ばぶれるりぐる『川にはとうぜんはしがある』 | 新・法水堂

新・法水堂

演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

ばぶれるりぐる 第5回公演

『川にはとうぜんはしがある』



【東京公演】
2024年2月22日(木)〜25日(日)
こまばアゴラ劇場

脚本:竹田モモコ 演出:チャーハン・ラモーン
舞台監督:久保克司(スタッフステーション)、橋本奈々子
舞台美術:柴田隆弘 照明:葛西健一
音響:河合宣彦(株式会社Road-K)
演出助手:鎌江文子
衣装:東千紗都(匿名劇壇) 
映像撮影・編集:武信貴行(U.M.I Film makers)
舞台写真撮影:堀川高志(kutowans studio) 
イラストとチラシデザインと音楽:チャーハン・ラモーン
制作:寺井ゆうこ、安井和恵(クロムモリブデン)、谷口静栄

出演:
竹田モモコ(古川家の長女・古川早希)
大江雅子(古川家の次女・古川陽子)
鄭梨花(陽子と博樹の一人娘・古川みま)
上杉逸平[メガネニカナウ](古川家の入り婿、陽子の夫・古川博樹)
窪田道聡[劇団5454](移住希望者・生田目ゆずる)

STORY
舞台は古川家の「通り土間」。母屋には古川家の次女・陽子の家族が暮らしている。そこへ20年ぶりに長女の早希が帰って来た。早希は通り土間を挟んだ離れに暮らすことになった。すっかり母親業がしみついた陽子と、自由に暮らして来た早希の感覚のズレのようなものにお互いが戸惑う日々。そこへ陽子の一人娘・みまの独り立ちや、都会からの移住者・生田目がやってきて、さらに古川家をかき乱す。家族が、生活が、かたちをかえる時、必ず痛みをともなう。それでも繋がりたい、その先を見てみたい。 そう、いつの時代も川にはとうぜんはしがあるように。【公演チラシより一部修正】

竹田モモコさんが主宰を務めるばぶれるりぐる、『いびしない愛』以来2年ぶりの東京公演。

舞台は通り土間で、上手側が陽子たちの暮らす母屋、下手側が早希が住むことになった離れの入口。それぞれ段差がついていて、上手側の方が一段高い。奥の壁には外に出る引き戸と窓。

物語は古川家の長女・早希が次女・陽子の家族が暮らす実家に帰ってきて、離れに暮らすことになるところから始まる(チラシでは長女と次女が逆になっていたけど、設定変更したのだろうか。どうしても陽子の方が姉に見えてしまった)。
陽子には夫・博樹との間に19歳になる娘・みまがいるのだが、今はパン屋でアルバイトをしていながらも、イラストレーターをしている伯母の仕事には興味がある。早希もそんな姪っ子に仕事を手伝ってもらううちにその才能に気づき、自分がバイトを代わってまでみまが仕事をしやすいようにしてやる。
いわば自分の後継者として考えているような節はあるのだが、陽子は娘にそんな才能があるはずがないと安定した仕事に就くことを望んで対立が起こる。
母屋と離れの間の土間には当初何もなく、靴を踏んづけて行ったり来たりをしていたのだが、移住希望者の生田目(なまため)がすのこを用意してやる。このすのこはタイトルにもある「橋」を表していて、人と人との心を繋ぐものの象徴となっているのだが、姉妹の対立が深まるとそれも取り外されてしまう。
そんな中、みまが突然、先輩の紹介でフィリピンでコールセンターの仕事をすると言い出すところが実に痛快。早希は思わず陽子に「なにあの女」と言ってしまうのだが、早希と陽子、それぞれが自分たちの通ってきたレールに乗せようとしていたみまが、姪でも娘でもなく一人の女性として現れた瞬間でもあったのであろう。飄々と娘の決意を受け容れる博樹の存在もよかった。

上演時間1時間46分。

アフタートークはマキノノゾミさんをゲストに迎え、竹田さんとチャーハン・ラモーンさんが登壇。マキノさんもやはり「あの女」のくだりには感心されていて、絶賛新作執筆中ということもあってか、「どうして僕にはああいうパンチラインが書けないのだろう」と仰っていた。笑
ちなみにマキノさんは今年の10月に可児市のalaコレクションで『いびしない愛』を演出することになっているとのことで(この場で初解禁情報)、これまた楽しみ。