先輩の入試日、えりぃは受験校の門の前までついて行き、先輩に学業で有名な神社で買ったお守りと、お手製のお守りを渡し、「頑張ってください」と伝えた。
先輩は二つのお守りを大切そうに握り、「ありがとう、絶対受かってみせるよ!」とガッツポーズを見せ、会場に入っていった。

えりぃは小さくなる先輩の背中を見届けながら、先輩の合格を自分のこと以上に願っていた。

受験が終わって合格発表までは先輩とは会わなかった。それは、えりぃ自身がちょうどアンサンブルコンテストの練習で忙しかった、ということもあるが、自己採点の結果も出ているだろうし、合格発表の日までお楽しみ(になるかどうかはわからないけど)にしていた。

そして、合格発表当日。
えりぃは先輩と一緒に番号を見に行った。
見事、第一志望校に合格していた。先輩は嬉しさのあまりか、思わずえりぃに抱きついた。

えりぃが「ぇ、ぇっと、先輩……」と戸惑っていると、先輩は気がついたようにえりぃを離し、
「ごめん、つい嬉しくて」
と顔を赤らめあがら言った。

「先輩、おめでとうございます!私もうれしいです!」
えりぃは改めて祝福の言葉を言った。
すると先輩は、

「ここまで頑張ってこれたのも村上さんのおかげだよ。
合格したら言おうと思ってたんだ。
村上さん、
付き合ってくれませんか?」
それ以降、えりぃは毎日先輩を目で追うようになっていた。
仲の良いホルンの先輩に、「あの先輩って彼女いるんですか?」と聞いて、彼女がいないことを知るやいなや、先輩を食事に誘ったらしい。
えりぃらしい、積極的な行動だ。
口実は、「勉強でわからないところがあるので教えてください」。

普通なら、受験生の先輩は断るだろうが、その先輩は

「教えるのも勉強になるからいいよ」

と、快く引き受けたらしい。

それからというもの、えりぃは何度か先輩と一緒に「勉強」という口実で図書館デートをしていた。
えりぃが頭良いのもきっとこの時があったからだろう。

デート、といっても、きっと隣同士で勉強して、たまに教えてもらっていただけに違いない。
もし遊んでいたならば、きっと先輩は高校受験に失敗していただろうから。
吹奏楽部は、元々男子が少ない。
パーカッションも、現えりぃの彼氏が男子一人で、男子がドラムを叩いたほうがかっこいいだろう、という結論がパーカッショングループで出て、ドラムに選ばれていた。

演奏開始。
文化祭でやる曲は、コンクールの曲と違い、J-POPなどもやる。そのため、ドラムのソロがあることも珍しくない。
えりぃは、自分のパートのない時、何気なく先輩の方を見た。
ちょうど先輩のソロで、とても鮮やかにドラムを叩いていた。
ほんの少しにじみ出ている汗が照明を反射させ、きらきら光っている。
ソロが終ると、会場内は拍手であふれた。
えりぃも、拍手を叩いている観客と一緒いやそれ以上に感動していた。
初めて見るドラムの演奏。叩いている音。
今までは、後ろからがんがんと響いているだけだったのに。
叩いている人も、こんなにカッコイイだなんて。

その後のパートも、4小節ほど吹くのを忘れていたくらい感動していた(本人談)。