「どうした?寝た?」

えりぃが聞いてくる。少し、私も考え過ぎていたようだ。

「ううん、寝てない。でも眠いかも。……おやすみ」
「待って、美羽」
「何?」
「私、あんたを一人になんてしないから安心して。あと、明日、彼氏に紹介できる人いないかどうか聞いてみるから」

えりぃに考えていた事を読み取られているみたいだ。
私は態度に出やすいし、えりぃはよく気がつく。
本当にえりぃには頭が上がらない。

「うん……ありがと。本当に、おやすみ」
「おやすみ」

えりぃの彼氏さんには悪いけど、特に期待もしていない。それに、こっちだって今すぐ誰かと付き合いたい、彼氏が欲しい!っていうわけでもないから。
ただ、えりぃの善意を無駄にすることはできないし、えりぃにも迷惑かけていられないので、一応の同意をしておいた。

明日、家に帰って何をしよう、ということだけを考えて、今日は眠ることにした。
昔から、えりぃの家に泊まるとき、えりぃの部屋の床に布団を二つ並べて、二人で寄り添って寝ていた。今日もそうだ。
もう辺りは真っ暗。天井の豆電球だけがオレンジ色を放っていて、目の慣れてきた私には紺色の空に浮かぶ小さな太陽に見えてきた。

えりぃは、手を伸ばせば届く距離、それよりももっと近くにいる。

だけど、あの話を聞いてから、なんだかとてもえりぃが遠くにいるように感じた。

今までは、私とえりぃは隣に並んでいた。
いや、そう感じていたのは自分だけだったかもしれない。
私はずっとえりぃに手を引っ張ってもらっていた。
でも、えりぃは違う。
今まで、自分一人の力で動いて、ようやく、手を引っ張ってくれる人を見つけたのだ。
それもやっぱり、自分の力で。
告白をしたのは先輩の方だった。
私はてっきり、えりぃが告白したものだと思い込んでいたから、その事実を聞いてびっくりした。

「付き合ったきっかけはこんなもん……かな。ごめんね、長々と話しちゃって……。
……美羽?寝てない?」
「寝てないよ!うん、面白かった。何でもっと早く、もっと沢山話してくれなかったの、って思った。そしたら私えりぃのこと応援してたのにさ……。でも、話してくれて嬉しい。ありがと。」
「ごめんね、私こーゆーのなかなか言えなくて……。あんたが初めてだよ、こんなに話したの」

えりぃは恥ずかしくなったのか、布団を両手でぎゅっと握って上にあげ、顔を鼻まで隠した。可愛い奴め。
今までだって、えりぃと一緒にいてこんなに可愛らしい姿をみたことなんてほとんどないに等しい。
いつもえりぃは強気で、私のこともばしばし叩くし、明るいし、堂々としている。
よく、人は恋をすると変わる、というが、身近にその例がいるものだなぁ、と実感した。