「ベター・コール・ソウル」シーズン4

 

Netflixで、ようやくシーズン4の視聴完了。

 

 

来年配信されるシーズン6で「ブレイキング・バッド」(2008-2013)の直前まで到達するならば、シーズン4は後半戦スタートとなります。長らくの間、映画こそがあらゆるジャンルの物語を作る人たちが集まった最上のコンテンツでしたが、アメリカでは、優れた才能がTVドラマの方に流出してしまって、特に人間ドラマを描くことにおいては、ここ数年で、完全にTVが映画を超えてしまいました。ネット配信ユーザーの増加もその流れに拍車をかけました。アカデミー賞が海外作品やマイノリティの才能を評価する場にシフトチェンジしてきてることもその影響かも。せいぜい3時間の映画に比べて、時間を長く使えて人物を重層的に描ける点が大きいと思われます。このドラマシリーズもドラマ史上に残る傑作と言われているだけあって、語り口や撮影、編集、音楽などあらゆる面でシーズンを追うごとにクオリティが高まっていくことを実感します。

 

シーズン4では、ジミーキムマイク、そしてチャックに代わってガスがメインキャラとなって、それぞれの行動や心の動きを丁寧に描いていました。それにしても、前日譚として後付けで考えたドラマシリーズなのに、「ブレイキング・バッド」にうまく話がつながるように、主役キャラを含めた20人くらいの登場人物たちのエピソードを自然に積み重ねていく緻密さに驚きます。

 

ジミーは弁護士資格停止期間の仕事として、携帯電話販売店の従業員になります。犯罪者の使い捨て携帯として夜の街で手売りすることを思いついて実行、売れ行きは上々、調子に乗って最終的にチンピラに売上金をカツアゲされるとろまでのセットがジミーらしいです。キムは大手銀行クライアントに専念すればいいものの、生来の正義感ゆえ、貧しい犯罪者を助ける公選弁護人との両立を図ろうとしたり、厄介な同棲相手のジミーのフォローも含めて相変わらず、精力的にがんばっていました。ジミーに釣られて、法律スレスレのズルい行いに手をつけ始めたことが少し気になります。

 

マイクの方はガスの指令をこなす役回りになっていて、今シーズンでのミッションは、あの地下の麻薬製作所建設作業。建設に携わるスタッフ集めの仕事っぷりがプロフェッショナルで渋いです。ナチョの策略で瀕死の重傷を負ったヘクターはようやく意識を戻して右手人差し指でしか意思表示できない状態になってから、ベル鳴らしおじさん誕生の瞬間を迎えます。ナチョの出番は後半少なめ。メキシコからやって来たサラマンカファミリーの新たな刺客が今後、ガスと対決しそうな予感です。三人目の麻薬製造人が初登場したのもこのシーズン。あとは、チャックを失った後のHHMの勢いと共同経営者ハワードの覇気もなくなってきていました。

 

第6話の演出は「ファインディング・ニモ」(2003)等で有名なアンドリュー・スタントン。映像面では、第7話の分割スクリーンを使ったオープニングシーンと最終話のマイクによる後始末シーンが印象的でした。特に後者は屈指の名シーン。その後の場面でジミーの弁護士資格の復活が決まって、シーズン5からはソウル・グッドマンとして活動していくことを示唆してシーズン4が終わりました。

 

「ベター・コール・ソウル」シーズン1(2015)

「ベター・コール・ソウル」シーズン2(2016)

「ベター・コール・ソウル」シーズン3(2017)