『五香宮の猫』(想田和弘監督) | 新・法水堂

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『五香宮の猫』



2024年日本映画 119分

監督・製作・撮影・編集:想田和弘

製作:柏木規与子


STORY

瀬戸内の風光明媚な港町・牛窓。古くから親しまれてきた鎮守の社・五香宮(ごこうぐう)には参拝者だけでなく、さまざまな人々が訪れる。近年は多くの野良猫たちが住み着いたことから“猫神社”とも呼ばれている。2021年、映画作家の想田和弘とプロデューサーの柏木規与子は、27年間暮らしたニューヨークを離れ、『牡蠣工場』(15)や『港町』(18)を撮ったこの牛窓に移住した。新入りの住民である夫婦の生活は、瀬戸内の海のように穏やかに凪ぎ、時に大小の波が立つ。猫好きのふたりは、地域が抱える猫の糞尿被害やTNR活動、さらには超高齢化といった現実に住民として関わっていくことになる。【公式サイトより】


想田和弘監督による観察映画第10弾。

今年3月、名古屋シネマテーク跡地にオープンしたナコヤキネマ・ノイにて鑑賞。


想田監督のtwitterアカウントはフォローしているけど、ニューヨークから牛窓に移住していたとはまったく知らなかった。

本作はその牛窓にある五香宮(ごこうぐう)の境内に集まってくる猫たちが主人公。これまでも想田監督の作品では猫がたびたび映り込んでいたけど、ポスターにここまで堂々と登場するとは。笑

もちろん人間たちも登場するわけだけど、果たして人間との共生は猫にとって幸せなのか不幸せなのか考えずにはいられなかった。本作で長めの尺を使って描かれるのは、猫たちを捕獲して去勢手術を受けさせるくだり。猫が増えすぎないようにという処置なのは百も承知だけど、これとて人間の都合に過ぎない。監督から去勢手術の話を聞き、「増えてもいいのに」と口にする女の子の純粋さか眩しい。

その一方で、餌をもらったり死んだ後に土に埋められたりする猫の姿を見ているとこれはこれで猫にとっても幸せなことなのかもな……と思いかけた矢先に境内に捨てられた子猫の姿が映し出されて愕然となる。人間界には親ガチャなる嫌な言葉があるけど、猫の世界にも飼い主ガチャがあるよな……。