大学1年の夏季休暇、
サトちゃんたちと京都から広島へと
旅をしていることを延々と書いてきましたが、

実は最近、限界を感じています。
僕は小説を書くことに、
ある意味、世情を超越した世界観を
維持していたいと考えていました。
簡単にいえば、
どんな世情の騒ぎも、
僕のストーリーには関係なく、
ただ淡々と自分の構築した世界観を綴っていく、
そのような思いでした。

しかしながら、
最近は、そうはいかない気持ちが、
徐々に頭をもたげてきていました。

あの9年前の東日本震災の直後、
僕は絶望的な空虚感の中にいました。
生死をさまよっていた人たちには、
非常に不謹慎な考えだとは、
わかってはいるのですが、
僕は身の保全の確約された、
単に物流が滞り、
スーパーの棚が
がらんどうになったにすぎない、
そんな東京のみそらで、
ただ、呆然と、
芸術家の無力さを感じていました。
創作など、生きていくことにとっては、
無意味で、無駄なものでした。
少なくとも、
今自分が生み出すものなんて、
この世への必要性が、
まるで見つかりませんでした。

英雄的な嗜好が
あったわけでもないんです。
ただ、この世界の隙間で、
細々でもいい、
小説というものを創作し、
この世に発表し、
なんらかの評価を得て、
それで暮らしていければいいと思っていたんですが、
僕は何か
勘違いしていたのかもしれません、
小説はこの世を救うこともできないし、
飯の種にもなりそうもありませんでした。


そして今、
僕はこのコロナの影響下で、
あの頃とは少し違う気分でいます。
無力さは、力を抜けば、
かすかに感じられるかもしれません。
しかし、
明確な道は見えているのです。
僕は、この現状を体現し続け、
表現していこうと思っています。

心境が変わったわけじゃないんでしょう、
ただ、気が抜けている感覚もあるので。

それでいて、この世とにらめっこして、
じいっと観察しても、
僕には全ては見えてこない、
それでも、
鳥のように空からこの世界を眺めたいという、
どうしようもない欲求が溢れてきて、
それは、つまり、
小説を書くことなんだと、
自分なりに解釈しています。

本当は、
この災禍の終息を持って、
筆をとるのもいいかと、
だけれど、
僕には、どうにも、
昨日までの世界が
そう簡単に
戻ってくるようにはとても思えず、
仮に戻ってきたとしても、
今の心境をリアルに書き残したいという思いで、

現在を進行させながら、
遠ざかる昨日までの世界を愛おしみながら、
噛み締めていたいと考えています。

 

プロジェクト638日目。

 

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2020/4/7 638日目

■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71% 

■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定

■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中

 158ページ中50ページくらい了

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『C/B A corona is beautiful』の全編→

古い家屋の軒端へと、
僕は連れて行かれました。

そこで、その女性は、
僕の足元へかがみこみ、
消毒液をかけ、
絆創膏やらつけてくれたんです。
僕が顔をゆがめると、
「しみる?」
首を強く横に振りました。
しかしながら、
なんでもないふうには装えないほど、
怪我の具合はひどいものでした。
右足の親指の爪が、
ばっくりと剥がれて、
根元だけつながっているのです。
痛くないわけはなかったんです。

僕は、彼女が口にした、
”ぼく?”という言葉を
脳裏に繰り返していました。
おかしなものですが、
僕は、自分が男だと認識されていて、
ここで痛がったら、
本当は女の子であるとばれるような、
そんな気持ちになっていました。

このとびきり親切な人が、
どんな人だったのか、
ついぞ知ることはありませんでしたが、
おそらく、僕ぐらいの年の子がいたんでしょう、
そんな会話をしていたと思います。

ただ、最後に交わした言葉だけは
記憶に残っています。
「ほうね、安登(祖父母の家のある地名)から来たん」
「はい…」
「でもじゃが、広島の子じゃないじゃろね」
「はい…、東京、から」
「そう…、」
それで、女の人は、僕をじっと見つめ、
「そうじゃねえ、ここいらじゃ、
こがな洒落た髪してる子おらんもんね」
「…」
僕はそれで、顔を真っ赤にして、
おじぎをして、
軽いびっこをひいて、
また、竹原の街中へと歩き出していました。

姉と妹は、急に駆け出して行った僕を
探して歩いていました。
狭い街中です。
彼女らは僕を見つけ、駆け寄ってきました。

その夜、僕はおばあちゃんに頼み込みました。
そして翌日、
祖父母の家から近い床屋で、
生まれて初めて、
スポーツ刈にしてもらったのです。

 

プロジェクト637日目。

 

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2020/4/6 637日目

 

■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71% 

 

■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定

 

■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中

 

 158ページ中50ページくらい了

 

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kindleでは「セノイピープル」「バスストップ」「悲しきウスバカゲロウ」が読めます→

 

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目

 

https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html

 

 

夏のことで、
僕はビーチサンダルを履いていました。
それでぺたぺたさせながら、
石畳の路面を走っていました。
どこに行くとかじゃなく、
とにかくおばさんに
からかわれた気がして、
その屈辱感と羞恥から逃れたい一心でした。

僕は汗と涙で汚れた顔で、
がむしゃらに走り続けます。
道は狭く、
深い軒屋根が視界に迫っています。

それで、転んでしまったのです。
少し敷石が飛び出ていて、
そこにつまさきをひっかけたみたいです。
つまずいて、あとは前のめりになって、
地面に転げていました。
足先に刺すような激痛が走りました。

「あららあ、大丈夫ぼく?」
僕がうずくまっていると、
頭上から声がしました。
日傘の影がおりてきます。
僕はおそるおそる顔を上げました。
「そげないきおい走ったら、危ないじゃろうが」
立ち上がった僕に、
その人はしゃがんで目線までおりてくると、
静かな声で言いました。
大人の女の人です。
白いブラウスに、紺のスカート、
黒いまっすぐで長い髪をした人でした。
「ぼく…」
”僕”と言われたことが、
僕に勇気を与えてくれました。
「全然、大丈夫です」
「そな言うても、血だらけじゃが」
広島弁も、この女性が話すと、
なんだかおっとりして、
優しく聞こえてきました。
僕のつまさきは血だらけです。
それを見ると、
くらっとするような痛みが走ります。
ビーチサンダルで
むき出しになっていた足の親指に、
血がべっとりとついています。
爪が、大きく剥がれていました。
「いててっ」
僕は足先を押さえます。
「おばさんとこそこじゃけえ、ちょっと歩ける?」
女性はあごで、すぐそこの軒を示しました。
僕はこくりと頷いて、
その人の背中について歩いていきました。
 

プロジェクト636日目。

 

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2020/4/5 636日目

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目

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それで、どこまで走ったのかわからないですが、
とにかく僕を女の子と
決めつけたおばさんから逃れたくて、
僕はとにかく遊び場を離れ、
走って竹原の街へと出ました。

石畳の市街地は、
観光地化されていて、
ほとんど車の通りはありませんでした。

僕は少し泣いていたかもしれません。
おばさんは意地悪で放言したんじゃなく、
ただありのまま、
そう見えたから口にしたんでしょう。
それが、とても悔しかったのです。
僕は小学校高学年になる頃、
そういうことを、
少し気にするようになっていました。
父を早くに亡くした家庭では、
姉と妹、そして母、
女性しかおらず、僕がたった1人の男です。
その環境のせいか、
友人らと遊んでいると、
なんとなしに違和感を抱いていました。
どうも言葉づかいがおとなしいし、
髪型まで姉や妹に
合わせられてるわけです。
当時小学生くらいだと、
前髪をわずかに残した
スポーツ刈という髪型が流行っていました。
僕は母に、それにしてくれと
言ったこともあったんですが、
ただ長い髪を揃えてくれていた母に、
そんなことできるわけもなく、
まあ、家もあんまり
裕福じゃなかったのもありますが、
床屋いくくらいなら、
これで我慢しなさいと言われていました。

そういう鬱屈が、
あのおばちゃんの言葉で、
一気に噴出したんでしょうね、
ささやかな涙は、
それ自体も女々しいんですが、
憤りをあらわにした、
僕のやるせない思いでした。

姉がうしろで呼ぶ声がします。
それもなんだか恥ずかしくて、
僕は1人、竹原の街中を走り抜けました。

その時、
涙目に映った、古い黒壁や、
延々と続く深い軒屋根を見ながら、
僕はどうして、
女の中に1人きりでいなきゃならないのかとか、
このままでは
彼女らと同化して、
僕も女になってしまうんじゃないかとか、
そんなことを考えていました。

 

プロジェクト635日目。

 

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2020/4/4 635日目

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目

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竹原も、
僕は子供のころから
もう何度か訪れています。
最初に行ったのは、小学5年生の夏です。

全然話は違うのですが、
この時のちょっとした思い出があります。

僕は当時、
母親にいつも髪を切ってもらっていました。
長さを揃える程度の、
マッシュルームカットみたいな感じです。
姉と妹と育ったせいかもしれません。
母もなんとなく姉、
妹と合わせて切っていたようです。

僕はその夏も、
まあ、女の子みたいな髪型して、
広島の祖父母の元へ遊びに行っていました。
祖父母の家から、姉と妹と、
竹原に出かけたのです。
子どもたちだけです。

僕はちょうど歴史に興味を抱き始めた頃で、
それはもう楽しみにして、
古い町並みを歩いていたんです。
頼家がここの出自で、
あの頼山陽について知ったのもこの頃です。
竹原には、頼家の古い家屋がそのまま残っていて、
子どもながらに
いろいろな想像をしながら周っていました。

美観地区には、
昔の遊具なんかが並べられている
観光施設もあったんですね、
そこで僕らは、
フワフープやけん玉で遊んだりしていました。
そこで、事件は起きました。

係のおばちゃんは、
別に悪気はなかったはずです。
しかし、あまりにも失礼な言葉を言ったのです。
僕らが古い家屋の合間の、
土間になった広場で遊んでいると、
「あらあ、かわいい三姉妹だねえ」

僕は持っていたけん玉をぎゅっと握りしめ、
その場に硬直してしまいました。

「あんたがお姉ちゃん?」
おばちゃんは姉に聞き、
姉は大きく頷いて、僕を指さすと、
「弟です」
僕はさっと顔から血の気がひくのがわかりました。
それでも、大声になって、
「俺、女じゃない!」
おばあちゃんはからから笑って、
僕をじっと見つめると、
「あらまあ、かわいい髪してえ、三姉妹みたいじゃねえ」
「ばかにすんな!」
僕は叫ぶと、その場を走り去っていきました。

 

 

プロジェクト634日目。

 

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2020/4/3 634日目

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目

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車窓から瀬戸内海を眺めながら、
僕らは竹原の街にたどり着きました。

現在、
人口たった2万6,000人のこの竹原市は、
瀬戸内の交通の
要衝だった場所です。
鎌倉時代の後半からの港町で、
江戸時代も塩業で栄えました。
今でも江戸期の古い建物が多く保存されており、
それがかなり広範囲に広がっています。

駅からアーケード街を数分歩き、
川を渡ると、突然古い町並みが現れます。
僕ら3人は、
駅の観光案内所で入手したタウンマップを手に、
歩いていきます。

煤で黒ずんだ重厚感のある漆喰壁の町屋が、
道の両側に続いています。

「なんでこんなに残ってんだろうね」
サトちゃんはあんまり関心なさそうでしたが、
つまり、
彼はいわゆる戦国マニアですから、
城のない町にはあまり興味がなく、
それでも、町屋を眺めながら、
そう口にしていました。
「どうしてだろう…、」
僕も考えてみたんですが、
当時はよくわかりませんでした。

日本の町というのは、
いくつかの出来事のもとに、
それらを乗り越えたものが、
今では美観地区と呼ばれ、
観光地化しているわけです。

いくつかというのは、
思いつく限りでも、

明治維新の戊辰戦争、
西南戦争、
関東大震災、
決定的だったのが、
第二次大戦下の本土空襲、
そして、現在にいたっては、
高度経済成長期の破壊、
東日本大震災、
といったところでしょうか、

そのどれをも、
竹原は受けていません。
山陽道から少しそれた、
瀬戸内の半島の一部までには、
あらゆる戦乱や開発の波も
訪れなかったということでしょうか。

それが、奇跡のように、
この町の家屋群を残しており、
残されたものが、
単なる廃墟と認識される前に、
美的価値として見られる時代に、
強固に維持されてきた、
そんな感じかと思います。

 

プロジェクト633日目。

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2020/4/2 633日目

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目












 

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子どもの頃のお話です。
僕は瀬戸内海の無人島に、
祖母とともに泳ぎ着いたところです。

島は、泳いでいる途中では、
ほとんど漠然とした影でしかありませんでしたが、
こうして地に足をついてみると、
その全貌がなんとなくわかるのです。
狭くて、ひとわたりが体感できるのも、
わくわくする

そもそも無人島の魅力とはなんなのか、
それは隔離されているってとこに
ありそうな気がします。
海水で、他の場所と隔絶されているということは、
そこに、別の世界が
あるんじゃないかという期待感があります。

僕はたぶん、子ども心に、
そんなこと感じながら島を眺めていました。

祖母は、遅れて砂浜に来ると、
「ずいぶん早くなったねえ」
と僕に関心した目をむけていました。
もう背丈は同じくらいだったと思います。
その前の年、僕は祖母の背中に揺られて、
この島に行きついたのに、
徐々に平泳ぎも上達して、
1人でぐいぐい泳げるようになっていました。
出発した陸地は、
はるか波間に遠く見えるだけです。
人影が見えます。
それが祖父や姉たちなんでしょうが、
なんとなくしかわかりません。

僕は石ころを拾い上げると、
海に向かって思い切り投げました。
石は海面をおもしろいように
ぴょんぴょん跳ねていきました。

 

プロジェクト632日目。

 

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2020/4/1 632日目

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目

https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html
 

僕は関東で生まれ育ちましたが、
瀬戸内海にも
それなりの思い出があります。
祖父母の家が
呉から少しいった安浦にあり、
夏休みの間は遊びに行っていたからです。

お盆前の海で泳ぎました。
お盆を過ぎるとサメが出ると言われ、
今思うと
その根拠もなにも分からないのですが、
怖くて、
とても海に入る気にはなれませんでした。
あとクラゲでしょうかね、
秋近くなった黒砂の海岸に、
無数の風船のようにクラゲの死体が群がり、
微風にふわふわ揺れていたのを記憶しています。

さて、真夏は海に行きます。
海水浴というよりは、
それこそ遠泳をしました。
近くの島まで、
おばあちゃんについて、
平泳ぎで泳ぐのです。
最初は息継ぎが上手くできなくて、
途中で溺れかけたりします。
そうすると、
まだ若かった祖母(55歳くらい)に
背中に乗せられ、
そのまま島まで泳ぎ着いていました。

そのうち、
独力でも泳ぎ切れるようになります。
たぶん、
3キロくらいの距離だったと思います。
それほど近くに島があったわけです。

泳ぎ着いたのは、
人の住んでいない無人島でした。
子どもだった僕は、
ひじに手を当て、
息を吐かせながら、
島を眺め、
今泳いできた海を眺めました。

祖母が少し遅れて泳いできて、
砂浜を歩いてきます。

砂浜は、本当に狭くて、
小舟が5艘も着岸したら
埋まってしまうくらいのものです。
視界は大きな岩場で遮られています。

島は、子どもの足でも、
ほんの5分ほどで一周できるような小さなものです。

 

プロジェクト631日目。

 

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2020/3/31 631日目

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目

https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html
 

瀬戸内海の風景を見て、
母と交わした言葉を思い出すのです。

母は広島よりさらに西の山口出身です。
幼い頃から、
この瀬戸内を眺めて暮らしてきたのです。
父は北海道の人なので、
そのうち、北海道の神威岬や宗谷岬や、
雄大な景色を見たことでしょう。
それから、ドイツやスイスで
短い間暮らしたこともあります。

その母が、
海を眺めながら、ぽつりとした感じで、
「いろんなとこ見たけど、
やっぱりこの風景がいいね」
その短い言葉には、
単なる風景のよしあしとか、
有名無名じゃない、記憶という含みが
あったんだと思いますが、
僕はそれを聞いて、
「ほんと?」と少し疑うような返事をしました。
母は何も答えませんでしたが、
野呂山という山の展望台から、
眼下に広がる瀬戸内海を見つめ、
目を離しませんでした。


サトちゃんと順平と旅をして、
列車の車窓いっぱいに海が広がると、
僕はそれを思い出していました。
それこそ、食い入るように眺めていました。
まるでその細部を精緻に見定め、
何をもってこの風景に目を奪われているのか、
それを分析しているようです。

母の言葉だけではなく、
僕は様々な想像を巡らせていました。
たとえば村上水軍についてです。
一概に海賊とひとくくりにするのは何ですが、
記録に残るだけでも、
体制に属さない海の一統は、
平安中期、藤原純友の乱、
いや本当はもっと古く
古事記の時代からあったでしょう。
神功皇后の遠征や
聖徳太子の松山、道後温泉行
なんかが思い出されるからです。

点々とした島々、
多くは元々、山の山頂付近ですから、
海からいきなり急勾配に崖がせりだし、
人の住める平らな土地は少なそうです。
彼らは、そうした土地で、
潮流を深く把握し、
格好の島に根付き、
勢力を拡大維持していきました。
田畑は少なかったでしょう、
穀物などの収穫は乏しく、
内地から仕入れていたと思います。

どんな交流があったのか、
それは威圧的なものであったのか、
友好的であったのか、
宮本常一の「海に生きる人々」や、
「忘れられた日本人」を
読む以前だった当時の僕には、
その生活に好奇心こそあれ、
不明な点も多く、興味をそそられるだけでした。

竹原に列車が到着するまで、
もう少し瀬戸内海について話を進めてみます。

 

プロジェクト630日目。


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2020/3/30 630日目

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目

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24歳、大学1年の時の、
ルームメイトとの旅をずっと書いています。
彼らとは、基本バイクで、
その後も何度か電車で旅をしていますが、
この旅行が、
その最初だったかもしれません。

夜の品川を出て、岐阜、京都とやってきて、
さらに西へ、広島へと向っています。

この日は、京都から列車に揺られ、
午後過ぎに広島県の三原に到着しました。
三原は戦国末期、
小早川家の居城であったところです。
かつて水城と呼ばれたそのお城は、
今は完全にJRの三原駅と重なっています。
その石垣が、駅に隣接し、
ホームから本丸を窺うことができます。

僕らはここから呉線に乗り換え、
竹原に向うのです。
竹原の先に安浦という町があり、
そこに僕の祖父母が暮らしていました。

「竹原どうかな」
サトちゃんがわくわくした感じで言いながら、
呉線の列車の車窓を見ていました。
「頼山陽っていたでしょ、あの人の出身地」
僕はたいした説明もせず、そう答えました。
頼山陽については、
おいおい触れます。

列車が海沿いを走っていきます。
瀬戸内海の光景が
せまるように見えてきました。
夏の強い光が、
静かな波間を照らしています。
列車はぐんぐん進んで、
その場に風景をとどめてくれなくて、
次から次へと、
点々とする島を映し出していきます。

3人とも、しばらく言葉を発すこともなく、
空いた車内から窓辺に移動して、
目の前に広がる
海岸線の景色を眺めていました。

島影から島が見え、
折り重なるように風景を変えていきます。
「すごいね、島だらけ」
順平が目を放さず口にします。
関東で育った僕らには、
太平洋の大海原ばかりが印象にあって、
こうした立体的な海岸線の光景は、
見慣れないものでした。
「これ全部、昔は山だったって知ってた?」
と僕が言うと、
2人は口をそろえて、
「うそお」
僕は首を傾げながら、
「たぶん、ほんとだよ、
氷河期は海面が低かったから、
これは全部山でさ、
水かさがあがって、陸続きじゃなくなったんだよ、」

僕らはのどかな
瀬戸内の風景を眺めています。
しかしそれは、
全て山の頂上部分で、
さしあたって海面が雲の流れのように、
僕は想像していました。

 

プロジェクト629日目。

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2020/3/29 629日目

■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71% 

■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定

■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中

 158ページ中50ページくらい了

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目

https://ameblo.jp/levelbooks/entry-12445434453.html