「赤い天使」(1966)

従軍看護婦の若尾文子が体を張る映画をAmazonプライムビデオで観ました。

 



監督は増村保造。予告編はコチラ

 

1939年、日中戦争下で従軍看護婦として中国・天津の陸軍病院に赴任した西さくら(若尾文子)。日常の激務だけでも大変なのに、入院中のヒマを持て余す傷病兵たちにレイプされてしまいます。しばらくして、前線に送られた西は、さらに重傷だらけの傷病兵で溢れる凄惨な現場で働くことに。 以前自分をレイプした主犯と再会するも、戦線で受けたダメージで瀕死の状態、西の懸命の治療も及ばずに死亡。この地で医療現場を仕切って、患者の手足をバッサバッサと切り落とす冷徹な岡部軍医(芦田伸介)と出会います。陸軍病院に戻った西はかつて岡部軍医に命を救われた兵士、折原(川津祐介)の看護を担当。手術で両腕を失って性行為ができなくなった折原を不憫に思って、葛藤の末に体を提供する西。献身的にもホドがあります。ただ、これが人生最後の幸せな瞬間だと悟った折原は翌日、遺書を残して病院の屋上から飛び降り自殺します。

別の前線に出向くと、また岡部軍医がいました。過酷な手術に忙殺されながらも常に冷静に対応して、ときに人間味ある判断を下す岡部軍医に西は惹かれていき、岡部も献身的な西に想いを寄せていきます。戦況はさらに悪化、岡部軍医は西を連れて、さらに激しい前線での医療活動に向かうと、そこは従軍慰安婦がコレラに罹って周囲に蔓延した集落。それでも治療を続ける岡部が精神の安定を保つためモルヒネを常用した副作用で性的不能に陥っていることを知ると、西は荒療治で性的機能を復活させて愛し合います。二人が結ばれた日、中国軍の総攻撃が始まり、部隊は完全に包囲されてしまい・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1966年10月1日。同時上映は「殺人者」。1人の従軍看護婦の凄絶な体験を通じて伝わる戦争の過酷さと、そこで芽生えた激しい愛を描いた異色作。後年、上映されたおフランスでの評価が高いそうです。声高に反戦を訴えるでもなく、ただただ戦地で起きていたかもしれない非日常な日常を綴っています。直接的ではないものの、えげつないシーンが盛り沢山。病院内の患者以上に溢れかえる外にある死体の山、手足を切断するときのノコギリでギコギコする音、切断された足が収納されたゴミ箱など。終盤に少しだけある戦闘シーンがなくても、病院での様子だけで戦場の悲惨な状況が伝わります。

 

あとは、美しい若尾文子をめぐる性描写の数々が鮮烈。赴任して数日後に凌辱されるのも衝撃ですが、両腕のない兵士のために過剰な性的サポートを実行するのもビックリ。手が使えない兵士に代わって、自分の手で兵士のイチモツを慰めてあげる西。さらに休日に外出させてホテルに連れ込んで自分の体を捧げます。モルヒネの禁断症状が出た岡部を縛って、症状が無くなるまで暴れる岡部の体を懸命に押さえて治療する西。機能が戻った岡部とは激しく燃え上がります岡部の軍服を着てイメージプレイをしてる時に中国軍が来襲、死を覚悟してお互いにキスマークを付けて戦地に出向く二人。岡部の前では、自分のことを「西は・・・」と言って語るのが妙にエロティック。岡部は戦場で息絶えてキスマークを丸出しにして死んでいきます。グロとエロのエピソードの羅列だけで戦争の異常さが伝わる、なかなかにショッキングな映画でした。