『笑いのカイブツ』(滝本憲吾監督) | 新・法水堂

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『笑いのカイブツ』



2023年日本映画 116分
脚本・監督:滝本憲吾
原作:ツチヤタカユキ『笑いのカイブツ』(文春文庫刊)
脚本:足立紳、山口智之、成宏基
エグゼクティブプロデューサー:成宏基
プロデューサー:前原美野里
助監督:齊藤勇起 制作担当:後藤一郎
撮影:鎌苅洋一 音楽:村山☆潤
照明:神野宏賢、秋山恵二郎
録音:齋藤泰陽、藤本賢一
美術:安藤秀敏、菊地実幸 装飾:岩井健志
衣装:馬場恭子 ヘアメイク:楮山理恵
編集:村上雅樹 宣伝写真:三宅英文
漫才指導:令和ロマン

出演:
岡山天音(ツチヤタカユキ)
仲野太賀(ベーコンズ・西寺)
片岡礼子(おかん)
松本穂香(ミカコ)
菅田将暉(ピンク)
前原滉(構成作家・氏家)
板橋駿谷(べーコンズ・水木)
淡梨(芸人・トカゲ)
前田旺志郎(見習い・山本)
管勇毅(ラジオ番組ディレクター・佐藤)
松角洋平(同プロデューサー・内山)
藤井隆(デジタル大喜利出演者)、木村祐一(同)、柳ゆり菜(同)、樫本琳香(ベーコンズのマネージャー・草野)、瀧見信行(劇場の構成作家・安富)、お〜い!久馬[ザ・プラン9](支配人・岡部)、西本銀二郎(作家見習い・丹羽)、赤木裕[たくろう](同・長友)、おひな(同・岸)、たかまん[宛先プレーン](おかんの恋人)、市川[女と男](ヨーグルト配達の先輩)、斎賀正和(フランス料理店の店長)、吉岡友見(コンビニの店長)、毛利大亮[ギャロップ](ホストクラブの店長)、佐藤五郎(居酒屋「車屋」店長)、小野寺ずる(ラジオAD・森本)、前原瑞樹(単独ライブスタッフ)

STORY
大阪。何をするにも不器用で人間関係も不得意な16歳のツチヤタカユキの生きがいは、「レジェンド」になるためにテレビの大喜利番組にネタを投稿すること。狂ったように毎日ネタを考え続けて6年——。自作のネタ100本を携えて訪れたお笑い劇場で、その才能が認められ、念願叶って作家見習いになる。しかし、笑いだけを追求し、他者と交わらずに常識から逸脱した行動をとり続けるツチヤは周囲から理解されず、志半ばで劇場を去ることに。自暴自棄になりながらも笑いを諦め切れずに、ラジオ番組にネタを投稿する“ハガキ職人”として再起をかけると、次第に注目を集め、尊敬する芸人・西寺から声が掛かる。ツチヤは構成作家を目指し、上京を決意するが——。【公式サイトより】

伝説のハガキ職人ことツチヤタカユキさんの自伝的小説を映画化。

私もご多分に漏れず中高生の頃は深夜ラジオを聴き、ハガキも何度か送ったこともあるが、世代が違うこともあってツチヤタカユキさんのことは今回の映画で初めて知った。
ベーコンズのモデルはオードリーで、西寺が若林正恭さんにあたる役どころのようだが、人見知りなイメージのある若林さん以上に「人間関係不得意」なのが主人公のツチヤタカユキ。
壁に頭をガンガン打ちつけながら大喜利番組に投稿するネタを考えているところからして、ツチヤの笑いに対する姿勢はストイックを通り越してどこか狂気すらも感じさせる。彼がなぜそこまで笑いにのめりこむのかはあえて描かれていないが、ざっくり言ってしまえば、そんな人間関係不得意な彼の心の支えとなったのがお笑いだったのだろう。
人に認められたい、だけど人とは関わりたくない。そんなツチヤの張り詰めた感情が映画全体にみなぎっていて、お笑いを題材にしながら終始ひりひりした印象を残す。
ちなみに終盤、ベーコンズの単独ライブ会場でツチヤを呼びに来るスタッフを前原瑞樹さんが演じていたが、本作のプロデューサー・前原美野里さんは実の姉。オーディションにも参加したんだとか。

一筋縄ではいかないツチヤ役を岡山天音さんは見事に演じきっていた。奇しくも『カラオケ行こ!』と2日連続でノンネイティブの主演俳優が関西弁を話す作品となったが、台詞回しもまったく問題なし。終盤のピンクが従業員として働く居酒屋で感情を爆発させるシーンが特によかった。
ツチヤのよき理解者たる西寺やピンクを演じた仲野太賀さんや菅田将暉さんがいいのはもちろん、個人的には片岡礼子さん扮するおかんの泣き笑いにグッときた。

この日は上映後、岡山天音さんと滝本監督のトークイベントあり。中には5、6回観ている人もいたけど、岡山さんとは別の人がツチヤを演じていることには気づいていなかったもよう(中学生のツチヤタカユキ)。