昔に購入した作品で本棚につんどくになってしまった作品というのは誰にとっても気になる現象だろう。どういう切っ掛けでそれに再び目が向くのか。今回は直接にはコロナ騒動だった。外出が限定され、かつ新刊の購入も抑えている中で、外を見れば、米中冷戦という状況の中で、今年の初めにふと目に留まったのが、1990年前後(冷戦終了直後)に購入したいくつかの作品だった。すでにその経緯は、このブログにも書きとめ来たのだが、振り返って見ると、その発端は、Philip Rothの「The Plot against America」とrobert skidelskyの「Oswald Mosley」だった。

 

次に進んだのが、同じくskidelskyの「keynes」、そしてその延長線上に出てきたのが、david irving (DI)の「Churchill's war」だった。これは相当な中身の作品で、圧倒された。そのまま、チャーチル関連の作品に進む気力がなくなってしまった。とはいえ、ドイツ関連の一連の手持ちのdavid irving (DI)の作品を読んだ後には、1993年出版のjohn charmley (JC)のこの作品に向かわざるを得なかった。

 

ただ全体で650ページの大著。購入時(1993年12月24日)に200ページほど読んで中断していたようだ。字は小さい。そして著者の叙述のスタイルはDI以上に読みにくい。パラグラフや文が概して長いのだ。英語は凝った表現が多い。今の時代、こんな英文で書くことは許容されているのだろうかという疑問さえ起きてくる。

 

DIの作品は、タイトルが、「churchill's war」となっているように、その焦点は戦争だ。ところがJCの作品は戦争というよりは、そのサブタイトル(Political biography)が示唆するようにチャーチルの政治的な軌跡を扱っているためその対象範囲は広くかつ長くなる。驚くべきことにチャーチルの戦争や個別作戦への介入やenigma(暗号解読)への言及はあまりないと言っていいだろう。逆に登場人物は多岐にわたり、読み進めるには、20世紀初頭からの英国政治全般についての基礎知識が必要となるのだ。となると、ネットの検索で、いちいち周辺の人物や事件などを検索しながらの読書となり、必然的に読むスピードは遅くなる。というわけで、三か月もかけての読書となってしまった。

 

中身はというと重要なテーマが盛りだくさんだ。何回かに分けて、書きとめてみたい。

 

ところでネットで見ていたら、最近日本語でもチャーチル本が出ているのだ。タイトルは刺激的だ。これもおそらく英米での種本をもとにしての作品なのだろうけど、DIやJCの作品は共に1990年前後の作品だ。その後、新しい資料に基づく研究成果が出されているのだろうか。ただこの作品値段が高いな。