むかし、むかし、大学生の時、夏休みに、岩波文庫から出ているトゥーキュディデースの「戦史」を読んだことがある。紀元前のギリシアの歴史なども知らずに読んだせいだろうか、スパルタとアテネが戦い、アテネが没落したというメッセージが頭の隅に残っているだけだ。そもそも、この「戦史」、その名が語られることのみ多く、最後まで読みとおした人はほとんどいないと思う。その後ずっともう一度何らかの形で、この作品に触れなければと思いながら、長い時間が過ぎてしまった。どういうわけか、今回、解説本という形だが、もう一度触れてみた。
ただ、この作品、厄介な作品だった。本書での議論はそれほどクリアカットではなく、むしろ条件付の難しい議論が展開されている。Penguin Bookという一般向けの媒体で、こんな込み入った議論を展開して読者が理解できるのか。
驚いたことに、本書では、トゥーキュディデースは、ペロポネソス戦争終結後のギリシアの時代思潮に対立する歴史解釈を提示した「修正主義者」として扱われているのだ。ここでは、トゥーキュディデースは、同時代の公平な観察者というよりは、むしろ自分の政治的な主張を弁護する形で、歴史の操作(資料や演説の取捨選択)と修正をしている。この評価は驚き。だから、Re-invention of History (「歴史の再発明」)というサブタイトルなのか。
ただ一方で、「修正主義」の議論ということになると、2500年前のアテネのシシリア侵攻やペリクレス等の重要な論点についての詳細な議論が必要となるのだが、本書のスペースではそれは不可能。結果として、わかりにくい作品になってしまうのはしょうがないか。


