フュロップさんの『マーラー・ディスコグラフィ』がどんなに素晴らしいものであり、また、どんなに便利なものであるかということをお伝えするために、マリア・フォシュストロームの歌曲集(MRSACD018)がどのように出てくるかということを書いてみます。
前回の記事に書いたように、まず、第1部の中の交響曲第2番の部分、84ページに、■2.7410という項目で出てくるのですが、ここには、「交響曲第2番第4楽章のマリア・フォシュストロームとヨハネス・ランドグレーンによる歌とオルガンのための編曲」ということがまず書いてあります。
そして、録音が2009年10月12~15日であり、録音場所がイェーテボリのヴァーサ教会であること、そしてMusica RedivivaレーベルからMRSACD018という番号で出ていること、さらにはDDDであり、SACDであること、発売年が2010年であることなどが書いてあります。さらに、同じディスクに「大地の歌」のある楽章と「リュッケルト歌曲集」と「亡き子を偲ぶ歌」の編曲版が収録されていることが、本書独自の略号を使って記されています(順に、L.5510、R.3510、K.5210 ですが、慣れてくると便利なものです)。
それで、次に「大地の歌」の録音が並んでいるところ(p.222-p.236)を見てみると、p.235からp.236にかけて、「別の編曲」(つまり、マーラー自身によるピアノ版、シェーンベルクとリーンによる室内楽版以外の編曲ということですが)というものが並んでいます。その最後に、「オルガン伴奏による」(第6楽章のみ)として出てきます。もちろん、第2番第4楽章のところにあったデータはすべてここにもあります。
次に、「リュッケルト歌曲集」ですが、これはp.288にあります。これも、R.3510という番号を手がかりにするとすぐにわかります(このページを見て私はいささかショックを受けてしまったのですが、「リュッケルト歌曲集」のオルガン伴奏版は、2001年に録音され2002年に出されたディスクが存在していたのでした。このディスクには「亡き子を偲ぶ歌」も収録されているようです)。
p.288の「リュッケルト歌曲集」のところの記載は、「歌曲集全曲の編曲版」という分類の中の「オルガン伴奏による」という表現になっています。第2番や「告別」のところに書かれていた必要なデータは、もちろんすべてここにも書かれていますが、この「リュッケルト歌曲集」の項目にはもう一つ、特筆すべきことがあります。
それは、(3、1、2、4、5)という数字が書いてあることです。これは5曲の歌をどういう順序に歌っているかを表しています。
具体的には、3「僕の歌を……」、1「やさしい香りを……」、2「美しさゆえに……」、4「私はこの世から……」、5「真夜中に」の順に歌われているということです。
このフュロップのディスコグラフィでは、このように歌われている順もすべて記載されています。それでわかるのですが、マリアがMRSACD018で歌った曲順というのは実はかなり稀なもので、オーケストラ版、ピアノ版を通して見ても、他には、ヴィオレッタ・ウルマーナがブーレーズ指揮のヴィーン・フィルで歌ったものがあるだけだということです(これはなかなか興味深い問題です)。
ずいぶんと長くなってしまいましたので、第1部についての説明はここまでにします。
次の第2部(p.353-p.479)は、演奏家別のアルファベット順索引です。指揮者、オーケストラ、合唱団、歌手、ピアニスト、その他から検索することができます。
MRSACD018の場合でいうと、p.389にフォシュストローム,マリア(コントラルト)という項目があって、先の第1部のところで挙げた4つの項目が示されています。
さらに、p.413には、ランドグレーン,ヨハネス(オルガン)という項目があって、マリアのところと同様になっています。
演奏家のほうから検索できるということはとても便利なことで、思いもよらない見逃していた録音に出会うきっかけにもなって楽しいものです。
次の、レーベルの索引になっている第3部(p.481-p.510)は、マーラーのレコードの歴史を調べている人にとってはたいへんに重宝するものです。Musica Redivivaはp.500に出てきます。
最後の第4部(p.511-p.568)の「演奏時間」ですが、これがまた壮観です。
第1部の年代順ディスコグラフィに載っているすべての録音(厳密にはフュロップさんが所有していないごく少数の録音以外)の、楽章ごとの演奏時間とトータルの時間、また、その曲全体とそれぞれの楽章の、最短と最長の録音がどれかということがわかるようになっています。
マリア・フォシュストロームによるマーラー歌曲集の演奏時間は、「原光」がp.516に、「告別」がp.540に、「リュッケルト」がp.552に、「亡き子」がp.562に出てきます。また、それぞれのページにはすべて、この録音が、「マリア・フォシュストロームとヨハネス・ランドグレーンによるオルガンのための編曲である」という説明が書いてあります。
この演奏時間の一覧のところに、第6番の中間楽章の順番や、カットがある場合はその指摘などが書かれています。
さらに紹介したいことや、多少指摘しておきたいことなどもいくつかありますが、それはまた次にします。
付録として付いているケンペン指揮による交響曲第4番の貴重な初めての復刻盤についてもいずれ触れたいと思います。
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