数年前に出た「Strange death of Europe」と中身は同じような気がしたが、現在英国でベストセラーになっているというので読んでみた。どういうわけか、読み終えたところで、英国で地方選挙が行われ、労働党の惨敗とReform UKの躍進が報道されていた。むべなるかなという思い。

 

中身はというと、副題にあるように、Immigration, IslamとIdentity politicsによりズタズタにされてしまった英国の政治、社会、文化の現状が数字をベースに語られている。もはや、僕の知っている英国はないのだなという実感を新たにする。1987年から一年ほど住んでいた英国、その後も2000年台半ばに何度か出張で訪れたが、2000年以降の英国の変貌はすさまじいようだ。特に、2010年代以降の保守党政権で移民の導入が加速化されており、人口動態上ももはやロンドンや大都市は英国(londonistan!)とは言えないようだ。将来の見通しも暗い。cockneyというあの悪名高いロンドンの訛りも消えているというのだ。

 

ここでもその経緯は同じだ。移民の導入が選挙上の争点となされることなく、有権者が納得しないまま、いつの間にかおぞましい現状が既成事実の積み重ねで出来上がっている。いくつかのキーワードが強烈だ。Suicidal empathy(偽善!), luxury belief class (世田谷自然左翼の英国版か?)、censorship industrial complex(報道しない自由!)、 deliveroo economy(コンヴィニでの外国人従業員!), parallel legal/cultural systemなどの言葉を見てほしい、どれもが現在の英国の現状を的確にとらえている。

 

若干の文化的な小道具の違いはあるが、恐ろしいことは、このどれもが日本でも見受けられる現状だ。日本と同じく、外国人移民は選挙の争点とされることもなく、いつの間にか、identityとmulti-culturalism、diversityのきれいごとの裏で、minorityがmajorityを押しのけるという、おぞましい現状が出来上がっていくのだ。読んでいてページをめくるのがつらくなった。

 

移民の奇妙な定義を操ることにより、日本には移民問題をないと強弁し、一部の利益団体のロビイングに屈した既成政党、そして生じる問題はすべて末端の自治体に押し付け、組織内での昇進のためにpiecemealなポイントづくりに熱を上げる官僚組織、メディアの自己検閲、この作品で描かれた世界は遠い世界の出来事ではなく、日本の近未来でもない。今の日本の現実や。