木ノ下歌舞伎
『糸井版 摂州合邦辻』
【神奈川公演】
2023年5月26日(金)〜6月4日(日)
KAAT神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉
作:菅専助、若竹笛躬
監修・補綴・上演台本:木ノ下裕一
上演台本・演出・音楽:糸井幸之介[FUKAIPRODUCE羽衣]
音楽監修:manzo 振付:北尾亘
舞台美術:島次郎、角浜有香
照明:吉本有輝子 音響:星野大輔
衣裳:大野知英 ヘアメイク:須山智未
補綴助手:稲垣貴俊
演出部:杉浦訓大、川村剛史*
演出助手:中村未希 舞台監督:大鹿展明
歌唱指導:伊藤和美 義太夫指導:鶴澤友之助
振付アシスタント:米田沙織
照明操作:吉田一弥、岩元さやか、江森由紀
音響操作:常田千晴、池野田歩、深座大青
マイクケア:野中祐里 衣裳進行:秋山美由紀
美術製作:俳優座劇場 舞台美術部 大橋哲雄
歌舞伎小道具:藤浪アート・センター 浅海敬
字幕システム製作:福岡想
運搬:植松ライン 西村春美
リアルタイム音声ガイドナレーター:持丸あい
タブレット字幕ガイドデザイン:南部充央
タブレット字幕ガイド操作:藤巻修
宣伝美術:外山央 宣伝写真・動画:吉次史成
宣伝ヘアメイク:板垣実和 宣伝衣裳:大野知英
文芸:稲垣貴俊 制作アシスタント:佐藤瞳
制作:本郷麻衣、木原里佳*、桝谷雄一郎*
*ロームシアター京都
出演:
内田慈(玉手御前(お辻󠄀))
土屋神葉(俊徳丸)
永井茉梨奈(俊徳丸の許嫁・浅香姫)
永島敬三[柿喰う客](俊徳丸の異母兄・次郎丸)
谷山知宏[花組芝居](浅香姫の奴・入平)
武谷公雄(玉手御前の父・合邦道心)
西田夏奈子(道心女房・おとく/俊徳丸の母)
伊東沙保(誉田主税の妻・羽曳野)
山森大輔(俊徳丸の父・高安通俊)
石田迪子(高安通俊 妾)
飛田大輔(次郎丸 家来・壺井平馬)
STORY
大名・高安家の跡取りである俊徳丸は、才能と容姿に恵まれたがゆえに異母兄弟の次郎丸から疎まれ、継母の玉手御前からは許されぬ恋慕の情を寄せられていた。そんな折、彼は業病にかかり、家督相続の権利と愛しい許嫁・浅香姫を捨て、突然失踪してしまう。しばらくして、大坂・四天王寺に、変わり果てた俊徳の姿があった。彼は社会の底辺で生きる人々の助けを得ながら、身分と名を隠して浮浪者同然の暮らしをしていたのだ。そこに現れる、浅香、次郎丸、玉手と深い因縁を持つ合邦道心。さらに、誰にも明かせない秘密を抱えたまま消えた玉手が再び姿を見せた時、物語は予想もしない結末へと突き進む。【ロームシアター京都公式サイトより】
2019年初演、翌年、台本の増補と新曲を追加して再演されたロームシアター京都レパートリー作品。今回は再演と同じキャストが再集結。
舞台には柱が11本。場面によって柱は倒されたり組み合わされたりする。左右に横書きで歌詞を表示。
初演では内田慈さん演じる玉手の印象が強かった本作だけど、今回の再々演では特に前半は俊徳丸の存在が圧倒的だった。
「重要文化財の秘密」展で下山観山の《弱法師》を見たばかりというせいもあるかも知れないけど、日想観に臨む俊徳丸が玉手との出会った頃(初雪を同時に捕まえるところが特にいい)や実母と死に別れた幼少期を思い出すくだりにたびたび涙腺を刺激された。「バウワウソング」がまたいいんだ。
日想観を表現した照明も見事。
もう1つ感じたのは、この作品が「母親」という存在についての物語だということ。本作には様々な業を抱え、苦悶する人物が登場するが、当然のことながらいずれの人物にもこの世に産み落とした母親がいる。そういった意味では、母親もまた業を背負った存在であるのだよなぁ。
キャストでは上述の俊徳丸を演じた土屋神葉さんが素晴らしく、FUKAIPRODUCE羽衣『プラトニック・ボディ・スクラム』で土屋さんとも共演していた西田夏奈子さんも母親としての存在感を見せつけた。
内田慈さんも初演に引き続きの好演。あの独特な声がいいのよね。歌声ももっと聴きたい。
上演時間3時間4分(一幕1時間20分、休憩13分、二幕1時間31分)。
上演後、木ノ下裕一さんによるアフター講座。
舞台上の柱を使って人形浄瑠璃の3つの山を解説するなど有効活用。『摂州合邦辻』の成り立ち、などを踏まえつつ、菅専助という作家の特徴などを踏まえつつ、「らい病にする必要ある?」などとぶっちゃけるなど、あっという間の1時間だった。
