古い家屋の軒端へと、
僕は連れて行かれました。

そこで、その女性は、
僕の足元へかがみこみ、
消毒液をかけ、
絆創膏やらつけてくれたんです。
僕が顔をゆがめると、
「しみる?」
首を強く横に振りました。
しかしながら、
なんでもないふうには装えないほど、
怪我の具合はひどいものでした。
右足の親指の爪が、
ばっくりと剥がれて、
根元だけつながっているのです。
痛くないわけはなかったんです。

僕は、彼女が口にした、
”ぼく?”という言葉を
脳裏に繰り返していました。
おかしなものですが、
僕は、自分が男だと認識されていて、
ここで痛がったら、
本当は女の子であるとばれるような、
そんな気持ちになっていました。

このとびきり親切な人が、
どんな人だったのか、
ついぞ知ることはありませんでしたが、
おそらく、僕ぐらいの年の子がいたんでしょう、
そんな会話をしていたと思います。

ただ、最後に交わした言葉だけは
記憶に残っています。
「ほうね、安登(祖父母の家のある地名)から来たん」
「はい…」
「でもじゃが、広島の子じゃないじゃろね」
「はい…、東京、から」
「そう…、」
それで、女の人は、僕をじっと見つめ、
「そうじゃねえ、ここいらじゃ、
こがな洒落た髪してる子おらんもんね」
「…」
僕はそれで、顔を真っ赤にして、
おじぎをして、
軽いびっこをひいて、
また、竹原の街中へと歩き出していました。

姉と妹は、急に駆け出して行った僕を
探して歩いていました。
狭い街中です。
彼女らは僕を見つけ、駆け寄ってきました。

その夜、僕はおばあちゃんに頼み込みました。
そして翌日、
祖父母の家から近い床屋で、
生まれて初めて、
スポーツ刈にしてもらったのです。

 

プロジェクト637日目。

 

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2020/4/6 637日目

 

■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71% 

 

■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定

 

■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中

 

 158ページ中50ページくらい了

 

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『僕を知らない君へ』オープニング 1日目

 

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