「兵隊やくざ」(1965)

 

勝新と田村高廣が軍隊ハラスメントを生き抜く戦争映画をAmazonプライムビデオで観ました。初見。

 

 

監督は増村保造。予告編はコチラ

 

時は第二次世界大戦中の1943年。旧ソ連との国境付近の"孫呉"に駐屯している関東軍。そこに、幹部候補生試験をわざと落第して、退役の日を待っているインテリ男の有田(田村高廣)がいます。ある日、大宮貴三郎(勝新太郎)というヤクザ者が入隊。この地に赴任している兵としては最古参の有田上等兵が、新人の大宮の指導係に任命されます。大宮の生意気そうな態度は歩兵の上官からの反感を買い、砲兵隊とのトラブルも勃発。その都度、有田がフォローして、大事には至らないように場を収めて、ときには大宮に反撃させる機会を与えて暴れさせることも。


実際、トラブルのほとんどは上官による理不尽な暴力が原因で、大宮に非はありません。「無理が通って、道理が引っ込む」のが軍隊なんだと有田は大宮をなだめますが、曲がったことが大嫌いな大宮にもガマンの限度があります。その後も、大宮にやっつけられたことをずっと根に持つ砲兵隊とまた大喧嘩したり、外出禁止を破って将校専用の芸者屋に入り浸ったり、ヤンチャを繰り返す大宮。それでも、常にかばってくれる有田を慕う大宮。ボーイズラブの匂いがプンプン漂います。やがて戦況は悪化。兵士全員が前線へ向かうことになって、有田が希望していた満期除隊の可能性は消えてしまいます。有田への恩返しをしたいと思う大宮は、大胆な脱走計画を実行しようと企てるのですが・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1965年3月13日。同時上映は市川雷蔵主演「若親分」。好評につき、第9弾まで製作された人気シリーズ。たしかに面白いです。有田上等兵が戦時中を振り返って、規格外の男がいた思い出を語る形で物語は始まります。死骸となった兵士をバックにタイトルが表示。根底にあるのは、反戦の想い。とにかく、上官がちょっとした理由をつけて、ビンタやグーパンチで部下をぶん殴るので、100回くらい拳が飛び交います。殴られながらもジロッと相手を睨みつけて耐え抜くのが、勝新演じる大宮。耐えるターン、反撃するターン、またイジメられるターン、再度やり返すターンを繰り返すので、イライラとスッキリを交互に味わえます。ほど良いタイミングで留飲を下げる展開が絶妙。脚本(菊島隆三)の力か、演出(増村保造)の上手さか。

 

勝新がたまに見せるお茶目な表情が実にキュート。モチモチの素肌にウットリする人もいそうです。一匹狼の「座頭市」、後輩との名コンビの「悪名」に続く、三大当たり役の一つといえるのもうなずける愛すべきキャラクター。戦争嫌いで理知的な田村高廣も好演。豪快な大宮と繊細な有田のコントラストがちょうどいいバランス。もう離れたくない二人は一緒に逃げようと誓います。大宮と有田に味方する芸者、音丸役の淡路恵子もイイです。凛とした色気がありました。他には、慰問に来た浪花節のお師匠さん役で山茶花究、兵隊の1人で成田三樹夫がシレッと出演。楽しませながら戦争・軍隊の愚劣さもきちんとインプットさせてくれるあたりは娯楽映画の鑑。よりコミカルになっていくらしい続編以降もいずれ観てみようと思いました。