ムシラセ『つやつやのやつ』と『ファンファンファンファーレ!』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

ムシラセ 2023年本公演

『つやつやのやつ』と『ファンファンファンファーレ!』



2023年7月13日(木)〜18日(火)
駅前劇場

脚本・演出・写真:保坂萌
舞台監督:水澤桃花(箱馬研究所)
舞台美術:袴田長武
照明:保坂美沙(C.A.T) 音響:星知輝
演出助手・宣伝動画:つかてつお
楽曲:Renn Saito 衣装:渡辺実希
宣伝美術:藤尾勘太郎
ヘアメイク:上野小百合、村上峻介
てぬぐいとTシャツデザイン:リタ・ジェイ
舞台写真:塚田史香 映像収録:川本啓
制作: 小泉美乃(合同会社soyokaze)

出演:
『つやつやのやつ』
佐藤新太(ぷるぷるタブレット阿久井)
辻響平[かわいいコンビニ店員飯田さん](ぷるぷるタブレット津田)
有薗芳記(安楽亭堂夏)
菊池美里(カブキ姐さん/カブキインフィニティ)
瀬戸ゆりか[青年団](阿久井の元恋人・ちあき)
インコさん[実弾生活](ウィスパー高木)

『ファンファンファンファーレ!』
永田紗茅[柿喰う客](チカ)
潮みか[悪い芝居](ゆかり)
元水颯香(高校生・志乃)
中野亜美(志乃の友人・朝海)
川上献心[劇団風情](劇場スタッフ・山村)
土橋銘菓[声の出演](チカとゆかりの友人・サツキ)

STORY
『つやつやのやつ』
同期が死んだ。周りの中で⼀番最初にテレビに出て、⼀番最初に賞を取って、⼀番最初に売れた芸⼈だった。仲は良かった筈なのに、なんだか涙は出ない。
正直、今俺はそれどころではない。隣にいる⾃分の相⽅がポンコツを超えてそもそもお笑いに向いていない。俺が売れない原因は多分、いや100%コイツのせいだと思う。 今⽇こそ解散を切り出したいのに、邪魔ばかり⼊る。師匠も後輩も元カノも、いいから黙れ。頼むから、ちゃんと悲しませてくれよ。通夜の夜、何かになりたいけどまだなれない、芸⼈たちのお話。

『ファンファンファンファーレ!』
推しが死んだ。駆け出しから売れるまでを⾒守った、お笑いという世界を教えてくれた芸⼈だった。⼤好きだったから、涙しか出ない…はずなのに、今のあたしはそれどころではない。隣にいる友達が、空気を読めていない。あんたの推しは死んでないとはいえ、振る舞いというものがあるだろう。いまいち深刻になりきらない原因は多分、この⼦のせいだと思う。今⽇こそちゃんと吹っ切れたいのに邪魔ばっかり⼊る。いじわるな劇場スタッフも、芸⼈志望の変な⼥⼦⾼⽣も、いいから黙って。お願いだから、ちゃんと悲しませてよ。⼀周忌の楽屋裏、夢と現実をみる、出待ちの⼥の⼦たちのお話。【公式サイトより】

『つやつやのやつ』は2019年、佐藤辰海演劇祭にて優勝した短篇作品。2021年に『ファンファンファンファーレ!』と二本立てにして上演され、今回はその再演となる。

舞台には太さがまちまちの白黒のストライプ模様の壁。白い部分の下の方はブルー。手前に金網フェンスが張り巡らされ、上手にドア。『つやつやのやつ』では喫煙所に、『ファンファンファンファーレ!』では劇場の楽屋口裏となる。

どちらもある人気若手芸人の死が物語の発端で、『つや〜』はその通夜での出来事、『ファン〜』はその1年後の出来事をワンシチュエーションで描く。
残念ながら劇場へは観に行けなかった前作『瞬きと閃光』でも不在の人の使い方がうまいなぁと思ったけど、ぷるタブことぷるぷるタブレットの同期であり、チカの推しであるミームのハルは一切登場しないながらも人となりが見えてくる。
安楽亭堂夏(どうなつ)、カブキ姐さん、ウィスパー高木ら芸人のキャラも立っていて、『つや〜』だけでも充分に楽しめるが、『ファン〜』が付け足されることで更に奥行きのある物語となっていた(ぷるタブ、解散しなくてよかったね! カブキ姐さんのおかげやで)。

『ファン〜』の方はチカとぷるタブ津田のファンのゆかり、芸人志望で何とか楽屋口から忍びこもうとする女子高生・志乃と彼女に無理やり連れてこられた朝海、そして元芸人で劇場スタッフの山村が主な登場人物(『つや〜』の面々も出入り。カブキ姐さんはカブキインフィニティに。何があったんや)。
こちらは推しの死から1年経って誰とも悲しみを分かち合えないチカの揺るぎない思いと、どうしても今、朝海と漫才がしなければならない志乃の純粋な思いが突き刺さりまくって終盤は涙腺を刺激されっぱなし。
推しというものに対して否定的な朝海というキャラクターの活かし方もよかった。

上演時間1時間50分。

本日は声の出演の土橋銘菓さんによるスピンオフ作品の上演もあり(土橋さんは保坂さんとともに前説にも登場)。一人芝居なのかなと思っていたら、他の出演者もわざわざ着替えて出てくるなどちゃんとした作品だった。