その素っ裸の姿は、
僕には、悲哀にはとても見えません。
ただ、醜くて、
ひからびた蟷螂かなにかに見えるのです。
それが、もごもご口を動かして、
哀願しています。
僕はひとつ身震いしました。
悪いことしている気には、
残念ながら全然なれそうもありません。
「お願いじゃから、
せめて下着だけでもおいてかないかね、
わしにこれでどうしろうと、」
追いすがる老婆、
僕は心のうちから湧き出てくる、
どうしようもない身の震えを
抑えることができません。
それは、僕の悪の心、
歯の奥が、かちかちとなります。
「うるせえな!」
一喝すると、
次の瞬間には、
なんの抵抗もできない老人を
「あ、どこ行くの?」
サトちゃんが
手を上げました。
僕は、
「うるせえんだよ、
どいつもこいつも!」
僕は覆いかぶさるようになったサトちゃんに
勢いよく体当たりをくらわせると、
そのままさっき登ってきた
ぼろぼろの木の階段を
駆け下りていきました。
いくつか、朽ちかけた板敷きを
踏み外したかもしれません。
何度か足をとられましたが、
それでも、
転げるようにして階下へ降り立ちました。
まだ、外は夜更けでした。
月明かりは
あいかわらず煌々と周囲を照らしています。
さて、どこへ行こうか、
僕は静かなあたりを睥睨します。
その時でした。
黒い、大きな人影が、
音もなくあらわれました。
少しだけ、後ずさりします。
「おい、お前、なんてことする」
低くしわがれた声、
そう、いつのまにか消えた、
あの、ヘルメットおじさんが、
立ちはだかっていました。
「やるのか!」
怯みかけた自らの心を鼓舞して、
僕は大声で叫びました。
それは夜空をつらぬく、獣の咆哮のように、
自らの耳の奥にこだましていました。
そう、
肝心の「羅生門」の、
ラストシーン、その本当に
最後のところが思い出せません。
プロジェクト618日目。
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2020/3/18 618日目
■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71%
■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定
■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中
158ページ中50ページくらい了
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kindleでは「セノイピープル」「バスストップ」「悲しきウスバカゲロウ」が読めます→
『僕を知らない君へ』オープニング 1日目









