トレンブルシアター『精神病院つばき荘』 | 新・法水堂

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トレンブルシアター2022

『精神病院つばき荘』

 

 
【東京公演】
2022年10月12日(水)〜16日(日)
シアター711
 
作:くるみざわしん
演出:大内史子
美術:角浜有香 照明:今西理恵(LEPUS)
音楽:小森広翔 音響操作:S-MIURA
音響協力:大貫誉 衣装:優花製作
舞台監督:竹原孝文 宣伝美術:福田真一
写真:横田敦史 動画:吉田康一
制作:Myrtle Arts
 
出演:
土屋良太(院長・山上)
川口龍(患者・高木)
近藤結宥花(看護師・浅田)
 
STORY
精神病院つばき荘の第6病棟。院長の山上は入院患者の高木に説得を試みていた。原発事故対策で、理事長と対立している職員たちを抑え込むため、最古参の高木を仲間に取り込もうとしていたのだった。自分の存在を賭け、頑として山上の説得を拒絶する高木だったが、山上は最終手段として、高木に保護室への隔離を言い渡す。そこへベテラン看護師の浅田が現れて…【沖縄公演チラシより】

2018年末、元オフィス3○○の土屋さんと川口さんにより結成されたトレンブルシアターの旗揚げ公演として、今はなき新宿ゴールデン街劇場で初演された作品。
 
舞台は3幕構成で、第1幕は診療室で木製の机と椅子。第2幕は高木が入れられた保護室。壁の角度が変わり、鉄格子が出現。はけ口は上手奥のみ。第3幕は同じく保護室だが8年の時間が流れていて、段ボール箱がいくつも積まれ、ゴミ袋も散見。
 
精神科医でもあるくるみざわしんさんが精神病院の実情を描き出した本作は、日本における精神医療の在り方について考えさせられる。病院の安定的な経営のために高木のように長期入院している例も多く(患者は患者で退院後の居場所がないという問題も)、自分の意に沿わないからと医師が患者を強制隔離するなんてことも決して珍しくないんだとか。
第3幕は何か大きな事故があり、日本の大半が沈没してしまったような世界。防護服に身を包んだ高木と浅田が保護室を訪れると、山上がそこで一人、段ボール箱に詰め込まれた患者のカルテを読んでいる。山上院長ではなく山上さんとなり、カルテを読むことで初めて患者と向き合えたというのは皮肉めいてもいるが、こと精神医療においてはまず一人の人として患者と接するところから始めるより他にはないのだろうな。
 
キャストは8月に上演されたくるみざわしんさん作『ひとつオノレのツルハシで』と同じ3人。奇しくも中一日おいて『凍える』に続いての3人芝居となったが、こちらも俳優陣の演技に見応えがあった。近藤結宥花さんも前回よりは出番が多かったし。笑
 
上演時間1時間47分。