『男はつらいよ 寅次郎恋やつれ』 | 新・法水堂

新・法水堂

演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

『男はつらいよ 寅次郎恋やつれ』

 

 

1974年日本映画 104分

原作・脚本・監督:山田洋次  脚本:朝間義隆
製作:島津清  企画:高島幸夫、小林俊一
撮影:高羽哲夫  美術:佐藤公信  音楽:山本直純
録音:中村寛  調音:松本隆司  照明:青木好文  編集:石井巖  監督助手:五十嵐敬司  装置:小野里良  装飾:町田武  進行:玉生久宗  製作主任:内藤誠

主題歌:「男はつらいよ」 作詞:星野哲郎、作曲:山本直純、唄:渥美清

 

出演:渥美清(車寅次郎)、倍賞千恵子(諏訪さくら)、吉永小百合(鈴木歌子)、松村達雄(車竜造)、前田吟(諏訪博)、三崎千恵子[三﨑千恵子](車つね)、笠智衆(御前様)、佐藤蛾次郎(源吉)、太宰久雄(朝日印刷社長・桂梅太郎)、宮口精二[東宝](歌子の父・高見修吉)、高田敏江(絹代)、吉田義夫(老紳士)、小夜福子(歌子の姑)、中村はやと(諏訪満男)、高橋基子(歌子の友人・みどり)、泉洋子(同・マリ)、石原昭子(寅さんの花嫁)、武智豊子(老婦人)、羽生昭彦(印刷工)、長谷川英敏(同)、松下努(同)、松原直、秩父晴子(ご近所)、後藤泰子(八百満のおかみ)、水木涼子(梅太郎の妻)、谷よしの(すさやのおばちゃん)、光映子(温泉芸者)

STORY

香具師渡世の寅の夢は、カタギの職業について、気立の良い女性を妻に迎えて、東京は葛飾・柴又で暮す、おいちゃん、おばちゃん、そして妹さくら夫婦を安心させることだった。そんな夢が一度にかないそうな機会がやって来た。島根県の温泉津(ゆのつ)というひなびた温泉町で、ひょっとしたキッカケから温泉旅館で働いていた寅は、夫が蒸発している働き者の絹代という人妻と所帯を持とう、と決心したのだった。早速、柴又に帰った寅は、この縁談をまとめるべく、さくらと裏の工場の社長を引き連れて絹代に会いに行った。ところが、その絹代は寅の顔を見るなり、夫が戻って来たことを、嬉しそうに告げるのだった。さくらに置き手紙を置いてまた旅に出る寅。山陰にある城下町・津和野。ここで寅はなつかしい歌子と再会した。二年前、寅の恋心を激しく燃え上らせた歌子は、小説家の父の反対を押し切って陶芸家の青年と結婚したのだが、その後、その夫が突然の病気で亡くなり、今は夫の実家のあるこの町で図書館勤めをしていた。現在の彼女は不幸に違いないと思った寅は「困ったことがあったら、“とらや”を訪ねな」と言って別れるのだった。歌子が柴又を訪ねたのは、それから十数日後。人生の再出発をする決意ができた、と語る歌子は、暫くの間とらやの二階に住むことになった。それからの寅は、歌子を励まし、歓ばせるための大奪闘を続ける。歌子にとって一番の気懸りは、喧嘩別れしたままの父・修吉のこと。寅は早速、単身修吉を訪ね、歌子の代りに言いたい放題を言って帰って来た。そのことを知って皆が蒼くなっているところへ修吉が現われ、歌子と二年ぶりの父娘の対面となった。一同の心配をよそに、お互の心情を語りあった修吉と歌子は和解するのだった。やがて、歌子は東京に帰って来たもう一つの目的である仕事について、博とさくらにも相談して、悩みぬいた結果、伊豆大島にある心身障害児の施設で働くことを決心した。技術も資格もない彼女が誇りをもって参加できる仕事として彼女はこの職場を選択したのだった。歌子にその決意を聞かされた寅は、ホッとしたような少し疲れたような様子で「よかったネ、歌子ちゃん」と答え、励ますのだった。【「KINENOTE」より】


シリーズ第13作。

第9作『柴又慕情』に続き、吉永小百合さんが2度目のマドンナ役。

 

 

定番となった夢のシーン、いつもなら寅さんとさくらが恋人同士だったり、時代劇だったりするのだけど、今回は現実に近い感じ。本篇自体の内容と絡んでいることも多く、夢の中で寅さんは花嫁を連れておいちゃんおばちゃんに会いに来るが、2人とも流行り病で亡くなっている。目覚めると、寅さんは電車の中。隣には夢のシーンでの常連、吉田義夫さんがいて迷惑そうにしていたり、その後、おいちゃんも寅さんが結婚したという夢を見ていたと分かるあたりも面白い。

 

そうして柴又に帰ってきた寅さん。

寅さんとおいちゃんがそれぞれで見た夢の通り、寅さんは結婚を考えている女性・お絹さんこと絹代の話をするのだけど、考えてみたら、この絹代を演じた高田敏江さんも準マドンナと言っても差し支えないよなぁ。

さくらとタコ社長を伴って遠路遥々絹代に会いに行ったものの、絹代の夫が戻ってきてすぐさま旅に出る寅さん。島根県の津和野に立ち寄り、そこで多治見にいるはずの歌子と再会。

本作は寅さんがマドンナに恋をするというよりは、人生の新たな一歩を踏み出す手助けをするという感じ。まずは夫を喪い、姑と息苦しい生活をしていた歌子が東京に来る決意をさせ、前回も描かれていた父親との確執を取り除こうとする。

もちろん、寅さんのことゆえ、それがカラ回りして必ずしもうまく行くわけではない。それでも結果的には歌子は父親と和解し、新たな職も見つけてめでたしめでたし、となるのであまり振られた感はない(宮口精二さんの演技はいいんだけど、実際にこういう父親がいたら面倒くさそう。笑)。

タイトルこそ「恋やつれ」だし、おばちゃんも寅さんをそう表現するシーンがあるけど、もはや寅さんにとって歌子は恋愛対象からはちょっと外れているのかも。今更どうこうという間柄ではないのだろうな。

 

ところで本作の吉永小百合さん、髪型がダサいというか何というか…。

時代だけのせいではないと思うけど。笑

ちなみに松村達雄さんはおいちゃん役としては本作が最後。つまり、最初と最後のマドンナがともに吉永小百合さんというわけで、ある意味、覚えやすいですな。笑