東京にこにこちゃん『ネバーエンディング・コミックス』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

東京にこにこちゃん 2月公演
『ネバーエンディング・コミックス』
NEVERENDING COMICS


2024年2月28日(水)〜3月3日(日)
駅前劇場

作・演出:萩田頌豊与
音響:松本蓮 照明:中西美樹
舞台監督:西山みのり 大道具:石倉研史郎
撮影:川村大樹
宣伝美術:田仲マイケル、大瀧翼
票券:白川啓、岩村優花(ローソンチケット)
制作:東京にこにこちゃん

出演:
辻凪子(尾田清笑)
海上学彦[グレアムボックス](増田二文字)
土本燈子(藤子虎子)
てっぺい右利き[パ萬](岩明常夏)
佐藤一馬[劇団「地蔵中毒」](足立砂鯨)
四柳智惟(高橋秋秋秋/バーミヤンの客1)
立川がじら[劇団「地蔵中毒」](虎子の父・藤子藤)
髙畑遊[ナカゴー](小学校教諭・手塚小鳥)
尾形悟[マグネットホテル](生活指導・三浦健之助)

STORY
とある小学校の2年1組に転校生・尾田清笑(せえ)がやってくる。隣のクラスの二文字や砂鯨(すなくじら)、秋秋秋(あきだけ)、虎子の間ではアニメの次の展開を予想することが流行っていたが、清笑が漫画を持ち込んだことにより、みんなは漫画に夢中になる。落語家の家系に生まれたクラスメイトの常夏は、生活指導の三浦に見つかったら大変だと心配するが、清笑は構わずに漫画を持ち込み続ける。清笑がいちばん好きな漫画は『ネバーエンディング・エトワール』で、それだけは貸そうとしなかったが、虎子は『ネバエス』の悪口を言って清笑と喧嘩になる。実は虎子の父は『ネバエス』の原作者・藤子藤だった。もうすぐ終わると思われていた『ネバエス』だったが、アニメ化が決定し、連載も新章に突入する。中学生、高校、大学と進むにつれ、同級生や病気で学校を辞めた小鳥先生が読むのを止めても清笑は『ネバエス』を読み続ける。

第34回下北沢演劇祭参加作品。

舞台は3つに分かれ、中央は一段高くなって背景に見開いたコミックスをモチーフにした白い壁。左右には椅子が1〜2脚ある状態で、手前の幕が上がったり下がったりすることで場面が切り替わる。

長期連載を続け、なかなか終わらない漫画をめぐる物語。前作『シュガシュガ・YAYA』同様、今回も終始笑いっぱなしの中にエモーショナルな場面が挿入される。
前半は主人公の清笑が小学生時代から現在までの話。生活指導の三浦先生から馬鹿にされようとも漫画を愛する清笑のまっすぐさに胸を打たれ、入院をして最終回を読めないかもしれない小鳥先生に涙を誘われる。
1時間ほどのところで中央の壁に漫画を模したスタッフクレジットが流れるのだが、「え、これで終わり?」と思わせておいて終わらないネバーエンディング演劇。笑
後半では清笑は二文字と組んで『ネバエス』の展開を予想するYouTubeチャンネルを始めている。作者の藤はその動画を見て苦々しく感じているが、二文字が娘・虎子の恋人だとは夢にも思っていない。
『ネバエス』を終わらせなくてはいけないと思う清笑と終わらせまいとする三浦先生の息子(と思いきや三浦先生本人)の対立を軸に展開する。
劇中でも言及される『火の鳥』は手塚治虫さんの死をもって完結するという構想だったらしいのだけど、人生も1つの物語とすれば、終わらない物語などないとも言えるのかも。

東京にこにこちゃん初参加の辻凪子さん&土本燈子さんの共演というだけでも必見!と思っていた本作だが、お二人とも期待通りの好演。
こちらも初参加の海上学彦さんは何も考えていないようなおバカキャラがなかなか似合っていたし、常連のてっぺい右利きさんも独特な存在感で重要な役どころを担う。
四柳智惟さんは秋秋秋、冬冬冬(ふゆだけ)、夏夏夏(なつだけ)、春春春春(はるだけ)の四つ子を必死に演じている様が可笑しかった。
髙畑遊さんはいつもと違ってギャグ要素は少なめ。髙畑さんに泣かされるとは…。
全体的には満足度の高い作品だったけど、左右の幕の上下で次々に場面が変わるのはやや慌しい感じもしたので、もう少し場面数は少ない方が好みかな。

上演時間1時間44分。