に探す必要がない時もある気がする

元々答えがあるのか分からない、そんな悩みを大切な人が抱えていたら
温かいコーヒーでも持って
名前のない星探しにでもしに一緒に
夜空に出かけたいと思う

きっと後々、魔王を倒し勇者と呼ばれるロールプレイングゲームの仲間達も
夜は、天文学者になった気分で星を眺め、
励まし合いながら不安と闘い冒険していたと
僕は思う


追記:写真は父の日に花屋さんで見つけてぶったまげた
七色の薔薇