ばぶれるりぐる『いびしない愛』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

ばぶれるりぐる 第4回公演

『いびしない愛』

 

 
【東京公演】
2022年10月13日(木)〜17日(月)
こまばアゴラ劇場
 
脚本:竹田モモコ 演出:チャーハン・ラモーン
舞台監督:中嶋さおり(BS-Ⅱ) 舞台美術:柴田隆弘
照明:葛西健一 照明オペレーション:鎌江文子
音響:河合宣彦(株式会社Road-K)
音楽:マツキクニヒコ(フラワー劇場)
演出助手:鎌江文子
イラストとチラシデザイン:チャーハン・ラモーン
制作:寺井ゆうこ、安井和恵(クロムモリブデン)
芸術総監督:平田オリザ
技術協力:黒澤多生(アゴラ企画)
制作協力:蜂巣もも(アゴラ企画)
 
出演:
是常祐美[シバイシマイ](富田家長女・富田しおり)
竹田モモコ(富田家次女・富田喜美子)
高阪勝之[男肉du Soleil](男・諫山圭吾)
蟷螂襲[PM/飛ぶ教室](なやの従業員・吉田喜八郎(ヨロ))
泥谷将[Micro To Macro](なやの従業員・坂元照信)
 
STORY
舞台は小さなふし工場(通称:なや)「富田商店」の事務所。工場を切り盛りするのは富田家の次女・喜美子。しかし工場の経営は厳しく、加えてコロナ渦によりいよいよ存続が危ぶまれていた。姉のしおりは左腕が不自由だが、快活で目立つ存在。長年そんな姉と比べられてきた喜美子は素直にしおりに助けを求められない。コロナによって止まってしまった世の中、不謹慎かもしれないがホッとした人もいる。喜美子もそんな中の一人だった。せっかく止まった工場を、しおりはまた動かそうとしている。埋まらない姉妹の溝。そんな折、事務所に忍び込んできた空き巣・諫山と出くわす喜美子。喜美子は諫山に「自分を刺してくれ」と懇願する。【戯曲デジタルアーカイブより】

第26回劇作家協会新人戯曲賞受賞作。
 
土佐清水市出身の竹田モモコさんが幡多(はた)弁を用いた作品を上演する演劇ユニット、ばぶれるりぐる初の東京公演。「ばぶれる」とはだだをこねてあばれる、「りぐる」とはこだわるという意味。
本作は2020年10月に大阪で上演される予定だったが、コロナ禍により延期。昨年、大阪、高知、土佐清水をツアーで回り、満を持しての東京公演となる。なお、「いびしない」は「汚れている、散らかっている」という意味とのこと。
 
舞台はなやと呼ばれるふし工場の2階にある事務所。下手手前にトロ箱(海産物を入れる箱)、奥にドア。奥の壁に作業台、ファイルなどが並んだ棚、ノートパソコンの載った事務机、上手にソファなど。下手手前には休憩用のテーブルと椅子。
 
事務机に伏せっていた喜美子の「今からここに、泥棒が入ります。3、2、1、はい」という台詞とともに諌山が入ってきて始まる本作、喜美子が諌山が武器として手にしていた草抜き用の器具「ごそっととれ太NEO」で自分を刺してほしいと頼むという意外な展開で諌山ならずとも戸惑うばかり。喜美子の真意はおいおい分かってくるが、左手に障碍を抱えながら何でもできる姉に対する劣等感がその要因の一つ。彼女自身がのっけから「生きるセンス」がないと評する諌山に刺してほしいと頼むあたりは喜美子の閉塞感の表れなのかもしれない(その閉塞感にはコロナ禍の影響も多分にある)。
 
本作で面白い役割を果たすのが下手奥のドア。
喜美子にどう対処したものか戸惑う諌山は外に出ようとするが、ドアがなぜか開かない。このドアを開けるにはコツがいるらしく、喜美子やその後に登場する従業員たちはそれぞれの方法で開けることができる。なんやかんやあって最後、諌山は「ネス湖」と言いながらドアノブを回すと開けられることを発見するのだが、ひょんなことがきっかけで突破口を見出すこともできるのだという希望を感じられた。
 
なお、本作の戯曲は「戯曲デジタルアーカイブ」で読むことができるが、チャーハン・ラモーンさんが演出するにあたって少し書き直してもらったとのこと。「気ずく」「近ずく」も書き直してもらった方がいいかも。笑
 
上演時間1時間45分。