フュロップさんの『マーラー・ディスコグラフィ』がどのように素晴らしいものであるかということを、具体的に紹介したいと思います。
1995年に出された旧盤でも基本的に同じ構成になっていたのですが、全体は次の4部に分かれています。
1.作品別の録音年代順一覧(p.33-p.351)
2.演奏家別の索引(p.353-p.479)
3.レーベル別の索引(p.481-p.510)
4.演奏時間一覧(p.511-p.568)
第1部が最も重要な部分であるわけですが、この中も、まず、その曲のオリジナルな全曲の録音、全曲の編曲版の録音、特定楽章のみの録音、編曲された版による録音などに分けられています。
例えば、交響曲第2番の場合には全体としては238の録音が挙げられているのですが、次のようになっています。
159の全曲の録音。これは、言うまでもなく、オスカー・フリートによる録音から始まっているわけですが、演奏者、録音日時、場所などはもちろんのこと、SPの番号、1973年にワルター協会によって初めてLP復刻されたこと、その後、OpalからLPが出されたこと、また、CD復刻の主要なものについての情報などが記されています。
普通の形での第2番の録音が159並んだ次に、ヘルマン・ベーンによる2台のピアノ版の録音。
そして、その後は、楽章ごとの録音になりますが、この第2番の場合は、「第1楽章のみ」という項目の次に、「『葬礼』(第1楽章の1888年版)」という項目が並ぶことになります。さらに、「冒頭のチェロ・パートのみ」という項目があって、次に「第2楽章のみ」という項目に進みます。ここには、「ウリ・ケインによるジャズ・アンサンブルのための編曲」(2種ありますが、どちらもとても面白いものです)も挙げられています。
と、この調子で書いていくときりがありませんので、「第4楽章のみ」というところを見てみましょう。
p.80からp.84にかけて、オリジナル版が18種(この中には、モーリン・フォレスターが歌い、グールドが指揮をした映像についての情報も含まれています)、ピアノ伴奏版が19種挙げられたあとに、その他の形での編曲版の録音が10種ずらりと挙げられています。
その、84ページに「マリア・フォシュストロームとヨハネス・ランドグレーンによる歌とオルガンのための編曲」という項目が、このディスコグラフィの中での固有の番号として、2.7410という番号を与えられて挙げられています。
この84ページの2.7410という番号を与えられたマリアのアルバムがどのように本書の中で扱われているのかを説明すると、本書の特長を理解していただきやすいと思いますので、次にそれを試みてみましょう。
(つづく)

マリアのCDはHMV
(リンク)で取り扱っています。