僕とサトちゃんと順平は、
ここからさらに西へと向うことになります。
朝の京都を名残惜しく出発した僕らは、
また鈍行列車に揺られて旅を続けます。
新幹線に乗りたい気持ちはありました。
しかし、まあそんなお金もなく、
青春18キップの規則通り、
各駅停車だけが僕らの足です。
京都から山陽本線に乗っていくのですが、
時刻表(これもスマホの普及で、全く使わなくなりました)を見ると、
姫路のあたりで乗り換えです。
それを見て、
「あなご寿司弁当食べたい」
と言い出したのはサトちゃんでした。
なんでそんなこと言い出したのか、
当時僕らは、桃太郎電鉄というゲームにはまったりしていました。
姫路駅であなご寿司屋っていうのがあったんですね、
僕は、
「どっちでもいいけど、乗り換え5分くらいしかないよ」
「5分ありゃ大丈夫でしょ」
というわけで、サトちゃんは乗り換え時に、
ホームにあった弁当屋に買いにいってました。
僕と順平は
さっさと次の列車に乗ります。
「大丈夫かね?」
4人席に座ると、
順平が窓の外から、
ホームの奥の方にあるであろう、
弁当屋の方を眺めています。
僕も気になって外を見つめます。
この位置からは、
弁当屋は影になっていて、
サトちゃんがどうしているのかはわかりません。
「どうする、間に合わなかったら」
僕がぽそりと言うと、順平は、
「どっかで待ち合わせる約束しときゃよかったね、」
「でもまあ、最寄りは言ってあるから」
この日は、
僕の祖父母の家に泊まる予定でした。
その最寄り駅は、
サトちゃんには話していました。
この会話、すでにサトちゃんが
乗り遅れる前提で話しています。
いよいよ発車ベルが鳴り始めました。
そのタイミングで人影のなかった弁当屋から、
サトちゃんが走ってくるのが見えます。
僕は慌てて窓をあけると、
大きく手を振って、
「サトちゃん!こっちこっち、急げ!」
順平は座席で笑い転げています。
結局、サトちゃんは
なんとか間に合うことが出来ました。
汗だくになって、買ってきた弁当を、
縦にして大きな手に握っていました。
列車が走り始めます。
さっそくサトちゃんは
アナゴ寿司を頬張り始めました。
僕は車窓とサトちゃんを交互に見ながら、
「やばかったね、」
「うん」
サトちゃんは
1つづつ握りを僕らに手渡しながら、
「すぐ買えたんだけど、」
「じゃあすぐくりゃよかったじゃん」
と順平。
サトちゃんは首をおおげさに振って、
「なんかさ、買おうとしたら、
売店のおばちゃんがさ、
いきなり言うんだよ、」
「なんて?」
「俺が、あなご寿司くださいって言ったら、
高いよこれ、って」
「へ?」
僕と順平は少し驚いた顔します。
「高いよって、1200円。馬鹿にすんなよだよな」
「それで…、」
僕はすでにこみ上げてくる笑いを抑えながら聞きます。
「だから喧嘩になったんだって。馬鹿にすんなって、」
その売店のおばさんの真意はわかりません。
物を買ってくれると言っているんだから、
何もそんなこと言わなくてもいいと思うんですが、
もう、それを確かめるすべもありません。
ただ僕らは、
困った憤りをあらわらにしたサトちゃんを見ながら、
笑い転げていました。
旅は続きます。
プロジェクト628日目。
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2020/3/28 628日目
■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71%
■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中
158ページ中50ページくらい了
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kindleでは「セノイピープル」「バスストップ」「悲しきウスバカゲロウ」が読めます→
『僕を知らない君へ』オープニング 1日目









