創作小説「勇者のセイジ」第2話 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「勇者セイジよ、余の部下となれ!さすれば世界の半分を与えよう!」

「はい、喜んで!」
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俺、火依深 聖児(ひよりみ せいじ)。

ファンタジーなこの世界では「勇者セイジ」と呼ばれているが、俺は生まれ育った現実世界に戻りたいんだ!

きっとこの「世界の半分を貰う」という本来あり得ない選択こそが、テレビ画面に吸い込まれた俺に取っての「真のクリア」に違いないんだ…。
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~滅びの村シオン~

「シオンに到着致しましたセイジ殿。
…本当にあたし達…じゃない、拙者とセイジ殿が生まれ…。」

「おい、オメガ。サラ達の到着は明日以降だ。
ここでは気にすんな。」

「な~んだ安心したぁ。
そうだよね、やっぱり二人の故郷には『二人きり』だ…よね?
うん…セイジの気持ち…嬉しいよ…。
まさかこんな形での凱旋になるなんて思ってもなかったけど…でも、私、セイジを信じてるから!」

「オメガ…。お前は本当にいいのか?」

「同じこと言わせないで。
あたしはずっ~とセイジの傍でセイジの盾となり、剣になるって決めたんだもん!
たとえ魔王の手下でも…。
それに嬉しかった!

『世界の半分』の中で真っ先に『私達の』シオンを選んでくれてさ。
一緒に村を復興させよう…ね。
その為なら悪魔に魂を売ってでも!でしょ?セイジの考えてることなんて、このオメガちゃんはお見通しなんだからね~。
じゃぁ、あたし村の人達と話してくるから後でね~!」
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そう、ここは勇者セイジと女騎士・オメガ=カタストロフィが生まれた漁村だ。
10年前に村は魔王軍に焼かれ、7歳の俺は行方不明になった。1歳お姉さんのオメガは無力感を感じ祖国の騎士団に入った。
俺は死んだか魔王軍に連れ去られたかと思われていたが、謎の老師に助けだされ、剣と魔法を習い旅立ちの日を迎えた。
そして騎士となったオメガと再会し、共に冒険の旅をする最初の仲間に…って、俺の故郷じゃねえし、幼なじみでもねえし!そういうゲームシナリオってだけじゃないか!

いや、オメガは凄く可愛いんだよ。あくまで騎士として振る舞い、「拙者」なんて言うけど、俺と武器屋や宿屋で二人きりの時には「あたし」に口調が戻る所が特に…。
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「セイジ様、大魔王様から念話が入っております。」

「代われ。」

「やぁ、『欲のない男セイジ』よ、ますます気に入ったぞ。正式にうぬは魔王軍信託統治領シオン全権委任大使だ」