100時間の夜/アンナ・ウォルツ/野坂悦子訳/フレーベル館

教師の父親が起こした●行スキャンダルのせいでリアルなクラスメイトからも顔の見えない国中のネット民からも集中砲火を浴び、すべてにキレてしまったオランダの14歳・エミリアは単身家出&逃亡することに決めます。逃亡先は海を越えて遠く離れたアメリカ・NY。

でもweb予約したはずのホテルがまさかの詐欺物件で、泊まる場所もなく外国の知らない街に1人きりといういきなりハードな状況に。
偶然知り合ったセスとアビーという兄妹(父親は故人、母親が不在で2人でアパートに滞在中)の部屋に転がり込みますが、折しも彼らのいるNYには未曾有の巨大ハリケーンが近づいている最中で…


それぞれに家庭が不本意な状況にある子どもたちが巨大ハリケーンが近づく中で出会い、大人のいない状況下、大停電中のNYで寄り添って過ごし、お互いを知り、友情を深め、それぞれが抱える心の傷や家族の問題に立ち向かって少し成長する100時間のドラマを描くオランダ産の青春YA。

4人のメインキャラがみんなかわいくて、真面目、自由、ダルダル、潔癖症とバラバラの個性の彼らが少しずつ結びつき、お互いを成長させていく姿が愛おしいです。
幼い妹に振り回される真面目な無愛想男子のセス、ダルダル生活を送る崩れた超イケメンのジムという2人の男子のキャラ造形と配置は少し少女漫画っぽいですが、恋愛成分は甘すぎず、不自然に性急でもなく丁度いい感じ。


大型ハリケーンに襲われるNYという特殊な舞台設定は彼らの物語を動かす装置として上手く使われており、買い出しに大停電、スマホ充電や水不足や交通の苦労、病院の様子と、ディテールの描写もしっかりしていて面白いです。

エミリアたちが滞在する地区は被害をほとんど受けていない(停電くらい)場所なので、災害が主役の「ディザスターもの」ではなく、「災害を背景にした成長物語」。あくまでもメインは少年少女の心のドラマです。


物語の真ん中ではないけど、父親のスキャンダルのせいでヒロインが浴びてるネットリンチについての描写やそれについての台詞が的確だと思いました。今はどこの国でもネット民はこんな感じなんだな。いやだなあ。


We Have Always Lived in the Castle Trailer #1 | Movieclips Indie
https://www.youtube.com/watch?v=EXkjFVaFJcQ

シャーリイ・ジャクスン原作 映画「We Have Always Lived in the Castle(原作邦題「ずっとお城で暮らしてる」)」の第1弾本予告編が公開されました。

特に妹の方のタイッサ・ファーミガがとても良いですね。この子はホラーが良く似合う。お屋敷や緑の風景も暗くて美しいです。
ただ音楽の感じはこういうのじゃない方がいい気がする(サスペンスフルすぎる)。


原作「ずっとお城で暮らしてる」は、アメリカのホラー小説家シャーリイ・ジャクスンの1962年発表の暗黒少女小説。
毒物によってほかのすべての家族を失い、外の人々から孤立したまま、精神を病みつつある伯父とともに屋敷で暮らすメリキャットとコニーのブラックウッド姉妹のもとに、突然、疎遠だった従兄のチャールズが現れたことから彼らの世界が変化していく、というストーリー。
東京創元社から邦訳が出ています。


監督、脚本は、ドラマ「トランスペアレント」に参加している新鋭ステイシー・パソン(Stacie Passon)。

主演は「ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ」のタイッサ・ファーミガ。

ほか出演は「パーシー・ジャクソン」シリーズのアレクサンドラ・ダダリオ、「キャプテン・アメリカ」シリーズのセバスチャン・スタン、「アメリカン・ゴッズ」のクリスピン・グローヴァーなど。


映画「We Have Always Lived in the Castle(ずっとお城で暮らしてる)」2019年5月17日アメリカ公開予定。日本公開は未定です。

Lucy Hale, Lucas Till to Star in Spike Lee’s Civil Rights Drama ‘Son of the South’【Variety】
https://variety.com/2019/film/news/lucy-hale-lucas-till-spike-lee-son-of-the-south-1203190326/

ボブ・ゼルナー原作 映画「Son of the South(原作タイトル「The Wrong Side of Murder Creek: A White Southerner in the Freedom Movement」)」の主演に「X-MEN」シリーズのルーカス・ティルの起用が決まったようです。


原作「The Wrong Side of Murder Creek: A White Southerner in the Freedom Movement」(未訳)は、公民権運動の活動家ボブ・ゼルナー(Bob Zellner)が2008年に発表した回顧録。

人種差別が苛烈なアラバマに生まれ、KKKメンバーの祖父を持つ白人ながら、学生たちの公民権運動組織SNCC(学生非暴力調整委員会)に所属し、1960年代の運動の中心に入り込んでいった自身の過去を描く作品のようです。


ティルが演じるのは筆者ゼルナー。

ほかゼルナーの大学での彼女キャロル役で「プリティ・リトル・ライアーズ」のルーシー・ヘイル、ヴァージニア・デュール(こちらも白人の公民権運動活動家)役でジュリア・オーモンド、キング牧師の側近ラルフ・アバナシー役でコメディアンのセドリック・ジ・エンターティナー、ローザ・パークス役で「Summer of '67」のシャノン・ラニア(Sharonne Lanier)らが出演。

それから公民権運動活動家のひとりジェイムズ・フォーマン(James Forman)の役で、彼の孫で俳優のチャカ・フォーマン(Chaka Forman)が出演する(つまり自分のおじいちゃんを演じる)そうです。


監督&脚本はスパイク・リー作品の編集担当を長年つとめており、今年のアカデミー賞でもリーの「ブラック・クランズマン」で編集賞にノミネートされているバリー・アレクサンダー・ブラウン。

スパイク・リーがプロデューサーをつとめます。


映画「Son of the South」は現在撮影中。

Young adult novel 'The Bone Season' to become TV series with new UK outfit Lunar Park【Screendaily】
https://www.screendaily.com/news/young-adult-novel-the-bone-season-to-become-tv-series-with-new-uk-outfit-lunar-park-exclusive/5138557.article?referrer=RSS


イギリスのプロデューサー・ハリエット・ハモンドとダズ・スペンサー・ラヴゼイが設立した新たなTVドラマ製作会社Lunar Parkが、サマンサ・シャノンのデビュー作「The Bone Season」のTVドラマ化権を取得したようです。

原作者シャノン自身の脚本で全8話のシリーズとしてドラマ化をめざします。


原作「The Bone Season」(未訳)は弱冠22歳(当時)のイギリスの新人作家サマンサ・シャノン(Samantha Shannon)が2013年に発表したデビュー作。

舞台は2059年。人の心に入り込んで読み取ることができる力を持つ能力者「ドリームウォーカー」の少女ペイジが、ある日捕らえられて、異世界の種族たちによって指揮されているオックスフォードの秘密結社に連れていかれ、ドリームウォーカーの戦士としての訓練を受けることに…
というディストピアン・ファンタジーのようです。

全7巻になる予定のシリーズで、現在までに3作が出ています。


映像化の話はこれが初めてではなく、2013年の時点では20世紀FOXがオプション権を持っており、アンディ・サーキスのプロデュースで劇場映画化の予定でしたが、これは実現しないままオプション権の期限が切れたようです。


キャスト、製作開始時期など未定です。

The Bone SeasonThe Bone Season
924円
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一昨日の記事の続き。2019年Teens' Top Tenのノミネート作品です。


Frat Girl
by Kiley Roache


カサンドラ(キャシー)・デイヴィスはワーレン大学から奨学金を受け取って、攻撃的で性差別的な男子学生たちの親睦クラブ・デルタ・トーチ(DTC)の調査をすることになった。DTCに入り込んで、彼らの女性嫌悪的な振る舞いの証拠を提出する。彼らのような最低の男子のことはわかっているし、彼らの行動を暴くのは朝飯前のはずだった。
でもDTCの男子たちには彼らの指針があって、一緒に入会したジョーダン・ルイスはキャシーが予想したような、タンクトップを着た典型的なブロ(調子に乗った遊び人の男子)というわけではなかった。

スタンフォード大に在学中(当時)の若手新人キリー・ローチのデビュー作。ちょっと正確に理解できてるか自信がありませんが、アメリカの大学には素行の悪いミソジニーな遊び人の男子(俗称「ブロ」)たちの団体が作られる、という文化が存在するようで(日本の一部の大学にも似たものはあるかな?)、それを題材にしたフェミニズムがテーマの青春小説のようです。

Frat GirlFrat Girl
879円
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Girl Made of Stars
by Ashley Herring Blake


友だちのハンナに双子の弟オーウェンが性的暴行で告発され、マーラは自分がどう考えたらいいのかわからなかった。大好きな弟がそんな暴力的な犯罪を犯すことなんてあるのだろうか。愛する家族と自分の正誤の感覚との間で引き裂かれ、マーラはどうすればいいのかわからないし、元彼女で今は幼馴染の親友という関係になってるチャーリーとのぎくしゃくした関係もどうしようもない。

アメリカのYA&児童書作家アシュリー・へリング・ブレイク(Ashley Herring Blake)の作品。現在2019年ラムダ賞YA部門最終候補。

Girl Made of StarsGirl Made of Stars
1,222円
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Isle of Blood and Stone (Tower of Winds #1)
by Makiia Lucier


19歳のエリアスは王家に仕える探検家で、卓越した地図製作者で、デルマー国の新王の昔からの友人。
未だに未解決の18年前の王子たちの誘拐事件について、謎解きが隠された2枚の地図という手がかりが現れた。若き王子たちに本当は何が起こったのか、同じ日に失踪したエリアスの父アントニー卿はなぜこの地図を描いたのか。美しい王の従姉妹を連れ、エリアスは謎を解こうとする。

グアム出身のアメリカのYAファンタジー作家マキーア・ルシア(Makiia Lucier)の作品。シリーズ1作目。





To Kill a Kingdom
by Alexandra Christo


リラ姫はセイレーンの王族で最も危険な存在。17歳の王子たちの心臓をコレクションしており、海じゅうの尊敬を集めていた。運命のいたずらによって同族のひとりを殺してしまうまでは。
娘に罰を与えるため、海の女王はリラを最も憎まれる存在である人間に変身させ、歌声を奪った。冬至までにエリアン王子の心臓を女王のもとに持ち帰らなければ永遠に人間のままでいることになる。

イギリスの新人アレクサンドラ・クリスト(Alexandra Christo)のデビュー作。「人魚姫」のリ・イマジニングでしょうか。心臓コレクションが趣味とか人魚姫凶暴すぎ。ちなみに王子さまは王子さまでセイレーン狩りが趣味だそうです。

To Kill a KingdomTo Kill a Kingdom
789円
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Muse of Nightmares (Strange the Dreamer #2)
by Laini Taylor


戦災孤児で20歳の司書ラズロ・ストレンジは5歳の頃から、失われた伝説の都市「ウィープ」の夢に悩まされているが、世界の半分を旅してまでそれを探すほどの勇気はない。
しかし素晴らしい機会が訪れる。「神殺し」の名で知られる英雄と伝説の戦士たちの軍団が現れて、ラズロは悩まされている夢と永遠に別れるチャンスを得たのだ。

「スモーク&ボーン」シリーズのレイニ・テイラーによる神と人との戦の後の世界が舞台のファンタジー。シリーズ2作目。(上のあらすじは1作目のものです)1作目は昨年のこのトップ10の第9位になっています。





Picture Us in the Light
by Kelly Loy Gilbert


ダニー・チェンはRISD(米トップクラスの芸大)への奨学金を得て、家族にも祝福されながらずっと夢見ていた未来へ踏み出そうとしているところだが、親友のハリーと離れてしまう未来に言葉にできないほど取り乱している。
両親に秘密があるということはずっと知っていたが、父親のクローゼットにあったテープで封をされた箱から古い手紙とシリコンバレーの富豪の家にまつわるファイルが出てきて、自分が思っていた以上の過去が両親にあるらしいことに気がついた。両親の過去を深く探っていくうちに家族の歴史の土台が揺るがされ、愛するすべてが失われる危険にさらされる。

2015年デビューのアメリカの作家ケリー・ロイ・ギルバート(Kelly Loy Gilbert)の2作目の著作。「ムーンライト」(映画)+「The Sun is Also a Star」な青春小説だそうです。2019年ストーンウォール賞YA部門オナー作品。





The Poet X
by Elizabeth Acevedo


ハーレムに住む15歳のクシオマラ・バティスタは、自分の声など聞いてもらえないと思っているし、この地域で身を隠すこともできないと思っているから、体が女性らしく育ってからは拳に会話をさせている。でも言葉にしたいことはたくさんあって、フラストレーションも情熱もすべて革のノートに書きつけている。ひとりで祈りを唱えるように。
学校のスラムポエトリー部に勧誘されたとき、厳しい母親に見つからずに入部することも、大声で言葉を発することもどうすればいいのかわからなかったが、自分の詩をパフォーマンスしたいという思いが強くなっていくのは止められなかった。

ポエトリースラムのナショナルチャンピオンでもあるらしいアメリカの詩人エリザベス・アセヴェド(Elizabeth Acevedo)の小説家デビュー作品。
2018年ボストングローブ・ホーンブック賞フィクション部門受賞。2018年全米図書賞児童書部門受賞。2019年マイケル・L・プリンツ賞受賞。2019年プーラ・ベルプレ賞作家部門受賞。2019年ウォルター・ディーン・マイヤーズ賞YA部門受賞。

2018年カーカス賞児童書部門最終候補。2019年ゴールデン・カイト賞YAフィクション部門オナー。2019年ウォーターストーンズ児童文学賞YA部門ショートリスト。
現在2019年ラムダ賞YA部門最終候補。現在2019年カーネギー賞ショートリスト。現在2019年チルドレンズ&ティーン・チョイス・ブック賞ティーン部門最終候補。

The Poet XThe Poet X
2,024円
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The Prince and the Dressmaker
by Jen Wang


近代初頭のパリ。セバスチャン王子には秘密がある。夜になると彼は、大胆なドレスを着たファビュラスなレディ・クリスタ――世界のファッションの中心地のいちばんホットなファッションリーダー――としてパリに旋風を巻き起こしているのだ。
彼の秘密の武器(にして最高の友だち)は最高のドレス職人・フランシス。だけど彼女には自分の夢もある。フランシスは友だちの秘密を守るために、いつまで自分の夢を先延ばしするべきなのか?

SF作家のコリイ・ドクトロウがストーリーを担当した共作「In Real Life」などで知られるアメリカのグラフィックノベル作家ジェン・ワン(Jen Wang)の3作目の単行本。こちらは彼女がストーリーと作画の両方を担当しています。
現在2019年チルドレンズ&ティーン・チョイス賞YA部門最終候補。





Speak: The Graphic Novel
by Laurie Halse Anderson, Emily Carroll (Illustrations)


メリーウェザー高校の1年生メリンダに友だちはいない。理由は夏の終わりのパーティに警察を呼んでぶち壊しにしたから。美術の課題の中で、彼女はようやくあの夜自分に何があったのかに向かい合うことができるようになる。

ロウリー・ハルツ・アンダーソンの、全米図書賞最終候補、プリンツ賞オナー、エドガー賞YA部門最終候補になり映画化もされた1999年発表の代表作「スピーク」のグラフィックノベル化作品。
作画はホラーグラフィックノベルのヒット作「Through the Woods」(未訳)のエミリー・キャロル(Emily Carroll)です。

SpeakSpeak
2,077円
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Thunderhead (Arc of a Scythe #2)
by Neal Shusterman


すべての病が駆逐された世界での人間の唯一の死に方は、プロの刈り取り人である「サイズ(大鎌)」たちによって殺される(「収穫」される)ことだけ。
シトラとローワンは大鎌の見習いに選ばれた若者。殺し方を学んでいくふたりのうち、正式な弟子に選ばれるのはひとりだけ。選ばれた者の最初の仕事は、選ばれなかった方の命を「収穫」することだ。

「僕には世界がふたつある」のニール・シャスタマンのディストピアYA「奪命者」の続編。ユニヴァーサルで映画化の予定あり。1作目は邦訳が出ています。(上のあらすじは1作目のものです)





The Unwanted: Stories of the Syrian Refugees
by Don Brown


2011年、内戦で引き裂かれたシリアから、エクソダス規模の難民があふれだした。驚くほどの犠牲者たちの洪水は周辺国を呆然とさせ、次いで混沌が広がっていった。分断と支援のための予算が大きくなるにつれて、受け入れ国の怒りは高まる。2017年には、多くの人々が、彼ら戦争の犠牲者たちに背を向けたくなっていた。難民たちは「いらないもの(アンウォンテッド)」なのだ。

アメリカの児童書作家&イラストレーター・ドン・ブラウン(Don Brown)によるシリア難民を描くグラフィックノベル。2019年YALSAノンフィクション賞受賞作品。2019年ロバート・F・サイバート知識の本賞オナー。





Wildcard (Warcross #2)
by Marie Lu


1日に何百万人もの人々がログインする「ウォークロス」はただのゲームじゃない。生きる術だ。
生活に困窮するハッカー少女のエミカ・チェンは、非合法にゲーム内で賭けをしているプレイヤーを追う賞金稼ぎとして働いているが、競争は激しく、生き延びるのは簡単じゃない。当座のお金のために「ウォークロス」の世界大会にハッキングで潜り込んだエミカは、逮捕されるかわりに、ゲームのクリエイターである若き大富豪の田中秀夫から、セキュリティの問題を探り出すスパイになってほしいと依頼を受ける。

「レジェンド 伝説の闘士ジューン&デイ」のマリー・ルーによるVRゲームの世界を舞台にした新作シリーズの2作目。(上のあらすじは1作目のものです)現在2019年チルドレンズ&ティーン・チョイス賞YA部門最終候補。

Wildcard (Warcross)Wildcard (Warcross)
1,224円
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以上25作品。
トップ10の発表は8月15日。