「勇者セイジよ、余の部下となれ!さすれば世界の半分を与えよう!」
「はい、喜んで!」
****
俺、火依深 聖児(ひよりみ せいじ)。
ファンタジーなこの世界では「勇者セイジ」と呼ばれているが、俺は生まれ育った現実世界に戻りたいんだ!
きっとこの「世界の半分を貰う」という本来あり得ない選択こそが、テレビ画面に吸い込まれた俺に取っての「真のクリア」に違いないんだ…。
****
~滅びの村シオン~
「シオンに到着致しましたセイジ殿。
…本当にあたし達…じゃない、拙者とセイジ殿が生まれ…。」
「おい、オメガ。サラ達の到着は明日以降だ。
ここでは気にすんな。」
「な~んだ安心したぁ。
そうだよね、やっぱり二人の故郷には『二人きり』だ…よね?
うん…セイジの気持ち…嬉しいよ…。
まさかこんな形での凱旋になるなんて思ってもなかったけど…でも、私、セイジを信じてるから!」
「オメガ…。お前は本当にいいのか?」
「同じこと言わせないで。
あたしはずっ~とセイジの傍でセイジの盾となり、剣になるって決めたんだもん!
たとえ魔王の手下でも…。
それに嬉しかった!
『世界の半分』の中で真っ先に『私達の』シオンを選んでくれてさ。
一緒に村を復興させよう…ね。
その為なら悪魔に魂を売ってでも!でしょ?セイジの考えてることなんて、このオメガちゃんはお見通しなんだからね~。
じゃぁ、あたし村の人達と話してくるから後でね~!」
****
そう、ここは勇者セイジと女騎士・オメガ=カタストロフィが生まれた漁村だ。
10年前に村は魔王軍に焼かれ、7歳の俺は行方不明になった。1歳お姉さんのオメガは無力感を感じ祖国の騎士団に入った。
俺は死んだか魔王軍に連れ去られたかと思われていたが、謎の老師に助けだされ、剣と魔法を習い旅立ちの日を迎えた。
そして騎士となったオメガと再会し、共に冒険の旅をする最初の仲間に…って、俺の故郷じゃねえし、幼なじみでもねえし!そういうゲームシナリオってだけじゃないか!
いや、オメガは凄く可愛いんだよ。あくまで騎士として振る舞い、「拙者」なんて言うけど、俺と武器屋や宿屋で二人きりの時には「あたし」に口調が戻る所が特に…。
****
「セイジ様、大魔王様から念話が入っております。」
「代われ。」
「やぁ、『欲のない男セイジ』よ、ますます気に入ったぞ。正式にうぬは魔王軍信託統治領シオン全権委任大使だ」
続
「よくぞこの謁見の間までたどり着いたものだ、勇者セイジとその仲間達よ!
うぬ等のこれまでの戦いは千の賛辞に値する。」
「そりゃどーも。
俺達6人と2匹は、お前を倒す為に今日まで頑張ってきたんだ。
さっさと終わらせよーぜ。」
「フフフ、勇者セイジよ、そう事を急くでない。
余はうぬを高く評価しておる。
どうだ、ここは余と取り引きをせぬか?」
「この期に及んで戯言を!セイジ様、耳を貸す必要などございません!」
「いいや、待てサラ。聞いてみる価値はある。
話してみな、魔王よ。」
「よく言った…。
勇者セイジよ!余の部下となれ!さすれば世界の半分をお前に与えよう!」
「おのれ世迷い言を…。
セイジ殿に人間を売れと言うのか?魔王め、今ここで拙者の剣のサビに…。」
「やめろ、オメガ。
話の途中だ。」
「ほう…話が解るではないか、勇者セイジよ。ではうぬは…。」
「はい、大魔王様。私めに世界の半分を頂けるなら喜んで…。」
『そんな!!セイジ様、お気は確かですか…?』
****
これで5回目のループだっけかな…?
ありとあらゆる『分岐点』を考えてみたが…もう思い当たる節はここくらいしかない。
****
俺、火依深 聖児(ひよりみ せいじ)
こっちの世界では17歳の勇者セイジってことになってるけど、ゲームの画面に吸い込まれる前は、29歳の一般会社員だったんだぜ。
「異世界転生」なんて漫画の世界だと思ってたけど、まさか自分がそうなるなんて…。
俺はもう何度も魔王をこの仲間達と倒した。
だが何回やっても俺の住む現実世界に戻れなかった。
最初はただのクリア。
二回目はレベル99まで上げた。
三回目はアイテムのコンプリート…。
もうやれることはやり尽くしたと思った。
それで俺は考えた。
「世界の半分を貰った場合はどうなるんだうろう?」
と…。
殆どの場合は邪(よこしま)な選択をしたからという理由で、能力が著しく下がるハンデ戦になるというのがお決まりだが…。
****
「そうか、勇者セイジよ。
では具体的にどう折半するかね?
うぬの希望を聞こうではないか?」
『え…?』
『…。』
『…。』
「どうした、勇者セイジよ。
そうだ、うぬの故郷のシオンの村を中心に半分とするか?いや焼け野はらとなったから統治したくはないか?」
おいおい、RPGからシミュレーションゲームに急ハンドルかよ…。
うぬ等のこれまでの戦いは千の賛辞に値する。」
「そりゃどーも。
俺達6人と2匹は、お前を倒す為に今日まで頑張ってきたんだ。
さっさと終わらせよーぜ。」
「フフフ、勇者セイジよ、そう事を急くでない。
余はうぬを高く評価しておる。
どうだ、ここは余と取り引きをせぬか?」
「この期に及んで戯言を!セイジ様、耳を貸す必要などございません!」
「いいや、待てサラ。聞いてみる価値はある。
話してみな、魔王よ。」
「よく言った…。
勇者セイジよ!余の部下となれ!さすれば世界の半分をお前に与えよう!」
「おのれ世迷い言を…。
セイジ殿に人間を売れと言うのか?魔王め、今ここで拙者の剣のサビに…。」
「やめろ、オメガ。
話の途中だ。」
「ほう…話が解るではないか、勇者セイジよ。ではうぬは…。」
「はい、大魔王様。私めに世界の半分を頂けるなら喜んで…。」
『そんな!!セイジ様、お気は確かですか…?』
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これで5回目のループだっけかな…?
ありとあらゆる『分岐点』を考えてみたが…もう思い当たる節はここくらいしかない。
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俺、火依深 聖児(ひよりみ せいじ)
こっちの世界では17歳の勇者セイジってことになってるけど、ゲームの画面に吸い込まれる前は、29歳の一般会社員だったんだぜ。
「異世界転生」なんて漫画の世界だと思ってたけど、まさか自分がそうなるなんて…。
俺はもう何度も魔王をこの仲間達と倒した。
だが何回やっても俺の住む現実世界に戻れなかった。
最初はただのクリア。
二回目はレベル99まで上げた。
三回目はアイテムのコンプリート…。
もうやれることはやり尽くしたと思った。
それで俺は考えた。
「世界の半分を貰った場合はどうなるんだうろう?」
と…。
殆どの場合は邪(よこしま)な選択をしたからという理由で、能力が著しく下がるハンデ戦になるというのがお決まりだが…。
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「そうか、勇者セイジよ。
では具体的にどう折半するかね?
うぬの希望を聞こうではないか?」
『え…?』
『…。』
『…。』
「どうした、勇者セイジよ。
そうだ、うぬの故郷のシオンの村を中心に半分とするか?いや焼け野はらとなったから統治したくはないか?」
おいおい、RPGからシミュレーションゲームに急ハンドルかよ…。
聖ヨハネ総合病院は、出向中の天使や、天界に認められた聖人達が直接運営する「天立病院」です。
妖怪、妖精、天使、悪魔の患者様も安心してご来院くださいませ。
天上界からの重要なお知らせ
「慈悲課」と「守護課」の合同研究班は、今回のウイルスが
「人間に変身中の妖怪、妖精、天使、悪魔にも感染する」との見解で一致しました。
また、本人に症状がなくとも、「人間に変身した者同士では感染する」という可能性が極めて高い、ということをお知らせします。
「自分のコミュニティ(巣)で変身を解けば大丈夫」という考えは危険です。
完全に感染していない目安としては、14日間連続で変身を解き、人間は勿論、自身と同族を含めた異民全ての接触を断ち、無症状だった時に「感染していない」と言えるかと思います。
聖ヨハネ総合病院では、あらゆる異民の検査を分け隔てなく実施しています。
少しでも感染の可能性に心当たりがある方は病院に来てください。
なお、人間界の滞在資格を持たないいわゆる「不法異民」の方達への検査も実施しています。
今回の件で、異民局が摘発の対象としたり、コミュニティへの強制送還に踏み切ることはありません。
****
不死族の皆様へ。
ごく一部の不死族の方が「俺達は死なないから。どうせ死んでるから」と、人間に化けた骸骨族やゾンビ族が経営するバーやパブでクラスターが発生しています。
人間に変身中は、不死族の方も「保菌者」となり、貴方を媒介として感染を広げる可能性があります。
また、不死族の貴方でも、人間に変身中に重症化すれば死に至ります。変身を解く魔力も無くなり、不死ではなくなります。
また、感染を知りながら店を経営したことが判明した場合は、「対魔課」の強制執行対象となり、二度と人間界に赴くことは不可能となるでしょう。
そして健全かつ健康な不死族に対する差別も絶対にやめましょう。
最後に重要なお知らせ。
聖ヨハネ総合病院では「人間と契約した悪魔」のみ来院はお断り致します。
契約した悪魔は契約主の名前を絶対に言わない為に、経路の追跡が困難になるからです。院内を危険にさらさないための判断です。
このホームページをご覧の妖怪、妖精、天使、(単独で変身した)悪魔の方、または人間の方。
契約した悪魔は写真に写りません。
変身した妖怪、妖精、悪魔には指紋がありません。天使は夜に光ります。独りで悩んでるのを見かけたら優しい声かけを。了
妖怪、妖精、天使、悪魔の患者様も安心してご来院くださいませ。
天上界からの重要なお知らせ
「慈悲課」と「守護課」の合同研究班は、今回のウイルスが
「人間に変身中の妖怪、妖精、天使、悪魔にも感染する」との見解で一致しました。
また、本人に症状がなくとも、「人間に変身した者同士では感染する」という可能性が極めて高い、ということをお知らせします。
「自分のコミュニティ(巣)で変身を解けば大丈夫」という考えは危険です。
完全に感染していない目安としては、14日間連続で変身を解き、人間は勿論、自身と同族を含めた異民全ての接触を断ち、無症状だった時に「感染していない」と言えるかと思います。
聖ヨハネ総合病院では、あらゆる異民の検査を分け隔てなく実施しています。
少しでも感染の可能性に心当たりがある方は病院に来てください。
なお、人間界の滞在資格を持たないいわゆる「不法異民」の方達への検査も実施しています。
今回の件で、異民局が摘発の対象としたり、コミュニティへの強制送還に踏み切ることはありません。
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不死族の皆様へ。
ごく一部の不死族の方が「俺達は死なないから。どうせ死んでるから」と、人間に化けた骸骨族やゾンビ族が経営するバーやパブでクラスターが発生しています。
人間に変身中は、不死族の方も「保菌者」となり、貴方を媒介として感染を広げる可能性があります。
また、不死族の貴方でも、人間に変身中に重症化すれば死に至ります。変身を解く魔力も無くなり、不死ではなくなります。
また、感染を知りながら店を経営したことが判明した場合は、「対魔課」の強制執行対象となり、二度と人間界に赴くことは不可能となるでしょう。
そして健全かつ健康な不死族に対する差別も絶対にやめましょう。
最後に重要なお知らせ。
聖ヨハネ総合病院では「人間と契約した悪魔」のみ来院はお断り致します。
契約した悪魔は契約主の名前を絶対に言わない為に、経路の追跡が困難になるからです。院内を危険にさらさないための判断です。
このホームページをご覧の妖怪、妖精、天使、(単独で変身した)悪魔の方、または人間の方。
契約した悪魔は写真に写りません。
変身した妖怪、妖精、悪魔には指紋がありません。天使は夜に光ります。独りで悩んでるのを見かけたら優しい声かけを。了