「よくぞこの謁見の間までたどり着いたものだ、勇者セイジとその仲間達よ!
うぬ等のこれまでの戦いは千の賛辞に値する。」
「そりゃどーも。
俺達6人と2匹は、お前を倒す為に今日まで頑張ってきたんだ。
さっさと終わらせよーぜ。」
「フフフ、勇者セイジよ、そう事を急くでない。
余はうぬを高く評価しておる。
どうだ、ここは余と取り引きをせぬか?」
「この期に及んで戯言を!セイジ様、耳を貸す必要などございません!」
「いいや、待てサラ。聞いてみる価値はある。
話してみな、魔王よ。」
「よく言った…。
勇者セイジよ!余の部下となれ!さすれば世界の半分をお前に与えよう!」
「おのれ世迷い言を…。
セイジ殿に人間を売れと言うのか?魔王め、今ここで拙者の剣のサビに…。」
「やめろ、オメガ。
話の途中だ。」
「ほう…話が解るではないか、勇者セイジよ。ではうぬは…。」
「はい、大魔王様。私めに世界の半分を頂けるなら喜んで…。」
『そんな!!セイジ様、お気は確かですか…?』
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これで5回目のループだっけかな…?
ありとあらゆる『分岐点』を考えてみたが…もう思い当たる節はここくらいしかない。
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俺、火依深 聖児(ひよりみ せいじ)
こっちの世界では17歳の勇者セイジってことになってるけど、ゲームの画面に吸い込まれる前は、29歳の一般会社員だったんだぜ。
「異世界転生」なんて漫画の世界だと思ってたけど、まさか自分がそうなるなんて…。
俺はもう何度も魔王をこの仲間達と倒した。
だが何回やっても俺の住む現実世界に戻れなかった。
最初はただのクリア。
二回目はレベル99まで上げた。
三回目はアイテムのコンプリート…。
もうやれることはやり尽くしたと思った。
それで俺は考えた。
「世界の半分を貰った場合はどうなるんだうろう?」
と…。
殆どの場合は邪(よこしま)な選択をしたからという理由で、能力が著しく下がるハンデ戦になるというのがお決まりだが…。
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「そうか、勇者セイジよ。
では具体的にどう折半するかね?
うぬの希望を聞こうではないか?」
『え…?』
『…。』
『…。』
「どうした、勇者セイジよ。
そうだ、うぬの故郷のシオンの村を中心に半分とするか?いや焼け野はらとなったから統治したくはないか?」
おいおい、RPGからシミュレーションゲームに急ハンドルかよ…。