「ボディ・スナッチャー/恐怖の街」(1956)

 

SFホラーの古典をDVDで観ました。初見。

 

 

監督はドン・シーゲル。予告編はコチラ

 

病院にいるマイルズと名乗る男(ケヴィン・マッカーシー)が錯乱状態で意味不明の言葉をまくし立てています。駆けつけた医師が彼の経験談に耳を傾けると・・・。サンフランシスコ付近の小さな町サンタ・ミラで開業医を営んでいるマイルズが学会を終えて地元に戻ってくると、一見変わらないように見える町並みや人々がどこかおかしいなと感じます。まあ、そんなことよりも、元カノのベッキー(ダナ・ウィンター)が離婚して出戻ってきたというんで、バツイチのマイルズはヨリを戻そうとやる気マンマンです。ベッキーもまんざらじゃない様子。しかし、自分の母親が別人だと言い張るガキや、叔父が本人じゃないような気がすると嘆く知人女性が現れたため、戻ってきた時の自分の違和感を思い出します。それでも、ベッキーを夕食に誘ってレストランに行くと、ここ2週間、客がぱったり来なくなったと店長が嘆いていて、やっぱり、この町に何かあったのかもという思いが再燃。

 

その後、知人夫婦の家に呼ばれたマイルズは奇妙な物体を目にします。夫婦の家のテーブルに見知らぬ男の遺体が横たわっていたかと思うと、のっぺりとした顔の男には指紋もなく、これから命が吹き込まれようとしている状態であることに気づきます。やがて、その男は知人の夫そっくりの形態へと変貌。なんじゃこりゃと驚くマイルズは不安げなベッキーをとりあえず自宅に送ります。しかし、帰宅後にイヤな胸騒ぎがしたマイルズがベッキー宅に向かうと、ベッキーそっくりの物体が生まれようとしている様子を目撃。寝ていたベッキーを抱きかかえて自宅に避難させたマイルズ。どうやら、人が寝ている間にその人そっくりの人間が生まれて、その人を乗っ取ってしまう謎の現象がこの町だけで起きているらしいぞと推理。マイルズは知人夫婦の協力を得て、ベッキーと共に町から脱出しようと試みますが、彼ら以外の町人は全て別人に成り代わっていて・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「Invasion of the Body Snatchers」。原作はジャック・フィニイのSF小説『盗まれた街』。「SF/ボディ・スナッチャー」(1978)は観ていましたが、オリジナルは初めて。ネタバレしますが、怪現象を引き起こしている正体は、宇宙から訪れた生命体。ターゲットの人間が眠っている間に、の中で育っている物体がその脳波をぐんぐん吸収して、その人物を完コピしてしまいます。なぜ手の込んだ面倒くさいやり口をするのかはともかく、直接手を下さずに相手が眠るのをただ待つというところに不気味さがあります。フツーの人が別人になってしまう設定は集団ヒステリーやマッカーシズムの暗喩と言われてますが、シンプルな特殊効果と簡潔なドン・シーゲルタッチの演出も相まって、侵略サスペンスとして単純に面白かったです。ちなみに、近しい人物が瓜二つの別人になってしまったと妄想してしまう病気をカプグラ症候群と言うようです。勉強になりました。

 

主演の二人は善良な米国白人然とした雰囲気。マイルズを演じるケヴィン・マッカーシーは本作の影響なのか、晩年はリメイク作やジョー・ダンテ作品に出たりしています。なお、本作のダイアローグ・ディレクターだったサム・ペキンパーがガスの検針員としてカメオ出演しているのは有名な話じゃないでしょうか。終盤の展開はというと、知人夫婦も侵略者のいけにえとなってしまって、孤立した二人採掘場に逃げ込みます周囲を偵察したマイルズ繭をせっせと大量に温室栽培している現場を発見。その間に疲れ切って眠っていたベッキーが別人に変身。愛する人を見限って、全力で逃げるマイルズがハイウェイに飛び出して「次はお前の番だ!」と観客に向って絶叫。で、終わるはずが、別の町への脱出したマイルズの証言によって、脅威が他の町にも及んでいることが分かるエピローグ(と序盤の病院でのやりとり)をスタジオからの要請で追加されたそうです。