イキウメ
『奇ッ怪 小泉八雲から聞いた話』
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原作:小泉八雲 脚本・演出:前川知大
ドラマターグ・舞台監督:谷澤拓巳
美術:土岐研一 照明:佐藤啓
音楽:かみむら周平 音響:青木タクヘイ
衣裳:今村あずさ ヘアメイク:西川直子
舞台監督:山下翼
プロップマスター:渡邉亜沙子
演出助手:山下茜 所作指導:山下禎啓
照明操作:溝口由利子 音響操作:鈴木三枝子
衣裳進行:馬場晶子 ヘアメイク助手:山﨑智代
宣伝美術:鈴木成一デザイン室
舞台写真:田中亜紀 写真提供:小泉八雲記念館
制作:坂田厚子 票券:宍戸円
制作デスク:谷澤舞 プロデューサー:中島隆裕
当日運営:保坂綾子(東京)
出演(数字はエピソード番号):
浜田信也(小説家・黒澤/2.夫/3.式部平内/5.萩原新三郎)
安井順平(警察官・田神/1.猟師/2.夫の友人/3.関内/5.医師・山本志丈)
盛隆二(検死官・宮地/1.住職/2.夫の友人/3.侍)
松岡依都美(旅館の女将/2.妻)
生越千晴(旅館の仲居甲/2.女中/3.平内の妻/4.舞子の姉/5.お露の侍女・お米)
平井珠生(旅館の仲居乙/2.後妻/4.黒澤の恋人・しのぶ/4.河野舞子/5.お露)
大窪人衛(旅館の仲居丙/1.若い僧/2.使用人/4.若き日の黒澤/5.新三郎の下男・伴蔵)
森下創(旅館の仲居丁/2.夫の友人/5.良石和尚)
STORY
とある旅館に泊まりながら、小説を執筆する黒澤。ある夏の日、旅行客の田神と宮地が部屋の準備ができるのを待っている間、この旅館が元々寺だったことを話したことをきっかけに3人でかわるがわる奇怪な話をすることとなる。そのうちに田神と宮地が警察関係者で、ある事件を調べていく中でこの旅館にたどり着いたことが分かりーー。
2009年、世田谷パブリックシアターの主催公演として初演され、後にシリーズ化もされた『奇ッ怪』第1作を劇団公演として上演。前回にも出演しているのは浜田信也さんと盛隆二さんのみ(もちろん別の役)。
舞台中央よりやや下がったところに中庭。下手側に祠があり、上手側に梅の木。開場時、梅の木の近くに天井から砂が落ち続ける。中庭の周囲を板敷きの床が取り囲み、出入りは下手奥から。また、左右の端に6本ずつ柱が立っている。
ベースとなるのは、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の怪談話「1.常識」「2.破られた約束」「3.茶碗の中」「4.お貞の話」「5.宿世の恋」の5篇。そこに語り手でもある黒澤を中心とした怪談話が繰り込まれるという構成。
これが実に巧みで、とりわけ「お貞の話」を黒澤自身の話に置き換え、更に「牡丹燈籠」に材を取った「宿世の恋」に繋げていくあたりはもはや名人芸。とりわけ新三郎=黒澤の切なる思いの強さに胸を打たれる。
昼に観た若手劇団も怪談を扱っていたが、やはりレベルが違う。ちなみにそちらではトーキング・ヘッズの名前が出ていたが、こちらはグレイトフル・デッド。これが最後の最後に効いてくる。
脚本もさることながら、簡素にして的確な舞台美術、照明、音楽、もちろん役者陣も言うことなしで、思わず溜め息が漏れるほど。
客演陣では最近、NETFLIX『地面師たち』で注目の松岡依都美さん(ABIRUホールディングスの社長もいるよ!)や生越千晴さんもよかったが、平井珠生さんが思っていた以上の活躍を見せていた。
上演時間2時間2分。