「越前竹人形」(1963)

 

水上勉原作の若尾文子主演映画をU-NEXTで観ました。

 

 

監督は吉村公三郎。予告編はコチラ

 

昭和初期の福井県武生の集落。竹細工の名人、喜左衛門を失った一人息子の喜助(山下洵一郎)の元に突然京美人が訪れます。喜左衛門に世話になったという芦原温泉の遊廓に働く遊女玉枝(若尾文子)です。父の墓前で手を合わせてすぐ去っていた玉枝が忘れられない喜助は、しばらくして芦原温泉を訪ねます玉枝の部屋には、喜左衛門の作った玉枝をモデルにし竹人形が飾られてあり、出来栄えの良さに感動します。改めて玉枝に惚れた喜助は、百五十円の大金を苦面して嫁になってほしいとプロポーズ。喜助の純粋な申し出に心打たれた玉枝は、しばらくして喜助の家に嫁いできます。初めて喜助の家に訪れた時の玉枝をモデルにした竹人形作りに没頭する喜助。優しく接してくれる喜助ですが、結婚以来、指一本触れようとしない喜助に不満を募らせていく玉枝

 

やがて、喜助の竹人形は完成。郷土民芸展で県知事賞を受賞、京都の老舗工芸店が「越前竹人形」として売り出したいと買い付けにやって来ます。喜助が不在中に来訪した工芸店の番頭の崎山(西村晃)は喜助の妻を見てビックリ。玉枝が京都島原の遊郭に勤めていた頃の常連客だった崎山と旧交を温める二人。というわけにはいかず、エロ心が再燃して玉枝に襲いかかる崎山。玉枝の必死の抵抗もむなしく・・・。越前竹人形の売れ行きは好調で、数か月後には数人の弟子を抱えるようになったものの、依然として玉枝と肉体関係を結ぼうとしない喜助。しかし、再び芦原に遊びに行った際に玉枝の同僚だったお光(中村玉緒)から玉枝と父の間には肉体関係がなかったと聞いて、急に心変わり。これからは妻として愛することを玉枝に誓います。そんな矢先、玉枝は崎山の子供を宿してしまったことを知ってしまって・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1963年10月5日。同時上映は市川雷蔵主演の「妖僧」。水上勉の同名小説の映画化。山村竹林雪景色若尾文子。これだけで映画になっています。撮影は宮川一夫。蚊帳越しのショット等、美しい映像だらけ。雷鳴が轟く中光と共に姿を現す若尾文子のショットも鮮やか。端正な画作りに定評がある大映スタッフの丁寧な仕事が光ります。童貞をこじらせた男の屈折した愛情と皮肉な運命に翻弄された女性の物語。尊敬する父が贔屓にしていた遊女に心を奪われるも、父のお手つきだというわだかまりがどうしても消えません。玉枝を妻にしても関係を拒んで、竹人形作りに情熱を傾ける喜助。母として慕っていますと拒絶されてショックを受ける玉枝。性的な魅力を感じてないわけではなく、玉枝の入浴姿見てコーフンしてしまった気持ちを断ち切るように竹人形をぶっ壊して、夜の田舎道を走り出す喜助。ようやく夫婦として一緒に歩もうとなった時に、違う男の種で妊娠してしまったことに気づく玉枝。

 

終盤のネタバレをすると・・・、喜助にウソをついて堕胎のために京都に行った玉枝病院を紹介してもらおうと訪ねた玉枝に旅館を紹介したついでにまた襲いかかる崎山。西村晃がゲスの極みです。他のツテを頼って古巣の遊郭を炎天下の中を歩き回っているうちに具合が悪くなって、渡し舟で悶える玉枝。意識を失くしている間にお腹の子供を始末して川に投げ捨てちゃったよと船頭(中村鴈治郎)に聞かされる玉枝。短い出番ながら、いつもと違うセリフ回しで強烈な印象を残します。結果的に妊娠の事実を隠蔽することに成功して武生に戻った玉枝は、体調を壊して急死してしまうというエンディング。喜助もその後を追って自殺したというナレーションがあって映画は終わりました。他に、寺の住職役で殿村泰司、医者役で浜村純、馬車の運転手役で伊達三郎なども出演。ダウナーな内容とキレイな映像とテンポ良い演出が噛み合ってない印象を受けますが、若尾文子の美しさだけでずっと観ていたくなる映画でございました。