えーと、5月中に書いちゃうつもりだったんですが
なかなか進まず、
でも、個人的にはある意味
今回のが一番印象深かったので、やっぱり書いておこう、と。
そんなわけで、↑の記事の続き。
去年のGWに福井県に旅行に行ったときのお話です。
永平寺とか恐竜博物館とか東尋坊とか
ポピュラーな観光地がメインの家族旅行でしたが
福井に行くなら、どうしても行きたかった
若狭彦・若狭姫神社と明通寺・羽賀寺。
どれも、東北とのかかわりを感じさせるものがあり
調べていてとても面白かったです。
で、今回の闇見(くらみ)神社。
東北とのつながりはほとんど感じられない…。
でも、若狭というキーワードを頼りに
福井県内のことを調べていて偶然たどりつき
すごく個人的な理由(しかもオタクな)で
「うおおおおおおお!!」となりました。
その原因がコレ↓
コバルト文庫から出てた氷室冴子さんの少女小説
今で言うならライトノベル、でしょうか。
『銀の海 金の大地』です。
氷室冴子さんといえば『なんて素敵にジャパネスク』
というと知ってる人も多いかもしれません。
漫画やドラマにもなってましたし。
それで、この「銀の海金の大地」、ざっくりしたあらすじが
大和王権が成立して間もない時代。
淡海の国(おうみのくに)に育つ奴婢の娘・真秀は、
邑人たちから「ヨソ者」と疎外されながらも母と兄を助けて暮らしていた。
やがて彼女は、その身に流れる巫王の一族・佐保の血のために、
時代の動乱の中に捲きこまれていく。
と、なっています。
佐保(サホ)…
古事記にも出てくる佐保彦・佐保姫が
この物語に出てくるんですが
(※古事記では沙本毘古・沙本毘売、日本書紀では狹穗彦・狹穗姫)
その二人の母親が
沙本之大闇見戸売(さほのおおくらみとめ)
で、今回の闇見神社のご祭神なんです。
こじんまりした神社です。
国宝のある明通寺や
若狭国一宮である若狭彦神社と比べると
観光地としてもかなり地味かと思います。
場所も、他の4つは小浜市で、
こちらの神社は若狭町。(隣の町だけど)
旅行最終日ギリギリまで
行けるかどうか微妙でした…(^-^;
それまで、興味のない神社仏閣に家族を付き合わせてたので
これ以上要求するのは難しいかな…と。
でも、帰り道の途中にちょっと寄り道するだけだし
この先いつ福井に来られるか…と思うと、やっぱり行きたいし。
ということで、車に乗って小浜を出発してから
「実はちょっと寄りたいところあるんだけど…」
と言って、なんとかたどり着けました(笑)
GWだけど、誰もいなかった。
すごく古そうな、牛。
どんな由緒があるのか、わからなかったけど
多分、オオクラミトメの他に
天神さん(菅原道真)も祭られてるので
その関係かと思います。
菅原氏の梅の紋が付いてたし。
天神さんのほかにも
たくさんの神様が合祀されています。
建御名方命 八坂刀賣神 火軻遇突智神
表筒男命 中筒男命 底筒男命
大山咋神 別雷神 玉依姫 加茂健角見命
國懸神 日前神 應神天皇 神功皇后
明治になってから、付近にあった
諏訪神社
愛宕神社
住吉神社
日吉神社
加茂神社
熊野神社
を合祀することになったようです。
話戻って、闇見神社のご祭神
沙本之大闇見戸売(さほのおおくらみとめ)。
この、「オオクラミトメ」の「トメ」というのは
身分の高い女性の称号だそうです。
トメとかトベという称号があって、
大和王権が成立する前、
日本各地に存在していた女性首長を表していた、と。
お世話になってるinehapoさんのブログで
名草戸畔(ナグサトベ)を知って
あー、オオクラミトメも、「トメ」だから同じなんだろなー。
確かに、小説の中でも女性首長だったしなー。
と、思っていたのでした。
そのオオクラミトメを祭った神社が福井にある、と。
そこで、
「なんで福井?」
となったわけです。
沙本之大闇見戸売の「沙本之」は
「佐保の」、つまり佐保一帯を治めていたと思われる名前。
そして、「佐保」は大和盆地(今でいう奈良盆地)にあった。
このオオクラミトメのお母さんが
春日建国勝戸売(かすがのたけくにかつとめ)という人で
「春日」も奈良なので、やはりその辺りのはずです。
ウィキペディアにも↓
沙本之大闇見戸売(さほのおおくらみとめ)は、記紀に登場する女性。
日子坐王(=開化天皇皇子)の妃。
子に沙本毘古王(狹穗彦)・袁耶本王・室毘古(むろびこ)王・沙本毘売命(狹穗姫)(=垂仁天皇皇后)がいる。
母は春日建国勝戸売(かすがのたけくにかつとめ)と呼ばれており、この一族は春日野から佐保一帯の大和盆地北部と深い関係をもつ豪族だったと考えられている。
「春日野から佐保一帯の大和盆地北部と深い関係をもつ豪族」って
つまり、大和盆地北部を治めていた母系の大豪族、
ってことだと思います。
その女性首長であった春日建国勝戸売の娘、
沙本之大闇見戸売が、
開化天皇の皇子である日子坐王(ヒコイマスノミコ)に嫁して
佐保彦・佐保姫を産む。
後に佐保彦は垂仁天皇に対して謀反を起こす。
妹の佐保姫は垂仁天皇の奥さんになっていたので、
兄と夫の板挟みで悩んだ末
垂仁天皇の子どもを産んで逃がしたあと
自分は兄と焼死した…。
佐保姫が産んだ垂仁天皇の子どもは
誉津別命(ほむつわけのみこと)で、
佐保彦と佐保姫が立てこもっていた
「稲城の焼かれる火中で生まれた」とされている。
というのが、古事記にも出てくる
佐保彦と佐保姫のお話です。
おそらく「春日野から佐保一帯の大和盆地北部」をめぐって
大和朝廷と、オオクラミトメの母系一族との間で
色々あったんだろうな~と思われます。
「春日野」といえば、
後に藤原氏が春日大社を建てた場所。
春日野…三笠山は、古代から重要な場所だったんでしょうか。
春日大社(Wikipediaより)
奈良・平城京に遷都された和銅3年(西暦710年)、藤原不比等が藤原氏の氏神である鹿島神(武甕槌命)を春日の御蓋山(みかさやま)に遷して祀り、春日神と称したのに始まるとする説もあるが、社伝では、神護景雲2年(西暦768年)に藤原永手が鹿島の武甕槌命、香取の経津主命と、枚岡神社に祀られていた天児屋根命・比売神を併せ、御蓋山の麓の四殿の社殿を造営したのをもって創祀としている。ただし、近年の境内の発掘調査により、神護景雲以前よりこの地で祭祀が行われていた可能性も出てきている。
神護景雲というのは元号だそうですが
春日大社以前から、
「この地で祭祀が行われていた可能性も出てきている」
というのは、まさに
春日建国勝戸売~沙本之大闇見戸売の母系一族が、
この地で祭祀を行っていた…ということではないでしょうか。
そして、本来なら、佐保姫がその跡を継ぐはずだった。
でも、垂仁天皇に嫁いだので、
兄の佐保彦が佐保を治めることになったのでしょうか。
これまたinehapoさんのブログで知った本
トベ達の悲歌で、
「第六章 初期大和王権と縁組みする「トベ」達(トベB群)」
1 春日の建国勝戸賣と沙本之大闇見戸賣
―大和北部先住豪族と、孫娘・沙本毘賣皇后の悲劇(垂仁朝)
というのを見つけました。
(ネットでindex見ただけ読んでないんですが(^-^;)
母系一族の女性首長たちは
ナグサトベのように最後まで
朝廷側に抵抗して滅ぼされた者もいれば、
婚姻によって大和政権と融合する道を選んだ一族もいた、ということです。
オオクラミトメは縁組によって融合する道を選んだようですが
子どもである佐保姫・佐保彦の悲劇からいって
すんなりいったわけではない…ようです。
で、なんでその沙本之大闇見戸売(さほのおおくらみとめ)が
春日野や佐保の辺りでなく、福井の若狭で祭られているのか。
その理由は、佐保彦・佐保姫の他にも子どもがいて
その一人が室毘古王(むろびこのみこ)というのですが
彼が治めていたのが、若狭だったということなんですね。
さらに、神社の近くの集落に「倉見庄」というのがあるらしく
倉見庄に住んでたから「闇見(くらみ)」になった…とされてるそうです。
うーん。
奈良の佐保一帯を治めてるはずの女性首長が
福井の倉見庄に住んでて
「沙本之大闇見戸売」…?。
佐保彦・佐保姫の事件があってから
福井の息子のところに身を寄せることになった…ということでしょうか。
あるいは、佐保彦存命中に引退させられて
もう一人の息子とともに若狭へ、ということも考えられます。
さらに飛躍すると、奈良盆地北部から若狭の辺りまで勢力圏にあったとか?
なんとなく、大和朝廷は
どうしても春日野~佐保一帯を手に入れたかったんだろうな、と思われます。
特に、春日大社がある、三笠山。
これが気になってました。
というのも、若狭国には
土蜘蛛(大和政権に逆らう勢力)である
陸耳御笠(くがみみのみかさ)と、
おそらく女性シャーマン(首長?)である匹女(ヒキメ)
という女性がいた。
これが、オオクラミトメの夫であるヒコイマスノミコに討たれた、とあるんです。
そして、歴史書によっては陸耳御笠も匹女も
両方討たれた、と記述されてるものと、
陸耳御笠は大江山へ逃げてその先はわからない、
となってるものがあるそうです。
匹女はいずれの書でも、血原(千原)で
ヒコイマスに討たれた、とある。
そして、もうひとつ、「耳」で気になったのが、
オオクラミトメのもう一人の息子、室毘古(ムロビコ)。
彼が若狭の辺りを治めてたということで
オオクラミトメを祭る闇見神社が、若狭町に鎮座している、という。
彼は、若狭之耳別の祖である、といわれています。
福井県美浜町にある彌美(みみ)神社に
若狭之耳別の祖として、室毘古(ムロビコ)が祭られていて
耳別という一族が統治していた地域を、
その名にちなんで耳の庄と呼び、
耳川という川の名にも、また、耳村という村の名にもなっていました。
また、高浜原発建設時に「笠氏」刻印の土器が見つかってるんだとか。
笠氏は、若狭彦若狭姫神社の社家でもあります。
陸耳御笠(くがみみみのみかさ)、
春日神社の三笠(御笠)山。
若狭と大和のつながりが気になります。
ここへきて、オオクラミトメが若狭に祭られている…というのも
息子のムロビコつながりだけじゃない気もしてきます。
大江山の鬼伝説としては酒呑童子が有名ですが
もっと古い時代、大江山の鬼伝説の中で一番古いのが
このヒコイマスに追われた陸耳御笠である、とのことです。
ちなみに、大江山に追いやられた陸耳御笠、
元は「青葉山」が本拠地であったとのこと…。
若狭富士ともいわれる青葉山は、
福井の高浜と、京都の舞鶴にまたがっていて
福井側には若狭彦・若狭姫を祭り
京都側には笠津彦(ウケツヒコ)・笠津姫(ウケツヒメ)を祭っていたという。。。
この「青葉山」というのが
ちょっと東北(というか仙台)を思わせる部分でした
そして、「笠津彦」を「ウケツヒコ」、
笠=ウケと読むのが気になってたんですが
これが後からジワジワくることに…。
それは、「ハイヌヴェレ」なんですけど。
そのことにつて、
長くなったので次の記事で書いておこうと思います。
余談ですが。
私が生まれたとき
両親が住んでたアパートの裏にあったのが春日神社でした。
春日神社というと、本家は春日大社。
ご祭神は
武甕槌命(タケミカヅチ) - 藤原氏守護神(常陸国鹿島の神)
経津主命 (フツヌシ)- 同上(下総国香取の神)
天児屋根命 (アメノコヤネ)- 藤原氏の祖神(河内国平岡の神)
比売神 - 天児屋根命の妻(同上)
が基本。
そして、タケミカヅチとフツヌシの神様は
それぞれ茨城県の鹿島神宮と
千葉県の香取神宮から勧請されています。
ちなみに、アメノコヤネは枚岡神社から勧請されてますが
この枚岡神社、住所が「東大阪市出雲井町」
「出雲」なんですよね。。。
産土神社(ざっくり言うと、生まれた場所の近くの神社)が
春日神社だし、今住んでる家の近所にも
春日神社が2つもあって
神社めぐりを始めたころには「ご縁を感じる」と思ってたのですが
ど~も「春日神社」というより
「鹿島神」に惹かれる…となっていました。
調べるうちに、産土神社である大阪の小さな春日神社、
実は大昔は「高良社」と呼ばれてたらしく…。
「春日神社」になったのは後からみたいなんですね。
そのせいもあるかもしれませんが、
どうも春日神とか春日大社はあまりピンとこない…。
オオクラミトメを追っかけてて春日とのつながりに行きつき
なんとなく、これを知る必要があったからかな~
と感じています。
そんなこんなで、
福井旅行で行った神社仏閣、
どれも興味深かったんですが
その中でも闇見神社は
「一番行く必要があった」場所だったんではないかな、
という気がしています。
それだけ、他より感情が動いた、というか。
あ、あとはあれだ。
感情が動くといえば、萌えですね (え)
萌えは波動を上げる…と、
スピリチュアル系の漫画家さんのブログで書かれてたのを見て
「なるほどぉぉぉぉぉ!!!」と思ったこともある。
うん。
萌えは波動を上げるんだ(しつこい)
「銀の海 金の大地」は
キャッチコピーが「古代転生ファンタジー」なんです。
で、実は未完のシリーズです…(泣)
氷室冴子さん、2008年の6月6日に亡くなりました…。
(命日が近いんだな…)
「銀の海 金の大地」、
少女小説らしい萌え要素をふんだんに取り入れつつも
かなり史実には忠実な設定だったと思います。
主人公の母親というのが、
オオクラミトメの双子の妹(これは架空の人物)。
佐保彦・佐保姫とはイトコ同士になりますね。
で、父親は和邇のヒコイマスの息子である、丹波のミチノウシ。
オオクラミトメとヒコイマスの息子、佐保彦とのラブストーリーになるのですが
現代が舞台ならアウト!な濃い血縁関係ですが
その濃い血縁関係ゆえに、佐保姫と主人公は瓜二つ、という設定です。
そして、その主人公に対する「佐保を永遠に生かす」という予言。
ラブコメな「なんて素敵にジャパネスク」と違って
すごいシリアスなんで、最初は戸惑いましたが
すぐに引き込まれて
あっと言う間に全巻読破しました。
全11巻…立ち読みで。
本屋さん、ごめんなさい。
もうしません。
でも、立ち読みでザザーッと読んだだけなのに
「オオクラミトメ」とか「ヒコイマス」「ミチノウシ」、
「和邇(わに)」や「息長(おきなが)」…といった
現代では馴染みの薄い人名地名一族名など、
不思議なくらい記憶に残ってたんですよね…。
記憶力良い方じゃないんですが。
この小説を読んだ影響で、
日本の古代史に興味を持つようになりましたし。
最低でも20巻くらい、といわれてた物語が
11巻まで出てるんですが
その時点でまだ「古代転生ファンタジー」的要素があまりない。
主要キャラ(主人公の兄)の転生を匂わす程度。
「転生ファンタジー」的に、どんな物語展開するはずだったのか。
もう続きが読めないのが残念です!!
萌えを叫びつつ、続く。