「ロードゲーム」(1981)

 

トラック運転手が連続殺人事件に巻き込まれる脱力系スリラーをU-NEXTで観ました。初見。

 

 

監督はリチャード・フランクリン。予告編はコチラ

 

オーストラリアの田舎。40代の中年トラック運転手のパトリック(ステイシー・キーチ)ペットのディンゴと車内泊をしています。目の前の安宿にヒッチハイクガールを連れて入っていく緑色のバンに乗った男の後ろ姿を見て、俺があの女を乗せておけばよかったとブツブツ独り言。安宿の部屋では、男がハリガネっぽいモノで絞殺していました。そんなこととはつゆ知らず、翌朝トラックで目覚めたパトリック。安宿の部屋からこちらを覗いている"緑バン野郎"の影に気づきつつも、トラックを走らせます。今日のお仕事は、冷凍した豚肉の輸送。道中で、新婚夫婦初老夫婦おっさんなどの車を見かけてまたブツブツと独り言。ラジオでは女性が連続して行方不明になっている事件を報じてもいます。夫とはぐれてヒッチハイクしてきた初老夫婦のおばさんには、連続誘拐犯だと疑われる始末。

 

道路沿いで緑バン野郎がスコップで何かを土の中に埋めている姿を見かけると、緑バン野郎は慌てて車で立ち去ります。ロードハウスに立ち寄っている間には、車に置いていたディンゴを緑バン野郎が痛めつけた形跡も発見。トラックで後を追うパトリックは逃してしまいます。やがて、パトカーがやって来て、警察にも容疑者だと思われます。その後、ヒッチハイクで拾ったパメラ(ジェイミー・リー・カーティス)が同乗。連続誘拐犯ニュースに関心を持って、一緒に犯人捜しをしはじめます。ガソリンスタンドで停まっていた緑色のバンを発見すると、無人の車内にこっそり侵入していろいろ物色するパメラ。しかし、パトリックが目を離したスキに、パメラと彼女を乗せた緑色のバンの姿は消えていました。果たして、パトリックは緑バン野郎を捕まえてパメラを救うことができるのか・・・というのが大まかなあらすじ。

原題は「Roadgames」。当時は低予算だったオーストラリア映画としては異例の175万豪ドル(4億円以上)で製作されたスリラーで、国内では大ヒット。監督のリチャード・フランクリンは南カリフォルニア大映画学科卒でジョン・カーペンターと同窓生。「ザ・フォッグ」の撮影見学時にステイシー・キーチと知り合ったのが映画に出演してもらうキッカケで、ジェイミー・リー・カーティスもカーペンター繋がり。ヒッチコック好きの監督が「裏窓」にヒントを得て、移動する車に乗りながら事件の真相を追う男に設定を変えた脚本作りをしたとのこと。どちらかというと、スピルバーグの「激突!」のトラック運転手を犯人捜しする側に置き換えた内容に感じます。本作の手腕を買われて、「サイコ2」でハリウッドデビューをすることになります。

 

だだっ広いオーストリアの風景、のんびりとしたBGM、ゆる~いユーモア交じりの会話劇ダラダラしたカーチェイスに、手堅いサスペンス演出テクニックの断片を盛り込んで、シリアスとコミカルの間を行ったり来たりする亜空間へといざなう不思議な手触り。20人の女性を絞殺して荒野に埋めている犯人なのに、猟奇的な怖さを全く感じさせません。ガサツな運転手のように見えて、詩人のフレーズを引用するなどインテリ要素を持っている中年男を演じるのがステイシー・キーチ。拾ったジェイミー・リー・カーティスいい雰囲気になる瞬間がちょっとだけあります。攫われてからは終盤まで出番がなく、スタイルの良さを見せびらかすサービスショットもなし。連続殺人鬼をめぐる会話の中で、実父トニー・カーティスが主演した「絞殺魔」をネタにした楽屋オチもあり。ラストにちょっとしたサプライズもあるヘンな映画でした。