ためらっている私より先に、姉はカチューシャを私の頭につけた。鏡がないのでどうなっているのか自分ではよくわからない。
こめかみ付近が少し痛む。カチューシャを付けるのは初めてに等しい。おそらく、小学1年か2年の頃、母親に無理矢理付けさせられたのだろう、という写真に見覚えがあった。

「うーん、ま、こんなもんかな」

ちょいちょい、と指先でカチューシャを微調節していた。
姉は私より背が10センチほど低いので、腕が疲れたようだった。ふぅ、と一息して、腕をシェイクしている。

「あっそれ、壊したら弁償だからね!じゃ、いってらっしゃーい」

姉は手を振りながらリビングの中へ入っていく。

なら貸すなよ、と思いながらも姉に少し感謝して、玄関を出る。
もうすぐ、私の知らない人に会うんだ。
しばらくこけしのように突っ立っていると、後ろから肩を叩かれた。

「これ付けな」

姉が出したのは、リボンの付いたピンク色のカチューシャだった。
いつも、姉がデートに行く時の3回に1度は付けている、お気に入り(だと思われる)やつだ。

「え…いいの?」

正直、私にはピンクが似合わない、と思っていた。今着ているワンピースは、白のワンピースだ。無難でいいと思ったからだ。御飯がパスタやカレーうどんだったら悲惨だけど。
私は、カチューシャに手を伸ばしながら言う。それでも、迷いがあった。

「あんたそんな頭で行くつもり?これ付ければちょっとはごまかせるでしょ」
麦茶を飲む姉に、「うっさい、デートじゃないわ。たまにはおしゃれしなきゃ女が廃るってやつよ」と言ってやった。

姉はしきりに嘘だ嘘だと連呼して、デェト~デェト~~♪と鼻歌まで歌っていた。
まったく、めでたい頭だ。

髪を巻いたはいいものの、慣れてない私。
なんだか、巻く、というよりも、すずめの巣を作ったみたいにぼさぼさになってしまった。
まぁ、こんなもんか……と、諦めてリビングへ出ると、「ちょっと待ちなさい」という声が聞こえた。姉だ。相変わらず麦茶を手にしている。よく飲むやつだ。

私は嫌な予感がした。どーせ変だのぶすだの似合わないだの、笑いものにするんだろう……。
ちょっと沈んだ気分でいた。姉は、私を引き止めたまま、自分の部屋へ向かった。
私の予想の行動と違ったので、私は姉に言われたとおり、一応待つことにした。