【閲覧注意】ネットの怖い話 クリーピーパスタ/ミスター・クリーピーパスタ/倉田真木、岡田ウェンディほか訳/早川書房

 

アメリカのホラーアンソロジー。

帯には「アメリカ発・都市伝説系ホラー」「恐怖のネット怪談ショートストーリー15篇」とありますが、日本のネット怪談みたいな路線ではありません。
収録作に実話怪談ものはひとつもなく、全部完全に創作とわかる「ホラー小説」です。またネットの書き込みレベルの作品でもなく、全部一応小説としてそれなりの品質です。

正確には、「ネット上で活動する英語圏のインディホラー小説家たちの作品を集めたアンソロジーで、収録作の中にいくつかネット都市伝説を題材にしたものが混ざっている」という感じの本。

ですから、アメリカのネット怪談や都市伝説について知りたいと思って買うとがっかりします。日本初登場の非メジャー作家たちの作品が読めるホラーアンソロジーと思ってください。


収録作は全15作で、巨大モンスターもの、狂気もの、殺人鬼系、田舎ホラー、SF風、ゴーストストーリーなど路線は色々。読む人によってツボに来る作品と来ない作品はそれぞれ違うと思います。

私はというと最初の2作が本気でつまらなくて一瞬購入したことを後悔しましたが、その後はそこそこ楽しめる作品も収録されてました。


お気に入りは図書館が舞台のモンスターホラー兼後味の良い友情ストーリーの「図書館の地下室で」、短編の背後に壮大な物語が存在してそうな狂気の田舎町ダークファンタジー「ハドリー・タウンシップに黄昏が迫るとき」、死後の世界の冷たい存在感がいい交霊術ホラー「スピリット・ボックスから聞こえる声」の3本。

「感じのいい男」はちょっと筒井康隆の「駝鳥」を思わせる、優しい人相手に度を越して調子こいた奴の末路を描くざまぁ系サイコホラー。怖いというよりスカッとします。
都市伝説ホラーの「スマイル・モンタナ」はオチが「リング」でした。

また怖くはないけど、最も生理的に厭(イヤ)な話だったのが「舐める熊」。非常に気持ち悪いです。

この「舐める熊」の作者マイケル・ロブデルの収録作2本はどちらもあまりにもバカ(医学的に無知)なせいで致命的なセルフ肉体破壊をしてしまう人の話だったんですが、これが彼の恐怖のツボなのかなあ。ニッチだ。