コンプソンズ『岸辺のベストアルバム!!』 | 新・法水堂

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コンプソンズ #12

『岸辺のベストアルバム!!』



2024年1月24日(水)〜28日(水)
小劇場B1

脚本・演出:金子鈴幸
舞台監督:小川陽子 舞台美術:谷佳那香
音楽:額田大志(ヌトミック/東京塩麹)
音響:櫻内憧海(お布団) 照明:中西美樹
宣伝美術:江原未来
当日運営:堀内萌絵子(セビロデクンフーズ)
映像:ニュービデオシステム
制作:星野花菜里、鈴木啓佑 
企画・製作:コンプソンズ 

出演
西山真来[青年団](夏子)
佐藤有里子(千秋)
笹野鈴々音(冬美)
佐野剛[江古田のガールズ](カフェ店員・北川トオル)
藤家矢麻刀(ソウ)
端栞里[南極ゴジラ](ソウのイマジナリーフレンド、ジャスティン・バービー)
波多野伶奈(春雨)
星野花菜里(真矢マヤ)
大宮二郎(ホストクラブプロデューサー・どっこい軍神)
近藤強[青年団](サブカル大学教授・東真司)
宝保里実(ドキュメンタリー監督・河瀬直子)

STORY
同じ幼稚園に子供を通わせている夏子、千秋、冬美の3人は子供の名前が同じソウであることから知り合い、それぞれの名前に季節が入っていることで盛り上がる。一方、どっこい軍神がプロデューサーを務める歌舞伎町のホストクラブでは、ダークマンティコアの末裔である真矢が赤いピルを使って悪意に満ちた世界を作り上げる計画を企てていた。歌舞伎町でフィールドワークを続けるサブカル大学教授の東真司は、この真実を伝えるべく元教え子の河瀬直子にドキュメンタリーを撮影するように言うが、河瀬は岸辺のカフカの名前でホストをするソウに興味を示し、作者の春雨(はる・れいん)も姿を現してソウに近づく。カフェ店員のトオルは10年後の夏子に再会してホテルへ。そこに千秋と冬美も現れる。それはソウのイマジナリーフレンドであるジャスティン・バービーが連れてきた彼女たちの意識で、バービーはダークマンティコアの悪事を止めるため魔法少女戦士になってほしいと頼む。

コンプソンズ新作公演。
元ネタは山田太一さん原作・脚本のドラマだが、もちろん内容は関係なし。

コンプソンズは前作『愛について語るときは静かにしてくれ』の世間での評価が非常に高かったが、それでも私自身は最後の展開が今ひとつに感じてしまったのだけど、本作はまさにこれまでのコンプソンズの中でもベストと言える作品だった。
そもそもが物語の中の物語という設定ということもあり、かなり複雑というか、登場人物たちも夢じゃないかと言っているぐらいに時間や場所のつじつまが合わない箇所があるにも拘わらずぐいぐい引き込まれていく。
前作もそうだったけど、金子さんは演劇というものにかなり自覚的で、「もしもこれが演劇だったら」という台詞が今回も出てくる。こんなにハチャメチャな展開はドラマや映画では企画の段階でボツになりそうだけど、演劇なら出来てしまう。まさに金子さんにとっては「二時間だけのバカンス」で、演劇の持つ自由度の高さを存分に発揮しつつ、その根底に物語の力を信じる気持があることが感じられる。
とりわけ、夏子、千秋、冬美の3人が『美少女戦士セーラームーン』よろしく魔法少女戦士になってからの展開には幾度となくその涙腺を刺激された。

キャストではジャスティン・バービー役の端栞里さんが印象に残った。これまでも何度か見ているけど、面構えがいいのよな。

上演時間2時間3分。

アフタートークのゲストは吉田大八監督。金子さんとは初対面ながら、前作を観て何人かに薦めていたとのこと。金子さんは大学時代、『桐島、部活やめるってよ』を公開初日に父・金子修介監督と観に行き、「これはスゴイ」となったが、金子監督はよく分からなかったと言っていたとのこと。そのうち、金子鈴幸さん脚本で映画を撮ることもあるかも?