その夜、私はえりぃの彼氏との馴れ初めについて詳しく聞いた。
こうなったのよ、という大まかなことは聞いていたのだが、詳しく聞いたのは初めてだった。
えりぃが私に話すこともなかったし、私も必要以上のことは聞かないようにしていたからだ。
そうしたほうがなんとなくいいのかな、と思っていた。
今夜はえりぃの方から話してくれた。

まず、私とえりぃは吹奏楽部に入る。なんのことはない。一年の時のクラスの担任が吹奏楽部の顧問で、先生に一番近い席に座っていた私とえりぃに入れ入れと言い、言われるがままに入ったのが始まりだった。

一年では裏方やったり、練習ばかりしていて、まともに上級生の演奏する姿は見ていなかった。
二年になった秋、文化祭の時期。

練習では、パーカッションは一番後ろにいるため、叩いている人の姿を見ることは殆どなかった。
私はトロンボーン、えりぃはホルンで、ホルンの方がパーカッションから遠かったので尚更だろう。

そして本番。
本番では、パーカッションの楽器一式を舞台の上に上げるのが大変なので、私たちより下で叩くことになった。
そこでようやく、パーカッションの姿が見れるようになった。

シンバル、タンバリン、ティンパニ、グロッケン…。
数々のパーカッションがある。その中に、ドラムセットが目立つ位置に置いてあった。
えりぃは、いつも私と一緒にいるから、好きな彼氏さんと遊べないんだ。
そう思ったら、なんだかとても申し訳なくなってきた。自分でも今更気づいたのか、と情けなくなった。

「私、彼氏に頼んで男の子紹介してもらおうか?あんたさぁ、不細工でもないんだから、普通に彼氏出来ると思うよ?この私でも出来たんだからさぁ……」

そりゃ、えりぃには出来るさ……と思いつつ、

「う、うん……じゃあ、頼もうかな……」

と返事をした。でもそれは、自分自身の彼氏という存在のためじゃなくて、えりぃのため。
えりぃにはいつも好きな人と一緒にいてほしい。
いつまでもえりぃの負担にはなりたくない。
私に彼氏が出来れば、自然とえりぃばかりに頼ることも減るだろう。

それにやっぱり、私にはえりぃのほかに支えとなる人が必要だ、と思ったから。

出来れば、英語の出来る人がいいなぁ、なんて思いながら、私はえりぃの家へと向かった。
「…ぁ、でも明日は昼から……その……でぇと、だから……」

ちょっと言いにくそうだった。そりゃそうだろう。

「別に気にしないでよ!昼には帰るから!むしろ私が気にしなきゃいけない立場なんだからさ!私彼氏いないし!てへ☆」
「あ、ありがと……って、てへ☆じゃないよ!あんたもいつも私にばっか頼んでないで、彼氏の一人や二人作ったらどう?」
「彼氏二人作っちゃっていいの?」
「んもー、そういう意味じゃなくってねぇ!」

えりぃは頬を膨らます。そのしぐさがかわいい、とえりぃの彼氏は思うのだろうか。

えりぃには一つ上の先輩の彼氏がいる。
中学の頃同じ吹奏楽部だった、パーカッション担当の先輩だ。
文化祭でドラムを叩いている姿にえりぃが一目ぼれし、先輩に告白したところ、OKをもらった。
その彼氏を追って、えりぃはこの高校に入った。

私から見れば、「ドラムもできて長身で頭のいいモテ系先輩と、みんなから愛されて頭もよくて可愛い女の子、美男美女カッポー」って感じだ。

だけど、私は……。

今まで、彼氏という存在がいたことはない。
よく言う「彼氏いない歴=年齢」ってやつだ。
でも、彼氏なんていなくてもいつもえりぃが一緒にいた。
だからさみしくなんか……。

ここまで考えて、気がついた。