劇団チョコレートケーキ『つきかげ』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

劇団チョコレートケーキ

『つきかげ』



2024年11月7日(木)〜18日(日)

駅前劇場


脚本:古川健(劇団チョコレートケーキ)

演出:日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)

舞台美術:長田佳代子

美術助手:安岐祐香
照明:長谷川楓(松本デザイン室)
音響:佐藤こうじ(Sugar Sound)

音響オペレーター:今里愛(Sugar Sound)
音楽:佐藤こうじ(Sugar Sound)
衣装:藤田友 衣装進行:石塚貴恵

ヘアメイク:赤坂街子

大道具製作:Carps、美術工房いろあと

演出助手:平戸麻衣

舞台監督:本郷剛史、小川陽子
タブレット字幕:G-marc(株式会社イヤホンガイド)
宣伝美術:R-design

宣伝衣装:藤田友、石塚貴恵 写真:池村隆司

撮影:神之門隆広、与那覇政之、松澤延拓、大竹正悟、遠藤正典
Web:ナガヤマドネルケバブ
制作協力:塩田友克
制作:菅野佐知子(劇団チョコレートケーキ)

企画・製作:一般社団法人 劇団チョコレートケーキ


出演:

緒方晋[The Stone Age](歌人、精神科医・斎藤茂吉)

音無美紀子(茂吉の妻・斎藤輝子)

浅井伸治[劇団チョコレートケーキ](精神科医、茂吉の長男・斎藤茂太)

西尾友樹[劇団チョコレートケーキ](精神科医、茂吉の次男・斎藤宗吉)

帯金ゆかり(茂吉の長女・宮尾百子)
宇野愛海(茂吉の次女・斎藤昌子)

岡本篤[劇団チョコレートケーキ](会社員、茂吉の高弟・山口茂吉)


STORY

1950年(昭和25年)秋。新居への引っ越しを控えた歌人斎藤茂吉は脳出血を発症する。歌人として、医師として、生き抜いてきた男に迫る老いと病。茂吉は家族らと共に、人間として逃れ得ぬ悩みに直面する。【公式サイトより】


劇団チョコレートケーキ、新作公演。

6月の『白き山』から5年後、斎藤茂吉の晩年を描く。『つきかげ』は最後の歌集のタイトルから。


下手に茂吉の書斎。上手に絨毯。

下手手前は庭?に降りられるようになっており、下手奥に玄関へと通じる出入口。上手側にも出入口が2つ。壁は濃いグレーとくすんだ白に分かれ、間に紙をはがしたような模様(説明しづらい)。


前作に引き続き、長男・茂太、次男・宗吉(後の北杜夫)、高弟の山口茂吉は出てくるが、本作では別居を解消した妻・輝子と他家に嫁いだ長女・百子、そして茂吉の世話をする次女・昌子が新たに登場し、斎藤家勢揃いとなる。

中では輝子がとにもかくにも魅力的で時代や常識に囚われず、自分の信念や本音に基づいた言動がカッコいい。特に山口を目の敵にするあたりが可笑しく、2人が顔を合わせる度に笑いが起きていた。

そんな輝子を音無美紀子さんは生き生きと演じていて、当初の予定通り、茂吉役が村井國夫さんだったら……と思わずにはいられなかったけど、緒方晋さんもかなりのハマり役で、前作に比べても格段に茂吉になりきっていて、怒鳴り声一つとっても堂に入っていた。

そんな茂吉が迎える老いが本作のテーマでもあるのだけど、その一方で、小説家を志す宗吉が船医となって世界を見て見聞を広めようという決意を述べる

シーンや自分が文学に目覚めたのは父のお陰だと手紙で伝えるシーンには胸を打たれた。

病院に患者が来ないという割にはどことなく呑気な長男・茂吉、母・輝子に憧れ、贅沢な暮らしから抜け出せない長女・百子、小津映画の原節子さんのように慎ましい次女・昌子(宇野愛海さん、雰囲気も似ている)、茂吉の文学を後世に伝えることを使命とながらも盲信はしない山口といずれの登場人物も丁寧に描かれていた。


上演時間2時間10分。


上演後、宗吉の長女にてして輝子に関する著書もある斎藤由香さんをゲストに招き、古川健さんとのアフタートークあり。輝子お祖母ちゃんのエピソードがどれも強烈で、この時代の女性で108ヶ国を訪れ、南極やエベレストまで行ったというのだから驚き。是非とも朝ドラにしてほしいほどだった。