「女は二度生まれる」(1961)

 

芸者を演じる若尾文子が楽しめるお話をU-NEXTで観ました。初見。

 

 

監督は川島雄三。予告編はコチラ

 

靖国神社近くの九段あたりで芸者をしている小えん(若尾文子)。この日は一級建築士の筒井(山村聰)という新しいお得意様と一夜を過ごしています。芸者といっても踊りも唄もできず、いわゆる不見転芸者(みずてんげいしゃ)と呼ばれる人で、ザックリ言えば、枕営業で稼ぐ女でございます。美人なのでとにかく売れっ子。若尾文子なら当然です。靖国神社でバイトする大学生純一郎(藤巻潤)にほのかな恋心を寄せる乙女心を持ったりもしますが、基本的には男から男へと渡り歩く毎日で、流れに身を任せて自由気ままに楽しく生きています。寿司屋の板前をしている野崎(フランキー堺)相手をした時には、ちょっと通じ合うところを感じた小えん。馴染みの客である矢島(山茶花究)との箱根旅行の後、野崎が勤める寿司屋に顔を出して誘惑。お仕事と切り離して肉体関係を結びます。ちょくちょくすれ違う大学生純一郎とようやく言葉を交わすも、社会人になるのでバイトを辞めると聞いて寂しくなる小えん。

 

ある日、彼女が通う置屋が売春で摘発されて一時営業停止の憂き目に遭います。元同僚に誘われたままに勤めはじめた銀座のバーで建築士筒井に再会して、彼のお妾さんに転職。唄や踊りを習得させて小えんを一人前のオンナに育てようとする筒井。浮気の虫が騒いだ小えんが映画館で出会った工場勤務の少年と連れ込み旅館でチョメチョメしたことを知って叱責した時も、泣きじゃくって謝る小えんを許してしまいます。小さなアパートで幸せな愛人生活をしばらく送った後、筒井が病に倒れます。本妻の目を盗んで看病に行く小えん。金回りが悪くなった筒井を見て、ひさびさに芸者仕事も再開。小えんの復帰を知ったスケベジジイの矢島にまた夜の関係を求められます。社会人になった純一郎とも再会。座敷に指名されて喜ぶものの、彼が接待している相手の性接待要員に小えんをあてがおうとしていることを知ってショックを受けます。さらには筒井が急死したことを知った小えんは・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1961年7月28日。原作は富田常雄の『小えん日記』。同時上映は、謝国権の原作ベストセラーのハウツー本「性生活の知恵」をオムニバス劇にした同名映画というカップリング。戦争で両親を亡くして以来、一人で生きる女性が自分のカラダ一つを武器にした芸者としてのらりくらりと生きている様子を描いたお話で、身を落としてふしだらな生活をしているといったジメジメとした描写じゃなく、"二号"と罵られてもあっけらかんとしているところが印象的。いきなり夜の寝室から映画はスタート。その後、上田吉二郎潮万太郎も若尾文子のカラダを狙います。いろいろあった挙句、愛人の死を迎えて少年と傷心旅行に出かけようとする小えん。電車内で幸せな家庭を築いている元板前と偶然の再会。ここで、ようやく自分を見つめ直したのか、少年とは別れて人生を再出発しようとする姿を遠巻きに眺める映像で映画は終わります。ラストシーンが二度目に生まれた瞬間なのかも。

 

取るに足らない女の物語ですが、若尾文子様が演じているんで、直接的なエロシーンがなくても十分に見応えあり。川島雄三は本作で若尾文子を女にすると言い放ったらしいです。入院中に下の世話までしてもらえる山村聰がうらやましい限りのイイ女っぷりでした。他に、小えんと同じアパートに住むイマドキの女子大生役で江波杏子が出演。若尾文子とペッティング談義で花を咲かせます。山村聰の正妻役が山岡久乃で、娘役の高野通子という女優さんがとても可憐。同じ置屋にいる芸者役で出ていた山内敬子という女優さんがとてもキレイでした。あと、(市川)雷蔵の映画を観に行く、橋幸夫の『潮来傘』や渡辺マリの『東京ドドンパ娘』を鼻唄で口ずさむ、「荒野の七人」のポスターが貼られているといったシーンに当時の風俗がうかがい知れます。それと、家庭用のクーラーがまだ普及していない時代なので、いたるところで扇風機が映っているのも目を惹きました。このシーンでの寿司屋の板前は中条静夫です。