「スライ: スタローンの物語」(2023)

 

スタローンの回顧録をNETFLIXで観ました。

 

 

監督はトム・ジムニー。予告編はコチラ

 

シルヴェスター・スタローンが自らの人生を幼少時から振り返るドキュメンタリー。ヘルズ・キッチンで生まれて、退学を繰り返す問題児だった少年時代。はスライには厳しく当たって、死ぬまで確執があったようです。父の影響でポロをしていたエピソードも紹介。やがて、演劇に興味を持って、ニューヨークからハリウッドへ。まともな役だったのは「ブルックリンの青春」くらいで、チンピラのチョイ役ばかり。自分の役は自分で作るしかないということで脚本執筆に精を出します。その中で生まれたのが「ロッキー」。最初は暴力的な内容だったのを恋人の助言を生かして恋愛要素を追加。「ミーン・ストリート」(1973)「波止場」(1954)のエッセンスも取り入れた内容に修正。自分が主演することを条件に低予算で作られた映画は、試写会では最初の20分で観客の3/4が席を立ったものの、いざ公開されると負け犬ロッキーの戦いが共感を呼んで絶賛の嵐。アカデミー賞作品賞を獲得して、一躍時代の寵児となります。

 

その後の「フィスト」「パラダイス・アレイ」は佳作ながらも興行的には不評。その挫折の経験をストーリーに盛り込んだ「ロッキー2」で息を吹き返して、次の鉱脈である「ランボー」シリーズを掘り当てて、筋肉と暴力のインフレをシュワルツェネッガーと競った1980年代。それから、コメディと荒唐無稽アクションで迷走する期間が続いて、秀作「コップランド」などがあり、自分の専門分野を極めるべきだと悟って「ロッキー」「ランボー」シリーズに回帰。消耗品たちを集めた「エクスペンダブルズ」シリーズをスタートさせてといった具合で、これまで駆け抜けていったキャリアについての回想、家庭をないがしろにしてしまった後悔、人々に希望を売る仕事をするために可能な限り前を見て走り続けていきたいという展望など、キャリアの終盤を迎えた現在の心境を正直に語る・・・というのが大まかなあらすじ。

 

初めてハリウッドで住んだ家の通りの名前が"バルボア・ブールバード"だったということ、蘇った保安官がならず者を撃ち殺す内容の自主サイレント短編映画「ホース」を無名役者時代に仲間と作っていたことは今回初めて知りました。「偉大になれたはずと幻想を抱き続けるよりも、そのチャンスを掴んでその上で失敗した方がいいだろ」というスタローンの言葉が印象的でした。あと、好きな映画として「冬のライオン」(1968)を挙げていたのは意外。他に、家族のエピソードを実弟のフランク・スタローン「ロッキー」について語るのはタリア・シャイア、一映画ファンとしてスタローンを語るクエンティン・タランティーノ、良きライバルとしてスタローンの偉大さを語るアーノルド・シュワルツェネッガーなどが本作用にインタビューに答えてくれています。スタローン映画と共に歩んだ人には必見のドキュメンタリーだと思います。