「怪談昇り竜」(1970)

 

任侠映画と怪談をミックスさせた異色作をAmazonプライムビデオで観ました。

 

 

監督は石井輝男。予告編はコチラ

 

郷田組への討ち入りで、組長の妹藍子の目を斬ってしまった関東立花一家二代目の立花明美(梶芽衣子)。それ以来、ムショに入ってからも藍子のそばにいた黒猫に呪われる日々。三年の刑期を終えて出所した明美は、立花一家の縄張りを狙って抗争を仕掛けてくる土橋組に頭を悩ませていました。明美のケンカの助太刀をした谷(佐藤允)が立花一家の客分になって、明美を慕うムショ仲間の女たちが子分志願でやって来た頃、謎の盲目の女(ホキ徳田)が土橋組の用心棒になります。時を同じくして、立花一家の子分や女たちが猫に憑りつかれて死んでいくようになり、黒猫の呪いが本格化してきたと感じる明美。やがて、土橋組の裏工作によって、縄張りを奪われる事態が発生。

 

ほとぼりが冷めるまで、ムショ仲間の女たちと子分の寛吉(砂塚秀夫)を連れて旅に出た明美。立花一家の縄張りを手にしたのは、土橋組と内通していた立花一家の古株子分の達(大辻伺郎)でした。土橋組の威光をちらつかせて威張り散らす様子を見て、明美の叔父貴分で現在はカタギとして小料理屋をやっている三井(加藤嘉)が、雲隠れしている明美に便りを送ります。明美たちが戻って来た時、三井は達に殺されて、三井の娘は土橋組親分(安部徹)に拉致されていました。安部徹は、女をアヘン漬けにして手籠めにする趣味があるヘンタイ野郎です。全ては土橋組の悪巧みだと知った明美は、女子分たちと佐藤允を引き連れて土橋組に殴り込みに行くのだが・・・というのが大まかなあらすじ。

 

劇場公開は1970年6月20日。任侠映画のフォーマットに、黒猫の呪い、見世物小屋暗黒舞踏の土方巽も盛り込んでいて、サービス過剰な石井輝男ワールドを楽しめます。1990年代に初めて観た大井武蔵野館以来の観賞。明美は竜の頭の刺青を背中に彫っていて、子分たちが胴体と尻尾の刺青を背中に入れています。みんなが横一列に並んで背中を露出すると、一頭の竜になるフォトジニックチャンスが到来。ムショで明美に心酔した女たちも胴体の刺青を彫っています。なので、いちいち横に並ぶシーンが多いことだけはずっと覚えていました。殺された加藤嘉が急に目を開けて復活&生首ゴロリシーン、愚連隊役の内田良平Tバックシーン水責め拷問シーンなど、あってもなくてもどうでもいい場面もふんだんに用意されてます。

 

若くて美しい女ヤクザ、盲目の女性、主人公自身による主題歌などなど、東映のヒットシリーズ"緋牡丹博徒"を意識した内容なんですかね。前年に扇ひろ子主演、石井輝男監督で作られた「昇り竜鉄火肌」のコンビで続編を予定していたところ、扇ひろ子がレズビアンの恋人とどこかに逃げてしまう事件を起こして降板、代役で梶芽衣子が主演となった経緯があるそうです。日活時代の梶芽衣子はややポッチャリしていて、可愛らしさがありますね。決め顔が絵になるところはさすが。彼女に復讐するために殺しの腕を磨いて、ふだんは手裏剣大道芸をしている盲目の女役がホキ徳田。こちらもプロの俳優とは違う異質の存在感を醸し出していて、二人のクライマックスの対決も見どころあり、といいたいところですが、殺陣シーンはわりとテキトーに撮っています。各場面の面白さ優先で、勢いとノリだけで作られた珍品だと改めて思いました。あと、この女優さんがキュートでした。