「妻は告白する」(1961)

 

若尾文子が罪を告白するのかどうかが気になる映画をAmazonプライムビデオで観ました。初見。

 

 

監督は名コンビの増村保造。予告編はコチラ

 

夫の殺害容疑で裁判中の妻、滝川彩子(若尾文子)。夫婦と妻の愛人と噂される若い男との三人で行った登山の絶壁での出来事。夫が足を滑らせて、妻と夫が宙づり状態に。最上部にいた若い男が必死にザイル(登山用ロープ)で繋がる二人を支えるも、真ん中で踏ん張る妻が耐え切れずにナイフでザイルを切ってしまい、妻の下でぶら下がっていた夫落下して死んでしまいます。死んだ男は大学の薬学部の助教授滝川(小沢栄太郎)。彼を担当顧客としているのが製薬会社社員の幸田(川口浩)。夫への営業だけでなく、自宅にいる妻への面倒も小まめに見ていたため、夫も含めて周囲は妻と幸田がデキていると疑われていました。貧しかった彩子は経済的安定を求めて滝川と結婚しており、家政婦代わりしか思っていない滝川との関係はすでに冷え切っていたという状況もあり、妻がザイルを切ったのはやむを得ずだったのか、わざとだったのかが裁判の争点になっていました。最近になって夫に五百万円の生命保険が掛けられたことも疑いを大きくする要因となってます。

 

すぐにでも離婚して新しい男と一緒になるために仕組んだ殺人であったこと、夫の死体を看取った時に涙一つ見せなかったこと等が有罪を主張する検察側の言い分、一方、若い幸田は婚約者(馬渕晴子)がいて妻に対して恋愛感情は持っていなかったこと、妻自身も自分の生命を守るためのやむを得ぬ行為だったこと等が無罪を主張する弁護側の言い分。マスコミが面白半分に妻を殺人者目線で書き立てるのにも理由があって、裁判中にも関わらず、何かと幸田と二人きりになりたがる彩子とそれに従ってしまう幸田の態度を見て、担当弁護士も幸田の婚約者すらも二人の間に恋愛感情があるのではと勘繰る始末。言い寄られるとその気になってしまう色気を放つ彩子の魅力が疑わしさを増長させています。果たして彩子に殺意はあったのか、幸田との恋の行方はどうなるのか・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1961年10月29日。同時上映は「献身」。ストーリーのネタバレをすると、裁判で無罪になった後、保険金で高めのアパートを借りて幸田との新生活を始めようとする彩子。保険金に手を付けたくない幸田とケンカになり、幸田を選んだがためにザイルを切って夫を殺したとつい告白する彩子。ドン引きの幸田は少し距離を置こうと彩子と別れて地方に転勤することを決意。どうしても離れたくない彩子は幸田の会社に押しかけて、たまには会ってほしいと再度懇願します。申し出を拒絶して去っていく幸田。幸田と会う約束だった婚約者の姿を見かけて絶望した彩子は会社のトイレで服薬自殺を図ります。死に顔を見た幸田と婚約者。本気で人を愛した彩子の行動を同じ女として理解できること言い放ち、あなたは誰も本気で愛したことがないとディスられて婚約者に去られてしまう幸田。最後は永遠の眠りにつく彩子の姿を映して終わりました。

 

抱き合ってるところを家政婦には覗かれるわ、裁判中に幸田の自宅に行くわ、判決が出る前日に二人でバカンスに出かけるわ、とにかく脇が甘すぎる彩子と幸田の行動にイライラ。一途な彩子もどうかしてますが、終始優柔不断な態度の幸田にも問題があります。通俗的なメロドラマですが、検事に追及されてうなだれる若尾文子、かと思ったらジロリと睨む若尾文子など、いろんな表情の若尾文子を楽しめるのが本作の最大の見どころ。イヤな夫役の小沢栄太郎は安定の憎たらしさ。他には、検事役に高松英郎、弁護士役に根上淳など。セット撮影とロケ映像を組みわせたという登山シーンはかなりリアルな出来。あと、幸田が務める製薬会社は中外製薬の設定っぽいです。タイアップかな。