やしゃご
『アリはフリスクを食べない2024』
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2024年11月14日(木)~24日(日)
劇場MOMO
作・演出:伊藤毅
照明:伊藤泰行
音響:泉田雄太、秋田雄治 音響操作:大園康司
美術:谷佳那香 舞台監督:中西隆雄
チラシ装画:赤刎千久子 宣伝美術:藤尾勘太郎
写真:坂内太
記録映像:小崎愛美理(フロアトポロジー/演劇ユニット鵺的)、浪谷昇平、戸羽正憲
制作:河野遥(ヌトミック)、河﨑正太郎(譜面絵画)
企画制作・主催:やしゃご
出演:
辻響平[かわいいコンビニ店員飯田さん](知的障害者・城田智幸(39))
海老根理(智幸の弟・城田歩(36))
椎名慧都[俳優座](歩の婚約者・芹舞子(30))
石橋亜希子*(兄弟の幼馴染・西ゆかり(36))
佐藤あかり[俳優座](工場の社長・桜田かおる(38))
尾﨑宇内*(工場の事務、かおるの恋人・仲村千春(33))
小島颯太[俳優座](兄弟の同僚・寺田茂(31))
井上みなみ*(同、障害者・常田加奈子(30))
藤谷みき*(加奈子の母・常田咲江(58))
岡野康弘[Mrs.fictions](グループホーム職員・林保(42))
佐藤滋*[滋企画](303号室の住人・三上)
緑川史絵*(パーティーに呼ばれた客・本物の三上)
*=青年団
STORY
都内郊外マンション。2DK。住人は城田兄弟、兄トモユキ。弟アユム。両親は亡くなっている。兄は知的障がい者である。弟の口利きにより、兄弟ともに工場でバイトしている。アユムの恋人の舞子、幼馴染の西の協力を得て、兄弟は平和に生きていた。兄トモユキの誕生日の二週間前に舞子の妊娠が発覚する。急ぎ、アユムと舞子は彼女の両親に挨拶に行くが、トモユキの障がいを理由に反対される。兄の誕生日当日。工場の皆や友人を交えてパーティーを開く。その日、トモユキが施設に入ることが出席者に露見する。弟は、周りの人間から糾弾される。【公式サイトより】
2014年初演、2019年に再演された作品をブラッシュアップしての再再演。
舞台は城田兄弟が暮らすマンション。
下手側がダイニングキッチン、上手側が和室でベッド、テレビ(ゲームもあり)、本棚が置かれ、襖の奥が智幸の寝室。下手奥に玄関ドア。
再演の際はどうしても城田兄弟に目が行きがちだったが、今回は兄弟の幼馴染・西かおりの思いがより強く伝わってきた。
彼女は恐らく歩に好意を抱いていて、智幸に対しても理解があり、家族になりたがっている。しかし、彼が選んだのは別の女性。親の意向で智幸を施設に預けることにしながらも、家族の一員であるかのような言動を取る舞子のことを快く思わないのは当然のことだろう。自分と一緒になれば、3人で暮らせるのに……そんな思いが胸に去来していたはずだ。
タイトルについて、再演の記事で「アリがフリスクを食べないのと同様、人は自分の身を守るため、平穏無事な生活を送るため、無用な刺激は避けて通る」と書いたが、舞子は歩と結婚したいがためにフリスクを目につかないところに放り投げようとしているとも言える。
とは言え、歩には歩の、舞子には舞子の人生があるので、智幸のために幸せを手放さなければならないとしたら、それもまた違う気がする。その辺りがきょうだい児の難しいところだよなぁと改めて感じた。
キャストは大幅に入れ替わっていたが、上述の西役の石橋亜希子さん、名取事務所『最後の面会』とは正反対の陽気な社長を演じた佐藤あかりさん、飄々とした感じが役に合っていた佐藤滋さんが印象に残った。
再演から続投の井上みなみさんには今回もまんまと涙腺を刺激されたが、「セックスする!」の場面はあんなに周りの反応を気にする演技をされていたっけ? 再演の時はもっと勢いよく言っていた記憶があるけど気のせいかな。
上演時間2時間6分。